変心 −完全版−(前篇)  投稿者:マイクD


(お読みになる前に)
 このSSはleaf作品”White Album”をベースに書かれた二次創作ですが、
原作の持つ「静」「清」のイメージとは100万光年かけ離れたドタバタSSと化しております。
 したがって原作のイメージを大切にされておられる方、森川由綺をこよなく愛しておられる方は
大変嫌悪感をもよおされると思われます。予めご了承下さい。


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 ある朝布団から目覚めると、俺は『森川由綺』に変身している自分の姿に気がついた。
 
 鏡を覗いてみる。
 いつもは短髪で、金髪に染めてあるある俺の髪がストレートなロングヘアに変化。
 拳骨が丸ごと入りそうなでかい口が、小さなおちょぼ口に。
 目つきの悪い三白眼が、二重瞼と垂れ目がちの大きな眼に。
 広くなり、妙に照かったデコ。あ、これは元々だったな。
 耳にはピアス。あ、これも元々だったか。
 それに加えて、二つに膨らむかわいらしい胸。くびれた腰。さらに股間を触ると、ナニが消えてある。
 まさしくどこをどう見ても、森川由綺。
 謎である。
 
 夕べのことを、朧げながらにも思い出す。
 連れと飲みに出ていた俺は、晩の1時頃下宿に帰宅し、へべれけになりながら
TVをつけた。TVをつけるとチープな歌番組が放映されており、ちょうど森川由綺の出演。
それを観てはブラウン管の森川由綺と共に、ハミングしたり腰を振って踊ったりした。
「ヘイベイベー、もっと腰を振りな。お前のカスタード・パイは蜜で溢れかえってるぜ」
と、意味不明なことをまくしたてながら。それ以後のことは覚えちゃいない。
 しばらくして、そのまま布団の上に寝っころがり、爆睡。朝になると、俺は森川由綺に変身。
 謎である。

 さて、これからどうしよう?
 幸い、今日は仕事は休み。慌てることはない。
 人によってはこの状況に慌てふためき、ゲシュタルト崩壊を起し、
場合によってはフルチン、ああ下はないのか、ともかく喚きながら
外へ飛び出し、関係ない人間をかたっぱしから殴り飛ばしたり、斬り殺したり、
撃ち殺したり、後ろ蹴りをかましたりと、とにかく錯乱状態で街中を突っ走る。
そういうのも有りだろう。
 が、逆に俺はこの状況下を楽しんでいる。面白いではないか。この違和感。この状況。
俺は絶望の中に楽しみを見つける癖を持つ、ニヒルなポジティヴ野郎なのだ。
そんなものよりもヒマの方が、俺にとっては何よりも敵に感じられる。何もすることが無いなんて、
俺には耐えられない。わが心の師匠、イギー・ポップも唄ってたもんな。『俺達の敵は退屈と無関心』だって。
 それはともかく、何もすることのない俺は、そのまま森川由綺の身体でとりあえずオナニーを始めた。
男の体の時、いつもやっていた様に。「おっおっおっおっ」と、オットセイのように声をあげながら。
初体験の感想、とっっっっっっても、新鮮でした、はい。オナニーの詳細を描写すると、
MSワードで書き込み、A4サイズに印字して20枚、というとんでもない枚数になるためここには書かないが、
とにかく、為体の知れない満足感を味わえた事だけは特筆に値する、ということだけは、ここに報告させていただきます。
 2時間ほど楽しませてもらった俺は風呂に入り、膝の破けたジーンと黒のチビTシャツに着替え、
外をぶらつくことにした。こんな汚い下宿に籠っていたって、しょうがないもんな。
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 外に出たとしても、べつだん何もすることはない。俺は煙草を咥え、背中を曲げ、
のっしのっしと街中を野良犬のようにうろつく。何だか人の視線がやたらと目がつくが、まあ気のせいだろう。
 途中本屋に入り、「巨乳パラダイス」「Zubaaan!!」「オメガストア」などといった雑誌を立ち読みして万引きしたり、
レコード屋に入ってCDを万引きしたり、コンビニに入って食い物を万引きしたり、
道をひたひたと歩く野良犬に石を投げてみたりする。石は見事、犬の頭に命中。犬
は遠くへ尻尾を巻いて走り、やがてこちらを向いて「ワン」と吠える。犬は面白い。
 昼を回り、腹が減った俺はさっきコンビニで万引きしたパンと
ジュースを食い、煙草を吸いながらベンチに寝っ転がる。
 空は晴れ上がり、雲一つない、澄み渡るような青空。涼しげな風
が顔にたなびき、長く伸びた髪と睫毛と鼻毛をたなびかせる。
 
