痴漢電車 夕下がりのわななき(中編) 投稿者: マイクD
放課後、学校が終わると、嫌がる私を無理矢理引き連れて、志保はいつも自分が通学に
利用する私鉄の最寄り駅へと向かった。

今着ている制服のままでは、いざ、という可能性もあるのでマズイという志保は駅の女
子トイレに入ることにした。変装に着替えるためだ。
今着ている学校の制服ではいざというとき危険、というのは志保の言。確かにあとで仕
返しとかされるの恐いし。
志保と私は二人一緒にトイレの一室に入った。私達を変な目で見る人達の目がちょっと
気になったけど。

「あかり、んじゃ早速この服に着替えて」
「え、志保これって・・」
志保が大きめのスポーツバッグから取り出したその服は、お嬢様学校で有名な西大寺女
子学院、通称寺女(てらじょ)の制服だった。
「志保、この制服どこで手に入れたの?」
「ああこれ。アタシのゲーセン仲間で千晶ちゃんて、寺女に通ってる娘がいてさ、対戦
ゲームやった時の賭金のカタとしてアタシがいただいたの。その時の服よ」
「賭金って志保・・」
「お金に困った時にブルセラショップにでも売っ払おうかなーと思って温存しておいた
んだけどさ。寺女の制服って結構その手の店では高く買いとってくれんのよ。でもまさ
かこんなところで役に立つとはねー。ぐふふ」
「・・・・・・・・・・」
「そういえばあの時の千晶ちゃん、涙目してたわねー。どうしてかしら?」
志保を言葉を聞いた時、友達はもう少し注意して選ぼうと心に深く刻んだ。

私は寺女の制服に着替え、さらに志保の言葉に従い、編んでいた三つ編みを
解いて髪をストレートにおろし、自分の履いていた靴下から志保の持っていた履きかえ
用のルーズソックスを貸してもらい、それに履き変えた。
「よく似合ってんじゃん!かわいいかわいい。んじゃさらに・・・・」
そう言うと志保はカバンの中から香水を取り出し、私の体にシュッと吹きかけた。
「そして駄目押しに・・・・・・」
そういうや否や、志保は花模様のブローチを取りだし、私の髪にそっと取り付けた。

「おおう、正にパーぺキね!これでまごうことなき、どこから見ても世間一般のイケイ
ケ女子高生って感じよね。ナイスナイス!」手を叩き、はしゃぐ志保。
「そ、そうかな・・・・?」
志保の言葉に、私は思わずはにかむ。やだ、頬が赤くなってきちゃった。自分が自分で
ないみたい。私も西女の制服って結構憧れてたし。でもちょっと派手かな。
と、そういう問題? 私。
すでに志保の術中にはまりこみ、口八丁手八丁に丸め込まれている私。こんな単純な性
格な自分が時々いやになることがあります。
志保がふりかけてくれた香水の香りが、私の体から漂ってくる。私は香水を付けるのは
これが初めてだった。
「志保って香水なんて使ってたんだ」
「まーね。今時の女子高生の身だしなみってやつよ。でも、これで指輪とかアクセサリ
や、髪にメッシュ入れてみるとか、色々やってみたかったんだけどね。ま、これでいい
か。即席にては上出来上出来。じゃ、そろそろホームへ行くか」

私達はトイレを出てプラットホームへ向かい、列に並んで列車の来るのを待つ。
「用意はいいわね、あかり」
「う、うん・・・・。でも、ほんとにやるの?志保・・・」
私は不安と悪寒を今だに感じる。人としてこのまま、いけないところに行ってしまうの
ではないのだろうか、と。
「あったりまえじゃない。なに今更怖じ気づいてんのよ。アタシ達のやることは言わ
ば世直しよ、世直し。よ・な・お・し。長七郎天下御免!ってところよ。OK?免許ない
けど爆走中、もうオレたちゃ後戻りは出来ないじぇいってね。ほら、キングシーサーも
言ってんじゃん。『賽は流された』って」
それを言うなら『賽は投げられた』で、言った人は『ジュリアス・シーザー』、
『キングシーサー』は怪獣のことだと、私はそっと心の中で突っ込んだ。
あんた一体いくつやねん、キングシーサーを知ってるとは。只者ではない。

