ホワイトアルバム 第3章 投稿者: しもPN
第3章 離れてしまった時間の中で

 由綺の声がしばらく途切れる、それはほんのわずかな時間だったがそれでも俺には永遠にも思える時間だった。
「どうしたの、とうやちゃん。」由綺の声はただならぬ俺の雰囲気を感じているのだろう心配そうにそう聞いてくる。
 俺は彼女にたった一言安心させる言葉をかけてやれば良いだけなのかもしれない、だが今はそのたった一言の言葉がひどく重く感じていた。
「あ、あの、あたしまた空いてる日探して電話するから、それまで…プツッ…。」
 それまでを最後に彼女の電話の声はとぎれてしまい後はツーツーという電子音だけが鳴り響いている。 
 トンネルにでも入ったのだろう、俺はまた掛かってくることも考え、それまで心を落ちつかせるために窓を開け、空を見上げる。真冬の東京の空は寒く、すこし曇っていたが、それでも強い光を放ちつづける月とその周りをいろいろな強さで瞬く星達がたくさん見えた。今にも消えてしまいそうなはかない星、凛と強い光で輝く星、その光景はまるで人の心と心を象徴しているかのようにも見える不思議な光景だった。
 その中に小さく輝く2つの淡い星がある。それはまるで今の俺と由綺を象徴しているようになんか危なっかしくてまるではかなくて消えてしまいそうにも思える星だ。俺はその星を見ながら少し2人のことを考えてみた。
 俺達のことはいままでで結論は出ていたはずである。由綺にこれ以上心配の種を増やさないようにと…彼女は皆のアイドルなのだから…ちょっとくらい寂しくても俺は由綺を元気づけれるようにと…。
 でも、それでいいのだろうか…本当に2人はわかりあえているのだろうか…由綺は、辛くないのだろうか…。
 離れ離れになる時間がこれからもどんどん増えて行くかもしれない…それでも俺は由綺を愛していられるのだろうか…そして由綺は…。 
 そう考えていた時、再び電話のベルが鳴る。
「カチャ、あ、もしもし、ゆ・・き…由綺ですが…。」その声は何か弱々しくてまるで迷子になった子どものような声だった。
「ゆ、由綺だよな。」
「うん。」
「いまから、いまからなら空いてるから…それしかまだわからないからもし、もし良かったらいつもの公園で待ってる。」まるで泣きそうな声で彼女はこう言う。
 時間はもうとうに0時をまわっていて女の子が外を出歩くような時間では無かった…ましてはアイドルが一人で出歩くような時間では…。
「由綺どこから掛けてるんだ。」彼女が家に帰っていないことはその雰囲気からも明白だ。
「近くの公衆電話から…。」
 多分、マネージャーの人に嘘をついたんだろう、今彼女はすぐそばの2人で昔遊んだ公園近くまで来ている。
「わかった…すぐ行く…すぐ行くから。」俺は、ちょっとでも勇気付けようとなるべく笑ってそう言った。
「うん。」
 外はこの時間になると寒くまるでいつ雪が降ってきてもおかしくないような張り詰めた空気で満たされている。
 俺は家から数分で行ける近道を通って由綺の待つ公園に向かう。走っている間も頭の中ではどう言えば良いのかで一杯だった。2人で約束してたはずなのに…会いたいときに会えなくてもやっていけるって…それなのに…。
 そう考えながら走っていると目の前に公園が見えて来る。あまり大きくなく、でもすごく懐かしい…高校の時の由綺との思い出が詰まった公園…そして、その端のブランコのところに俺は人影を発見する。
「はあはあ、ゆ・・由綺ご…。」
「とうやちゃん…ごめんなさい。」
 俺が由綺にあやまろうとするといつものように彼女の方からあやまってきた。
「なんで由綺があやまらなくっちゃならないんだ。」俺がそう言うと泣きそうな顔をした由綺が親にどうしてと質問する子どもの俺をして。
「だって、私がこんな遅い時間に来たからとうやちゃん怒っていると思って…。」
 由綺はいつもこうだった。俺があやまろうとするといつも彼女の方から謝ってきてそれで解決してしまうのだ。
「とうやちゃん怒ってない?」しばらく黙っているとまるで親にしかられた子どものような表情をして俺に聞いてくる。
「怒っているわけないだろ。」
「よかったあ。」 
 由綺はこう言い安心したのかしばらくブランコをこぎ始める。
「なつかしいね、この公園、高校からの帰り道、暇さえあればここに来てこうしてたよね。」
「ああ。」
「いつからなんだろうね。こうしなくなったのは…。」
 わずか1年前のことなのにそれはまるで霞がかかった記憶のようにも俺達には思える。あの時は言葉なんて必要なかったっけ、お互いがお互いのことをわかっていると思っていたし、何もしなくても分かり合えると思っていた。
「あーあ、あの頃にもう一度もどりたいなあ。」
 なんにも考えなくても良かった時間…それはあまりにも懐かしくて…そしてあまりにも遠くに感じる光景だった。
「戻ってみようか。」俺は冗談でこう言ってみる。
 でも彼女は首を横に振り…そして。
「今は応援してくれる人がいるから…だから…だから続けないと。」まるで彼女は泣き出しそうだったがそうはっきり言うそして…。
「ごめんね、とうやちゃん…でも1日だけ…1日だけならなんとかするからクリスマスイヴの日だけなら…。」
 俺の方があやまりたかった。由綺にこんなに苦しい思いをさせてと…でも、由綺はいつも今回のように自分の責任にしてしまっていた…まるでそれが当たり前かのように。だから彼女に謝るかわりにさっき見たより遥かに大きな2連星を見つけて元気づけてやろうと思った。
 夜空を見上げるとさっきより遥かに多くの星達が輝いている。その中にさっきの星達の姿もあった。その星はまるで俺達を象徴するかのように前よりは少し強い光で輝いていた。
「由綺、見てみろよ…あれを。」
「えーどこどこ。」
 由綺の視線は少しの時間漆黒の空をさまよっていたがしばらくして…。
「可愛い星達だよね、なんか弱そうでいて実際は強い、なんか私達みたいだね。」とうれしそうに少しはにかんだ表情をする。
 強いか…少しは強くなったのかもしれない…そう俺は感じていた。
「ねえ、名前付けようか。」
「ああ、じゃあ由綺がつけてよ。」
「うん。」
 嬉しそうに由綺は名前を考えているようだった、そしてしばらくして。
「じゃあね、あっちの左がとうやちゃん、右が由綺っていうのはどうかな。」
「簡単な名前だな。」俺が意地悪くそう言うと由綺はちょっとすねながらこう言う。
「なんかそう言う名前があの星にはいいような感じがして…駄目かな。」
「嫌…それでいいと思うよ。」
「うん。」 
 その時ばかりは、雪でも降りそうな寒い天気なのになんか暖かくて…これからもずっと2人でいられるような不思議な感覚があった。
(つづく)

 3話目おわりました^0^
 いやあ、あそこからもっていくのがしんどかったですよお。
 ちょっとでも手を抜くとすっげーしょおもない話になってしまいそうで。
(実は一回由綺の昔に変えようかなあとも思っていた。)
 でも、後1回は続けると思います。
 多分そこで終われると思うから^^;
 でも公園ってまるであかりですな。(爆)
 
では(小説書くの速いのは訂正をあまりしないで書いているからといううわさも^^;>でもそういうのもいいかなと思い^^;;;>すまんです>それと今回は訂正版は出しませんので(爆)^^;)