 さて、これからどうしよう。とりあえず一眠りするかな。


『パパーッ!』

 突然車のクラクションのけたたましい音が響き渡る。周りに人はいない。
どうやら俺に向けて発せられた音のようだ。
 俺はベンチから起き上がり、クラクションの方へ顔を向ける。そこにはバカでかいベンツが、
でんと聳えていた。

「由綺さん、探しましたよ。こんなところで何をやってらっしゃるんですか?」

 ベンツから下りてきたのは、ワンレングスな髪、目つきは鋭く、どこか涼しげ、
そして端正な顔つきの、スーツ姿を身にまとう、美人で巨乳なお姉様。
 ん、何だ?こんな美人が俺に何の様だ?

「マンションの方へ出迎えに行ってもいらっしゃらなかったし、私、散々探したんですよ」

 ん?出迎え?何で?

「無断で仕事を放り出したりして、こんな自覚の無い行動をとられては困ります。
午前のスケジュールは全部キャンセルになりましたが、今からでも遅くないですから私と一緒に来て下さい。
午後も仕事が詰まってますんで」
 どうやら話から察するに、彼女は森川由綺のマネージャーらしい。
 
 あ、そうだ。俺は今、森川由綺なんだった。道理で街中をうろついてたら、
人の視線がやたらと目につく訳だ。わっちゃー、まいったなこりゃ、はっはっは。

「何をブツブツと言ってらっしゃるんですか、由綺さん? さ、早く車に乗って下さい」
「へーい」
 
 面白そうなので、そのまま森川由綺になりすまし、付き合ってみることにした。
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・
 車で芸能プロダクションらしい事務所へと連れられた俺は、応接室らしい部屋へ連れていかれた。
応接室の中には、ジーンズを履いたボブヘアーの、見た目活動的な感じの女性が座っている。
これまた巨乳女。なかなかに俺好み。メモやカメラなどを用意しているところをみると、
察するにマスコミ関係者のようだ。どうやら俺はインタビューを受けるらしい。面倒くさい事この上ない。

「あ、本日はお忙しい中時間を割いて頂き、どうも有難うございます。私、『月刊レディジョイ』の
編集をしております、相田響子と申します」
 相田と名乗ったその女性はすっと立ち上がり、名刺を差し出した。
 名刺を受け取ったマネージャーのお姉さんは名刺を受け取り、
「こちらの都合で申し訳ございませんが、スケジュールが競って
おりますので、質問は簡潔にお願いいたします」
 と、自分が簡潔に答えた。

-------では、早速ですが、質問に移らせて頂きます…由綺さんの、ご趣味は?
 
 くだらん質問するな。結婚相談所か、ここは。しかし俺は律義に答える。

「テレビ、エロゲー、エロマンガ収集、風俗、古本漁り、プロレス観戦、昼寝にえーと…」

 俺の言葉を聞いたマネージャーは慌てて俺の言葉を遮る。
「い、いえ、音楽鑑賞に読書、手芸、料理、です…」 
 何をそんなに慌てておるのか、マネージャー。

-------……え、えーと、趣味が音楽鑑賞と言われましたが、どのようなジャンルを愛聴なさっておられますか?

「パンクロックが主かな。ニルヴァーナとかダイナソ-Jr.、グリーン・デイ、
古いのだとピストルズ、クラッシュ、日本ではハイ・スタンダード、山嵐、ナンバーガールがフェイバリットっす。
あ、KORN、リンプビズキットみたいなヒップホップ・ハードコアもよく聴きますよ。
いやー、“Got the life”最強っスよねー。去年の夏、フジロックで初来日のライブ見たけど、
もう興奮した興奮した。思わず隣でバーストしてるバカなガキふん掴まえては、バッキバキ顔面
どついてやったっすよ。モッシュの嵐。リンプはリンプで無茶苦茶ファンキーすっよ。
あ、連中の2ndアルバム聴きました?無茶苦茶パワーアップしてますよ。
あと忘れちゃいけないのはやっぱ、ヒトゴロシのミナゴロシバンド、ヴェルヴェットアンダーグラウンド。
30年前のバンドだけど、アレなんか朝から酒飲みながら聴くとキキますわー。
♪あーセベリンセベリン、ワシを鞭で打ってくれー」

「あ、あ、あ、い、い、いえいえいえいえ、主にクラシックやアンビエントな
ムードミュージックをよく聴いております……」
 そんなもん、聴いたことないぞ。第一ヌルすぎて、腹の足しにもならんわ。