「じゃあいいわね、あかり。私は影で隠れて見ているから。アンタはなるだけスケベ面
したオヤジやロン毛の男やマイクDのいそうな場所に陣取って、様子をうかがうのよ?」
「か、影で見ているって・・もし痴漢に出くわした時は?」
「そんときゃアタシが出てきて、『ちぇいさー』ってな具合で相手をブッたたくわよ。
それまではアンタ、体をなすがままにさせとくのよ」
「・・・・・・・・・・」空いた口が塞がらない。
「まあ痴漢が出てきたら、しばらくは体をなすがままにさせることね」
「な、なすがまま・・って、私そんなのやだよ」
「何言ってんのよ。そうじゃないと囮の意味、ないじゃない。ほーら、気合い入れて、
根性根性。よっしゃーうおっしゃーってね。ハイ、あかりも言ったんさい」
「え・・・『よっしゃーうおっしゃー』・・?」
ぼそりと小さく虫の鳴くような声で、私はつぶやく。
「声が小さい。も一度」
「よっしゃ〜うおっしゃ〜」
私は連呼する。泣きながら。
「よっしゃーうおっしゃー」
腰に手をあて、正拳突きの構えをとりながら、力強く連呼する志保。
「よっしゃ〜うおっしゃ〜」
「よっしゃーうおっしゃー」
「よっしゃ〜うおっしゃ〜」
「よっしゃーうおっしゃー」
「よっしゃ〜うおっしゃ〜」
「よっしゃーうおっしゃー」
「よっしゃ〜うおっしゃ〜」
「よっしゃーうおっしゃー」
「よっしゃ〜うおっしゃ〜」
「よっしゃーうおっしゃー」
駅のホームで応援団のように連呼する私達二人。周囲の乗客は、遠巻きにして連呼する
私達の姿を見ている。まるで珍獣を見るかのように。あ、振りかえるとみんな無視していく。
私はその時人間をやめたくなりました。真剣に。
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満員電車.。ちょうど会社員、学生の帰宅時間が重なりあい、一番の混雑となる時間帯。
押し合い圧し合い、アンコが外へ飛び出すかのような箱詰めの列車。文字通り「箱」詰め。
そんな中、私は志保から貸してもらった西大寺女子学院の制服を着、ラッシュの電車に
乗りこむ。

満員電車の中を見渡す私。ぐるりと周囲を観察してみる。
普段こういう満員電車に縁がないためか、何でんないことでも、私には見るもの聞くも
の全てが珍しい。
なるほど、確かに志保のいったとおり一種の社会勉強かな。これも。
周りを見渡してみる。実に様々な人が乗っている。
会社帰りらしき人やお姉さん。ずいぶんと疲れきった様子。うちのお父さんも家に帰る時、
あんな顔をしているのかな。
詰め襟でカバンをたすきに掛けウォークマンを聴く男の子。音量オーバーで外に漏れる
音から察すると、おそらくイースタン・ユースでも聴いているのか。ノイジーなギター温がここまで聞こえて来る。
明らかに自分の世界に入り込んでいる様子。
私と同い年くらいの制服姿の女の子。突然携帯電話の呼び出し音が鳴りだし、大声で笑
いながらしゃべっている。彼氏からかな?それにつけても、もう少し小さな声で話せばいいのに。
Tシャツにサック、レニハットを被るというラフないでたちの男の人。大学生かな。そ
れにつけても髪を紅く染め、耳はおろか口元や鼻、果ては裏まぶたにまでピアスをつけ
ているのはどう見ても異様。本人はかっこいいと思っているのかもしれないけど。
買い物帰りでたくさん荷物を抱えた太ったおばさん。今晩のおかずでも入っているんだ
ろうか、よくあるスーパーの買い物には溢れるばかりの物がはいっており、でんと傍若
無人にシートに座り込んでいる。
Young○ニマル開いて、「ベルセル○」読むようなふりをしながら「ふ○りエッチ」読
んで股間をふくらますマイクD。Tシャツにジーンというラフな格好。白いTシャツに
は大きなロゴで『爆音炸裂』と書かれており、怪しさを倍増させている。ウヒヒとにや
け、周囲は明らかにひいている様子。ひょっとしたらわざとやっているのかもしれない。
蔑んで見られるのを楽しむという自虐的な、マゾ的な楽しみを。

