在原業平だ。光源氏でもかまわない。
俺の名前ではない。俺の状態だ。
俺は嫌になった。すっかり嫌になった。
すさんだ生活に嫌気がさす。
俺はクズ。クズ野郎。
セックスするのにくたびれた。
広く浅く手をだしすぎ、本当の自分を見失ってしまった。
月曜の夜は美咲さん。
火曜の夜は弥生さん。
水曜の夜は理奈ちゃんと。
木曜の夜ははるか。
金曜の夜は由綺。
土曜の夜はマナちゃん。
日曜の夜は彰。
あー、俺には本当の恋ができないのか。
何故俺には本当の恋をモノにすることができないのか。
全くへとへとになる。顔が赤くなる。
自分の言ったことに恥を感じる。悪いか。
俺は案山子。
頭の中は藁と大鋸屑でできている。
カラスにつつかれ、頭の中は益々空っぽ。
心の中は全く空虚。すっぽりと穴があいている。
俺は案山子。頭と心はすっかり空っぽ。
今夜、俺は彼女にひざまずき、乞いを願う。
「ねえ、マナちゃん・・・起きてる?」
「ううん・・・藤井さん、なあに?」
「お願いが有るんだけど」
「奈阿仁?」
「もういちど、いい?」
「・・・・もう、藤井さんのえっち・・・・でも・・・いいよ」
「出来ればお願いが有るんだけど」
「那唖煮?」
「リボンつけてくれない?出来ればチェックのを」
「へんなこというのね・・・・これでいい?」
「あと・・・」
「あと・・・・なに?」
「俺のこと、お兄ちゃんって、呼んでくんない?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
電撃的に、俺の頭上にマナちゃんのかかと落としが炸裂する。
「こ、こ、この・・・・腐れエロゲーオタクがーーーーーーー!!!!!!!」
炸裂。
誰か俺に本物の恋を教えてくれないか。
誰か俺を救ってくれ。
誰か俺を導いてくれ。
誰か俺を満たしてくれ。
誰か俺を慰めてくれ。
誰か俺に優しくしてくれ。
俺は薄れゆく意識の中でそっとつぶやいた。
裸のまま。
(完)