ホワイトアルバム第5章 投稿者: しもPN
ホワイトアルバム  
<注意事項>
 えーと、ゲームをある程度プレーをしてから見てください。
 もしかしたら多少はネタばれを含むかもしれませんので…。
<始める前に>
 とうとう第5章まで来てしまいました。
 いやあ、長いですねえ。
 本当は5章で終わる予定だったのですが、
なんかものすごく続いています。
 まあストーリーは固まっているので恐らく最終は10章くらいに
なると思います。
 なのでこれからもよろしくお願いします。(ぺこり)

<<第5章 一瞬の休息>>

「うっわああ、綺麗」
 そこはあたり一面銀世界であった。なだらかな丘には
シュプールが描かれ、まるでそれはどんな画家にすら
作り出せない印象画のようにも現実から切り離された
メルヘンの世界のようにも見えた。
「由綺はしゃぎすぎるなよ」
「うん」
 結局、はるか、美咲、彰、由綺、そして俺の5人でスキー
に来ていた。
 ただ俺と由綺の2人は、当日のみで英二さんが迎えに来る
ことにはなってはいたが…
それでもひさしぶりに彼女と長くいられる時間であった。
 他の皆も俺達に遠慮してくれているのだろうか。
皆ある程度ばらけて滑っているようだ。
 少し周りを見渡してみると彰が少し照れくさそうにしながら
美咲さんにスキーを教えているのが分かる。
 2人のその光景は遠くから見るとまるで初デートをしながら、
ぎこちない雰囲気で寄り添うカップルのようにも見えた。
 あっちははるかだろうか。
さすがにいつも滑っているだけはあり、
なだらかなシュプールを描きながら周りで滑っている人を
魅了している。
「冬弥くん、どうしたの?」少し周りを見渡していると由綺が
きょとんとした表情で俺に聞いてくる。
「いや、なんでもないよ」
 俺は今回だけは由綺のためだけに時間を作ろうと思い、
どうともとれるような曖昧な返事をして、彼女の方を振り返る。
「教えてくれたって…」
なんにでも興味がある年頃の彼女はすこしだけむくれた。
「いいじゃん、それより俺達も滑ろうぜ」
「あっ、ちょっと待ってよ」
 俺が軽快に滑り出すと由綺は急いで危なっかしいボーゲンで
俺の後を追う。
 俺は彼女の速度を考え調整しながらすべる。
 そのまま2人の距離はまるで今の2人の関係を象徴するかの
ような感じでつかず離れずを繰り返していたが、突然…。
「いったあい」
「大丈夫か」
 後ろをみると彼女は痛々しい表情をしてうつむいていた。
俺はロングヘアーでくりっとしたあどけない表情を持つ彼女が
アイドルであることを思いだし、急いで駆け寄る。
「足ねじってないよな。大丈夫だよな」
 俺が心配そうにそう言うと少しだけ痛そうな表情をしながら…
それでも…。
「う…うん大丈夫」と気丈に言う。
 だが、その言葉と裏腹にかなり表情は苦しそうで、
どうみてもやせがまんをしているのは明らかだ。
額から汗が洪水のように溢れ出し、それは彼女の今の状態を
克明に表していた。
「大丈夫なわけないだろ」
俺はそう言うと由綺のスキー板をはずし彼女をおぶって
ペンションの方に向かって歩き出す。
「ごめんね…わたしがドジなばっかりに」
「いいさ、それより足痛くないか」
「ううん」見るからに痛そうなのに彼女はそう言って強がった。
 それと同時に一陣の風が吹き、風に運ばれた彼女の匂いが
鼻腔をくすぐる。
それはなんだか愛しいようななつかしいような香りだった…
それと同時に俺は思わず…。
「由綺ごめんな」
「えっ」
「俺が付いていながらこんなことになるなんて…」
「冬弥くんのせいじゃないよ…由綺…由綺が悪いんだから…」
 由綺ははっきりそう言うと俺に後ろからぎゅっと抱き付いてくる。彼女がさびしい時に見せるしぐさだ。それが、
今の俺にはせつなさを一層感じさせた。
 ブラウン官の中で楽しそうに話す由綺、聴衆の前で
上手く歌い踊る由綺、カメラのシャッターに肖像画のような
笑みを浮かべる由綺…でもどんな完璧な演出ですら
今の彼女は作り出せない。
 公園のブランコを楽しそうにゆっくり揺らす由綺、雪の白さ、
冷たさにおもわず目をまるくして驚く由綺、さびしい時には
後ろからそっと俺に抱き付いてくる由綺…本当の由綺…。
 俺は彼女のことを気遣いながらもこの時間が
長く続かないかなと思ってしまう。
 本当はそんなこと考えるべき時じゃないんだけれど…
なんかもう2度と彼女に触れることすらできなくなって
しまいそうで…。
 だが、現実は夢を中断させる。
まるで24時のシンデレラの物語のように…。
 もう俺達の目の前にまでペンションが近づいて来ていたのだ。
「着いたよ…由綺」
 そう言うと俺は彼女を部屋に寝かし、
フロントまで足早に掛けて行った。
(つづく)

すいませんさっき改行失敗しました^^;
それでどなたか消す方法おしえていただけたいのですが。