様々な人の姿。
私は改めて思う。この世には十人十色という言葉が存在するように、実に様々な人々が
其々の生活を営み、日々を過ごしているのだと。お互い相手に興味があるくせに無関心
を装う。私にはそれがなんだか可笑しく思えてならない。何をみんな、そんなに恐れて
いるのかと。私も人のことを言えた義理ではないんだけれど。
そしてもう一方で思うこと。様々な顔があると。
様々な顔つきをした人々。それを見るたびに思い出すこと。それは中学時代の同級生だ
った佐山さん。
彼女は顔が横に長かったせいか、生徒手帳に張る顔写真が欄に入りきらず、顔写真を対
角線に傾けて張っていたが、そんな話はこの際どうでもいいことだと思う。走り高跳び
のバーを顔でいつも落としていたというのも、それも本人の勝手だと思う。
あれ、ええと要するに何が言いたいのかというと、人には様々な顔があるということ。
私は普段、満員の電車など縁がないためか、なんでんないことでも色々なことを思う、
ということが言いたかったんです。あれ?なんで話が変な方向に行ったんだろ?

それはともかく、左右に大きく揺れる電車の中、私はも一度周りを見渡す。痴漢らしき
人の姿を探すために。
見つからない。
当たり前である。
痴漢というのは闇に潜む忍者と同じで、普段その正体を明かさない。そして時来りなば、
彼らは覆面を被り行動に出る。いわばゲリラみたいなもの。
逆に痴漢が自分の首に「痴漢ここに立つ」とか「痴漢、大地に立つ」とか「痴漢、破壊命令」とか「敵の痴漢を破壊せよ」とか
「痴漢、脱出作戦」とか「痴漢、突入」とか「ランバ・○ル、痴漢」とか「光る痴漢」とか「ク○ルス・ドアンの痴漢」とか、
立て看板をぶら下げて立っている訳がない。
何だか書いててよく分からなくなってきたけど、とにかく志保のしばらく様子を見てお
けという言葉に従い、私は電車のドアの角に陣取り、様子をうかがうことにする。

そんなことをしている中、ふいに電車はカーブにさしかかったのか曲がりはじめ、スピ
ードを出していたため、大きくグラリと車両が揺れた。
乗客も一緒に揺さぶられ、ぶつかりあい、倒れる人も中にいた。
私もその勢いでドアに叩きつけられ、思わず「キャッ!」と声を上げてしまう。
ドアにぶつかってその反動でバウンドし、後ろの方向に倒れてようとしていく。
するとなにかドスンと、固いというかやわらかいというべきか、不思議な感触に出会う。
明らかに人の体の感触。
振りかえるとそこにはロングヘア、そしてサングラスをつけた若い男の人の姿が。
え・え・え? こここれがひょっとして志保の言ってた痴漢さん?

『ロン毛でグラサンつけた男がアタシの胸をモミモミしたりお尻サワサワしくんじゃないの』
志保は確かにそう言ってた。嘘だと思うなら、前編の最初の志保のセリフを読み返してください。

