雪の降る朝 投稿者: マイクD
雪。
雪が降る。
どのくらい降ったのか。
あと、どのくらい降るのか。
白い宝石の塊、ずうんずうんずうんずうん、輝き、静かに、降る。

雪を見るたびに浮かぶ、思い出、時間、あの娘。
そして、痛み。

由崎。森川由崎 。
彼女は遠くに行ってしまった。
僕の手のとどかないところへ行ってしまった。
あまりにも遠くへ。
僕はただ、彼女とかけ離れた場所から、彼女を見守るしかない。
それしか出来ない。
君の通る道を、歩く足を、駆け登る姿を、輝きの増す笑顔を。
ただ僕らは「絶望」の「望」を信じる。
幸を、笑みを、輝きを、守る。

さようなら、由崎。
僕は美咲さんとの愛に生きる。
僕が彼女を必要なように、彼女も僕を必要とする。
さようなら。
僕ははるかとの時間を取り戻す。
彼女の失われた心のピースを、少しでも僕が埋めるように。
さようなら。
僕はマナちゃんとのかけがえのない喜びをつくる。
例えそれが偽善と呼ばれようとも。
さようなら。
僕は理奈ちゃんと共に手を取りあって生きる。
例えそれが険しい、茨の道だとしても。
さようなら。
僕は弥生さんとの・・・あ、弥生さんはパス。まだ解いてないし。
さようなら。
僕は彦蔵との禁断の愛を選ぶ。
例えそれが報われない、禁断の契りだとしても・・・・って・・・ん?

ってたってぇ・・・・なんだぁなぁ・・・その・・・さぁ・・・。
さぁ・・・って言おうか・・・・ねぇ・・・・なんか・・・ねぇ・・・・。
「そんなのない」って、そーだっけ?もう・・・。
わかんないかなぁって・・・さぁ・・・・って。

んで、どう?

「冬弥、何一人でひたってんの?」

どぶろっくをっっとわぁあああぁぁっっつつつつつつつつっ!!!!!!

「ねえ、どうしたの?ひどく驚いたみたいだったけど」

いきなり俺の背後をついた影の者、その名は。

「僕だよ、彰。七瀬彰だよ。やだなあ冬弥、朝から冗談ばっかり。おはよう」
「・・なんでもいい、時代劇の見過ぎだな、俺。それにしても彰、俺の後ろに
立つな。忍者かお前は」                         
「冬弥、まるでゴ○ゴ13みたいなこと言ってる」
「・・彰、お前タダモンじゃないな」
「それより冬弥、一人称が『僕』から『俺』に変わってるよ。いいの?」
「別にかまわん。男が細かいことを気にしていては、天下は取れん」
「冬弥って野心家なんだね。『天下を取る』なんて」
「本気にするな。ものの例えだ。・・・それより彰、お前何でここに?」
「やだなあ、バイトにきまってるじゃない。今日はおじさんの喫茶店でバイトの日。だからこんな雪の降る中を朝から来たんじゃないか」
「やたら説明口調だな」
「状況説明ってやつ」
「で彰、今さっき俺が『ひたってる』て言ってたけど、なんか俺ぶつぶつ言ってた?」
「うん、言ってた」
「なんか聞いた?」
「んーと、なんか美咲先輩との何とかって言ってたとこから」
・・・・・アブねえーーーーーっっ。よりによって、美咲さんの名前を彰に聞かれていたなんて。

「でもそのあと言ってたことがよく聞こえなかったんだ。ねえ、何言ってたの?」
言えるかそんな恥ずかしいこと。しかもよりよって彰に。言ったが最後、俺は
『破璃拳ポエマー』という輝かしくも恥ずかしい称号を贈り名される。
切腹ものだ。そんな称号。マイクDだ。

「ねえ、何言ってたの?冬弥」
「言わぬが花」
「?」

俺、藤井冬弥は大学へ通う傍ら、アルバイトで日々の暮らしをする、しがない
貧乏学生。今日は『エコーズ』でバイトの日。
『エコーズ』 ロックの曲にもあるような名前のこの店は、俺の今横にいる親
友、七瀬彰の叔父にあたる人が経営する、まあどこにでもあるようなしがない
喫茶店のことである。
店長の趣味か、BGMにクラシックを流し、狭い店内の割には、小奇麗で落ち着 いた雰囲気をかもし出している。
また彰の叔父にあたるこの店長という人が、無口で他人によけいな顔を突っ込
まないという人柄な為か、近くにあるTV局の、いわゆる業界人と呼ばれる人種
が顔をだしてくつろいでいる。
彼らにしてみれば、顔が職業柄知られすぎているということもあるためか、い
ちいち詮索される、珍獣のように珍しがられるのは迷惑この上ないので、このような素知らぬ存ぜぬ我関せずといった風の店長、店はありがたい存在なのだろう。

んで、俺はこの店に不定期ながらも、ほぼレギュラーとしてバイトにいそしんでいる次第。俺自身有名人とか芸能人とかにはあまり興味は無く、その点においてはこの店のスタッフとして一応の資格があるのだろう。大体俺自身、アイドルを彼女にしてた訳だし、今更業界人だろうが芸能人だろうが珍しくはない。