-------あ、あのー。それでは好きな食べ物は……・。

「鮭茶漬け!あのね、夜遊びして帰る時、コンビニへかならず寄るんすよ、俺。
で、そこで何買うかっつったら、あの封の開けにくい、鮭かタラコのおにぎり。
これを二つ買って家持って帰るのよ。で、ドンブリバチにぶっ込んで、
ニャガタニエンの大人のフリカケをかけて、お茶かお湯ぶち込んで、お茶漬けにすんの。
これがもう、殺人的に旨いんすよぉ。お姉さん、一度ためしてみたら如何っスか?
お薦めっすよ、お薦め。やっぱねー、俺最近、つくづく思うのよね。
独身のヤローに一番必要なのはおコメとおメコだと」

「あ、ア、ア、あの、アノ、和食を主に、好んでおります。家庭的な食事を。
あ、由綺さんは先程も言いましたがお料理が趣味で、好んでよく煮物とか、
自分で作ったりするんですよ」
 煮物なんてモンはスーパーに行きゃ、198円で買えるだろうが。一々作るこたあない。

-------な、なるほど…・。ではあの、もう一つ。先程由綺さんは読書が趣味だと言われてましたが、
どのような本をお読みに…。

「町田康とアーヴィン・ウェルシュ。『トレインスポッティング』、ブチ切れてましたよねー。
どいつもこいつも登場する連中、クソヤローばかりで。ジャンキー、ポン引き、エイズ患者、
サイコ野郎、嘘つきとか、よくこれだけクズ人間集めたなーって。でもあれって要するに、
酒飲んでる時に必ずやる、ヨタ話の集まりじゃあないっすか。そこがいい。
あ、『エクスタシー』は今読んでるとこっス。あの作品もいいですねー。
寝ゲロ吐きそうな話ばっかで、ウェルシュ節炸裂って感じ。あ、お姉さん、煙草吸っていいスか?」

--------・・・は、はい、どうぞ。

「あ、どもども。ふーっ、うめー。やっぱキクわー、ウィンストンは。で、なんの話だっけ?
あ、そうそう。ウェルシュの話だったよね。で『トレスポ』は映画にもなったし、
ウェルシュのおっさんって日本でもメジャーになりましたよね。あ、そういや今年、
『アシッド・ハウス』上映されるらしいっすねー。お姉さん、マスコミの人でしょ?
試写会の招待状とか余ってないっすか?俺、あれ観に行きたいのよ。
映画に金出して見に行く奴ってバカですよねー、やっぱ。金出さずにいい映画を漁る。
これが通ってもんじゃないっすかあ」

--------そ、そうですか…・。で、でわ、次に…・。

 と、いった感じの下らん質問が、延々と約20分ほど続く。
 雑誌などを読むたびにいつも思うのだが、何故にインタビュー記事の内容というものは、
下らん質問ばかり繰り返すのか。大体、最近のインタビュアーの連中は怠け者が非常に多い。
ちょっと取材の対象者をしらべれば判る事なのに、どうでもいい、無意味な質問を延々と繰り返し
リピートする。不勉強もいいところである。
 中には前知識も得ず、その取材の対象者がどのような功績を持ち、
どのような人物であるかも判りもせず、そのままぶっつけで取材をする様な恥知らずもいる。
そんな取材者によって書かれた記事を読む度に、俺は殺意すら覚えてしまう。
こうなってくると常識以前の問題である。
 しかし、俺は「押忍」の二文字を心に秘めるナイスガイ。「うるせえ」「死ね」「眠い事抜かすな」
「殺すぞ」といった低偏差値な言葉は使わない。全ての質問に律義に答えた。
 そして、

--------ど、どうも、ありがとうございました…。

「あ、いえいえ。もーいいの、お姉さん?」

--------い、いえ、大変有意義なインタビューでした…。

 と、言いながら、相田と名乗る女は、「特ダネだわ、特ダネだわ」と念仏を唱えるように
小声でリピートしながら、応接室を去っていった。
 部屋に残るのは俺とマネージャーのただ二人。ぽつんとしている。

「はああああ……」
 相田が出ていったと同時に、マネージャーが腹の底から出すかのように、大きなため息をついた。
「ん、どしたの?マネージャーさん」
「いえ、ちょっと目眩いがしただけです」
 マネージャーは頭を下げ、呟くように答える。
「大丈夫?」
「ええ…。それより由綺さんの方こそ、今日はお体がすぐれない様で…」
「俺?俺は大丈夫。ピンピンしてるよ」
 と、俺は両腕を伸ばし、ぶんぶんと上下に振る。
「…そうですか。由綺さん、これからはインタビューを受ける時、
私が由綺さんに代って応対に答えますので…」
「はあ」
 と、生返事だけした。どうやらあのインタビュー、マネージャーのお気に召さなかったらしい。