つつついに現れたのね、痴漢さん。こここここれがいわゆるところの第一種接近遭遇ってやつ?
気がつくと痴漢さんはははは私しししししの肩をかかかかかかか抱えるようにして手で
つつつつつつつかんでおり、わわわわわわわわわわわ私わらしをどどどどどうするつつ
つつつもりなんだろろろろろうううう。
わあああらしにはひひひひひひひひひ浩之ちゃちゃちゃんという心に決めた男の人がい
てわたああああしししししにはそんなことととおするつもりは最初からささささらさら
なかったはずで志保にままままんまとはめられれたというか私しししがはっきりと拒否
反応をおこささあさなかったのが原因で私は時々こんな物事をはっきり言えない自分が
嫌になり志保のようなアバウトな性格がうらやましく感じることが多々あり今日のおか
ずは豆腐のステーキに豆腐の味噌汁におからと大豆ずくめなメニューでそういえばジャ
ッキーブラウンみそこなったなあビデオ化はいつかなあ8月には○ジロックフェスがあ
ったなあまだチケット買ってないけど大丈夫かなあ同じ月にはコ○ケもあるしイベント
ずくめだなあ持つかなあ体マイクDがハマッてるゲームといえばEA-Sportsの
WORLDCUP‘98でなんかまたキーボード壊すかもしれないのにそんなことしている場
合か勉強しろ勉強そんなことばっかりしてるから巣鴨のピンサロでボラれるんだじんじ
ろげはげろげろげのきんぱついくもうだつもうよぼうにかろやんはいかのてんぷらあぶ
らがしつこく浩之ちゃんと私は同じ井戸水で育った筒井筒Ohーsha-la-la-la-laおお春よ
春あ今は夏か今日も暑いのう次のSSはどんなネタにしようこんなの書いたら熱狂的な
フリークからまた殺人メール送られて来るかなあそれはそれで面白いけど実際マイクD
は痴漢にあったことがありあろうことかそいつはホ○だったので股間さすられその日運
の悪いことに受験でその日を境に人生棒に振りまくり今度会ったら滅殺じゃくそこら。

あ゙ゔゔゔゔ、うろたえまくる私。途中から何を言っているのかさっぱりわからない。
なんか意味不明なこと口走っているし、真ん中辺りから素に戻って吃りも消えてるし。

そこへ。
「大丈夫?」
え?
「大丈夫、君。顔赤いよ」
え?え?
「ここの区間、ほんとにいやになるよね。急カーブが来るていうの解ってるんだから、
もっとスピードおとせばいいのに。そのうち大事故になるよ」
え?え?え?
「君の体、触っちゃったね。勘弁してね。悪気があった訳じゃないから」
「い、いえ、そんな・・・・・」
意外にも痴漢さんは優しげな顔をし、私に頭を下げる。
て言うか、この人本当に痴漢さん?
「どこもケガしてない?」
「は、はい」私は顔を真っ赤にし、しどろもどろになって痴漢さんに応える。
よくみるとこの痴漢さん、すごくかっこいいお兄さん。小粋といったらいいのか、ブラ
ンドものの黒い色をしたスーツを着け、嫌味けがなく、それどころか非常に様になって
いる。ほのかなコロンの上品な香りが私の鼻をくすぐり、それがいっそう私の顔を赤面
させ、言葉の呂律を回らなくさせる。

よくみると河村隆一君っぽいし、目鼻もすっきりと通っているといえばいいのかな、やだ、なんでこんなに胸がドキドキするんだろう。私ってこんなに気の多い女だったっけ?私には浩之ちゃんという心に決めた男の人がいて、それでも、やだ、なんでこんなにドキドキするの?
「大丈夫?ほんとに。顔赤いけど。なんだったら次の駅で降りる?駅長室まで一緒につ
きあうけど」
河村君(仮名)は私のおでこに手を当て、優しい口調で私を心配してくれる。