「あ、いけない。由綺さん、すぐに支度をして下さい。時間が競っておりますので」
 妙に落ち込んでいたマネージャーは時計を見るやいきなりすっくと
立ち上がり、急に口調を強めて言った。立ち直りの早い人である。
「何。これからなんかあんの?」呆けた声を出す俺。
「スケジュール表を確認してらっしゃらないのですか?雑誌インタビューが
終わったあと、JHK(放送局)ホールで『ポップスジャム』の生中継ライブに
出演する予定になっている筈ですが」
 髪をかきあげながら、怪訝な目つきでマネージャーは答える。
「あ、そなの。いやーそーだったそーだった。やだなー、俺が忘れる訳ないじゃん。
そんな大事な仕事。はっはっはー」 
 と、後頭部をかきながらごまかす。
「『俺』?」
 再び怪訝な目つきのマネージャー。眼光に鋭さを見せた。
「え、いえいえ、『私』ですわ。ほほほほほ」
 やべえ。つい自がでてしまった。
 マネージャーは怪訝な目つきを変えず、いや、ますます強めるばかり。
彼女の不信感がビンビンに伝わってくる。俺の額と首筋に、奇妙な脂汗が流れる。
 
 やがて、
「…由綺さん、やはりお体の調子、すぐれないようですね…」
 彼女が口を開く。
「え、ど、どぼじて」 
 素っ頓狂に、思わず声を上げる俺。
「何だかいつもの由綺さんらしくありません。大体先程から私を呼ばれる時は
『マネージャー』などと言われますし」
「え」 いつもは違うのか?
「いつもの由綺さんなら、私の名前で呼ばれる筈ですのに…」
「そ、そだね」 
 ごまかす。
「それに…」
「…それに?」
「由綺さんは普段、煙草なんかおめしになりません。それを、ウィンストンみたいに
きつい煙草を一気に4本も…」
 げ、そんなチェックまで入れてたのか。本数まで。て、灰皿の中見りゃ判るんだけど。

「…あなた、本当に、由綺さんですか…?」

 マネージャーの怪訝な視線は、一気に疑惑を加えたそれへと変わる。
恐ろしくクールな視線。そのまま射貫かれるような感覚を覚える。
 
 どうする?どうする?どうするよー、俺。どうすべなー。
 
 と、こんな風に言うとそんなに深刻そうに聞こえないが、実の所かなりあせりまくっている。
額と首筋に流れていた脂汗は背中一面にも流れてゆく。

 ここで打開策を繰り出した。

「………うしゃーーーーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!」
「???????????!!!!!!!!!!!!!!?」

 俺はいきなりマネージャーをソファーの上に、覆い被さる様に押し倒し、

 そして、

「ああああーーーいいなーーーいいなーーーこの豊満な胸!!!」
[あ、あ、あ、あ、何を、何を、何を、何を]
 
 彼女の豊かな膨らみの胸を、ただひたすら揉みしごく。

「あああああーーーーマシュマロみたひいいーーー」
「やめて、やめて、やめて下さい、由綺さん…」
 
 彼女は顔を紅く染め、悶える様にその口調はだんだんと小さくなってゆく。

「♪二つのムネ〜の〜ふ〜く〜ら〜みは〜、何で〜もでき〜る〜、しょ〜こなの〜♪」
「いや、いや、いや、いや・・・」
 
 と、言いながらも、彼女の乳首が突起しているのを俺は見逃してはいない。

「あああああーーーん。ふわふわのもっこもこだーーー」
「ううっ、ううっ、ううっ、ううっ、はあああ……」
 
 豊乳を下から上へ、下から上へと、上げては寄せ、上げては寄せと揉みしごきの動作を繰り返す。
 やがて彼女の顔と向き合い、淡い紅色に染めた頬に向けて、生暖かい息をふうっと吹き掛ける。

「ここがいいの?ここがいいの?ここがいいの?お姉様?」
「はあっ、はあっ、はあっ、ああああああ……」
 
 手の指先は乳首をくりくりと弄る。声はあがらい、眼は潤み、膝をがくがくとふるわせる。
拒んでいても、それは素振りのみ。

「…ここが、いいの…?」 
 
 ダメ押し。

「…はい…」
 
 堕ちたな。ふっ、感じやすいおなごよ。
 
 ここで豊乳から手を放し、

「あ…」
 
 反応を待つ。

「……」
 
 そして、

「もっと、やって、欲しい…?」
「…はい」
 
 虫が鳴くような声で答えるマネージャー。くっくっく、我が牙城に屈したか。

「本当に、もっと、やって、欲しい?…」
「…はい」
 
 恥じらいながらも、眼は否定していない。
「あなたの名前は…?」
「しのづか…やよい…」
 
 ここで初めて彼女の名前がわかった。よっしゃー。

「やよいさんは、胸、触られるの、好きなの…?」
「…好きです」
「やよいさんは、俺に、胸触られるの、好き?」
「…はい、由綺さんに触られるの、好きです」
「もっと、触られたい?」
「…はい、もっと…して…下さい…」
 
 よっしゃー。

「じゃあ、その前に…」
「…その前に…?」
「俺の事、『一休さん』て、呼んでみそ?」
「…いっきゅうさああああああん…」
「はあーーーーああーーーーいいいいいいいいーーーー!!!!」
 
 謎である。

 こうして俺は、弥生さんと再びバトルを繰り返した。






































(筆者 注: このシーン、良俗に反するものと判断したため、
大変申し訳ございませんがカットさせて頂きます。真っ白な空白部分は、
バトル中の登場人物二人の頭の中が真っ白となっているとご理解して頂ければ幸いです。
ここで念を強く押します。決して、決して筆者の手抜きではありません。
ええありませんとも。違うんだったら)




































「…はあっ、はあっ、はあっ、はあ………」
 
 一戦終えた後、弥生さんは火照った顔をあお向けにし天井へ視線を向けたまま、
ぼおっと惚けている。その品のよい服ははだけ、スカートの裾は根元まで上がり、
傷一つない膝を小刻みに震わせている。肌に流れる露のごとき汗は、
応接室の蛍光燈の光が反射して光っている。
 俺はといえば隣にあぐらをかいて座り込み、新しい煙草に火を付け一服している最中。
一仕事後の一服がうめーんだわ、これが。

「弥生さん、気分は?」
 ふう、と煙を吐きだしながら、訊いてみる。
「はい…とても、よかったです…」 
 と、弥生さんは満足げに答えた。
「そりゃよかった。俺もすっとしたし」
 話もごまかせたし。
「でも由綺さん『も』、まさか…」
「ん、何?」
「いえ…」 
 と、はにかみながら、彼女はソファーの上に顔を埋めた。知的でクールなお姉さんだと
思っておったのだが、こうなると中々コケティッシュで、そそるものがある。
 しかし何が、『も、まさか』なのか。よくわからん。

「あ、そういや」 
 大事な事を忘れていた。俺は吸っていた煙草を灰皿の中でぎゅっ
ともみ消した。
「…何か」 
 ぼおっとしながらも、ゆっくりと起き上がりながらつぶやく弥生さん。
「弥生さん、JHKホールへ行かんでいいの?」
「…あ、そういえば」
「ライブだし、遅刻したらヤバいんじゃないの?」
「はい、生中継ですし、遅刻する訳には…。それになんと言っても国営放送ですから、
そういうことには何かとうるさいですし…」
 と言いながら彼女は立ち上がり、はだけた服と乱れた髪を整えている。
この切り替え、さすがにプロである。
「ほんじゃ、ちょっくら支度整えて、戦場へ行きますカニ」
 と、謎な語尾で締めくくり、背伸びしながら俺は立ち上がった。
 
 ところが、

「…あの由綺さん…」
「なにさ?」
「やっぱり…あなたは…由綺さんじゃ…」
 俺の言葉尻に反応したのか、またも怪訝な顔を作り、俺の顔を覗き込む弥生さん。
やばい、また疑い始めている。ダメ押しが必要か。

「弥生さんっ!」
 と叫び、俺はぐわしと彼女の両肩を掴みそのまま壁に突き倒し、至近距離まで顔を近づけた。
「…あ、あの、あの由綺さん…」
 いきなりだったので、彼女はひどく戸惑っている様子。体を縮め、体を硬直させている。
こうなればこちらのもの。

「弥生さん?」
「…は、はい!な、なにか…?」
 唇を近づけると、彼女の頬は紅く染まり、ややつり眼がちな瞳が
大きく開く。

そして俺は、

「この次はさ、もっとたっぷり、愛してやるからね」
 
と俺は口元にむかって呟いた。

 彼女は、
「はい…」
 と、眼を閉じ、消えてしまいそうな小声で呟いた。愛いやつよのおう。

 さ、ほんじゃ、行こか。
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(後編へ続く)