そこへ。

「ちぇいさぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

どこに潜んでいたのか、突然志保が怪鳥のような掛け声をあげて、上から私の前に降り
立ち、目の前にいた河村君(仮名)の首の側部に手刀を叩きいれた。
「見たよ見たわよ聞いたわよ!!ついに現れたわね、この変態ヤロー!アタシの体をサ
ワサワしたり二つの胸の膨らみをモミモミ揉みまくるだけでは飽き足らず、アタシのか
けがえのない親友にまで毒牙にかけようたあいい度胸してんじゃん、アンタ」
志保は河村君(仮名)の顔面を正拳で突き、5発、6発と単発入れずに叩き込む。あ、鼻折れてる。
「ふん、黒いスーツなんか着てさ、真心ブラザーズでも気取ってんの、アンタ。気取っ
ちゃって、似合わないのよ。オラオラオラ」
志保は河村君(仮名)の着ていたスーツを無理矢理脱がし、真っ裸にする。ビキニパン
ツ一丁になった哀れな河村君(仮名)。
「いいカッコね。アンタにゃそれがお似合いよ。ふんぬっっっ!!!」
そのまま志保は河村君(仮名)のお腹にパンチを入れ、床に倒れこんだ河村君(仮名)
の頭上にかかと落としをいれた。河村君(仮名)は耳、鼻、毛穴、口、目、とそれぞれ
の場所から血を吹き流している。
「花も吉野の千本桜、比べて劣らぬ遠山桜でぇい。とっくと、拝みやがれぇいいい!」
意味不明な事を口走る志保。志保は電車の窓を開け、そのまま河村君(仮名)の体を抱
えこみ、外へ放り投げた。電車はちょうど鉄橋の上を走り、下には川が流れている。河
村君(仮名)はそのまま下へ、川へと落ちていった。
裸、パンツ一枚のままで。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
河村君(仮名)の悲鳴が聞こえて来る。断末魔、とでも言うべきか。ドップラー効果が
きき、河村君(仮名)の悲鳴はそのまま低く小さくなってゆく。

「ふっ、危ないところだったわね、あかり」
一息いれ、手をパンパンと叩きながら、志保は満足げな顔を私に向ける。
「し、志保・・・・」
おそるおそる私は志保に呼び掛ける。先程まで赤かった顔が青くなっていることを自覚する。
「もう少し殴っときゃよかったかね。なーんか不完全燃焼なのよねー、アタシ」
髪をかきわけ、得意げな顔を作る志保。
「あ、あの・・」
「まーちょっとは懲りたかもね、あの変態も。あれくらいしときゃ、まー二度とこの電
車乗ろうとはしないでしょうね」
「だ、だから・・」
「あ、アンタも殴りたかった?悪かったわねー、アタシだけ散々暴れて。ま、いいじゃ
ないの、幸いアンタはまだ被害被ってないし。これにて一件落着ってね。さっさと
駅に降りて、ヤックで祝杯と行きましょうかね!!」
「あ、あのね志保、さっきの人違うの・・・・・」
「へ?」
「だからね、あの人痴漢じゃないの・・・・・」
「は?」
「あの人さっき私が電車の揺れで倒れそうになった時、支えてくれた人なの・・・」
「い?」
「だからね、痴漢じゃなくて・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
私達は我に帰り、ふいと周りを見渡す。周りの目は私達を囲み、ケダモノを見るような
目で突き刺す。痛い。
「…お呼びでない?」志保は頬に手を当て、首を傾げるように呟く。
周りの乗客は一斉にコクンと首をうなずかせる。
「お呼びでないのね?」
再び一斉にコクンと首をうなずかせる周囲の乗客。

「・・・・・・・こりゃまた失礼致しましたっっっっっっっっっとととと!!!!!」

だああああっっっと一斉にのけぞる乗客一同。まるで示し合わせているかの様に。
古のゲバ○○90分を思わせるものがある。そんな古い番組見た事ないけど。

ちょうどタイミングよく電車が駅に止まった。私達二人は急いで電車を降り、反対側の
ホームへと駆け出した。
「ぐうううーーーー、第一会戦は失敗ね。ま、しゃーない、継続は力なりよ。
続いて第二会戦いくわよ、あかり!」
「ま、まだやるの、志保?」
「あたりまえでしょ!!こうなりゃ徹底的にやるわよ。ここでやめたら女が廃るわよ」
もう廃ってるって。

「後編に、続くーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」わめき叫ぶ、志保。
「うぇぇぇぇぇぇぇん、もうやだよーーーーーーーーー!!!!!」泣き叫ぶ、私。
二人の怒声と悲鳴がホームにこだました。入線する電車の音と共に。
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(後編に続く)