でも雪の降る朝からバイトに入るのははっきり言っておっくうだった。今は学
校も長期休暇だし、暇といえば暇なのだが、やっぱりこんな雪の降る朝には炬
燵にはいって寝ているにかぎる。

「ねえ冬弥、さっき雪が降るのじっと見て浸っていたみたいだったけど、何考えてたの?」
いきなり直球を投げ込んできた彰。さっきも言ったようにそんなこと言える訳ない。
「なんか冬弥の目、遠くのものを懐かしそうな感じで見ていた目だったけど」
ほんとにそうか?実際遠くにあった出来事のように思えるが。こいつぼおっと
しているようで、意外に鋭く確信をついてくることがあるし。
「ねえ、何考えてたの?」
しつこい彰。しかし恥ずかしくて本当の事など言える訳ない。俺はここはごま
かすことにした。

「雪見てるとさぁ、なんか小さい頃を思い出しちゃってさぁ、俺」
「小さい頃?」
「うん、ガキん頃よくやんなかった?ほら、積もった雪にオシッコひっかけて
『氷レモンーーーーっ』てゆうの」
「?」
「いやーーーーーっっっ、俺ってばさーー、雪見るたびにそのこと思い出しちゃ
うんだよ。だからさーーーーっ、スキー場なんか行くと困っちゃうんだよなーー
ーー、雪見るたびに連想するのは、『氷レモン』なんてなーーーーっちゃちゃ」
「・・・・冬弥?」
「季節はずれだよなーーーーー、冬に『氷レモン』なんてさーーーーーーっ。
人生の恥ってやつーーーー?俺」
「・・・・・冬弥って、なんか変・・・・」
やかましい。しかしここは押しのところ。

「あははあああーーーーなんか俺、もよおして来ちゃったなーーーーーっっっ。
よほおほーーし、ここは一つ久しぶりに、氷レモンつくっちゃほおっほっかな
はーーーーー」
「冬弥・・・・?」
俺はチャックを開け、俺のナニを出して、したくもないのに無理矢理雪の上に
オシッコをする。その場で。はっきり言って、俺、かっこ悪い。世界最強に。

「はあれへーーー?氷レモンじゃなくて、これじゃぁみぞれだはあーーーー」
要するに、色なしってこと。
「・・・・・冬弥、それって軽犯罪法違反で、刑法第・・・」
「細かいこといふなはあはーーーー。そうだ彰クン、ここは僕たちの友情を深
めるためにも、『連れション』っていうのはどうだはあい?」
「ぼ、僕はいいよ・・・・」
「細かいことはきにするなはあーーーー。男がタチションの一回や二回出来なくてどほおするうーーー?それじゃはあ天下はとれないぞほうーーーー」
「・・・冬弥ってやっぱり野心家なんだね。ひょっとして冬弥、本宮ひろ志の
ファン?愛読書は『男一○ガキ大将』とか?」
「・・・・彰、お前やっぱりタダモンじゃないな」
「・・・冬弥がそこまでいうんだったら・・・・」
そういうと彰は観念したのか、自らもチャックを開き、ナニをだして俺の横に
並んだ。しかたがなしにという感ではあるが、彰は顔を赤らませ、何故かはに
かんでいた。何が嬉しい。
感想。・・・俺よりも存在感がある。
まあよい。男は太さではない。


ちなみにマイクDの友人から聞いた話だが、これはその友人が中東を旅行した ときの話。
中東は危ないところだと聞いていたが、その友人はヨルダンで危険な目に
あったらしい。事の起こりは、ヨルダンでヒッチハイクをしていた時のこと。
彼は歳のいったおっさんにトラックの助手席に乗せてもらった。おっさんはし
ばらくすると、いきなり自分のナニをズボンから取り出した。驚いた友人は敢
えてさり気なく無視することにして、しばらく窓の外を眺めて目をそらした。
するとおっさんは、「お前、これを見ろ」と言う。
それでも無視していると、しまいには、「お前日本人だから小さいんだろう、
日本人は小さいと聞いているぞ、だから見せられないんだろう」とからんできた。
彼は自信があったので、そうまで言うんだったら絶対ハンドルから手を放すな
よお前、と言い含め、どうだとばかりに自分のナニを見せたらしい。
見せろと言う方も言う方だが、見せる方もどうかしてると思う。
結局その場は友人が大きさ的におっさんに勝って、事無きを得たという。
中東は本当に危ない。
そんな話はどうでもいいんだ。
閑話休題。


彰はそのまま見事な氷レモンをつくり、何やら嬉しげに俺の顔を眺めた。
「あははっ、出来た出来た。ほら冬弥、氷レモン」
「ははは・・・よかったな」
さっきまであんなに嫌そうだったではないか。何がそんなに嬉しい、彰。    
「あははっ、なんか楽しいね。こういうのって」
そうか、それはよかった。しかしなんか論点がずれてるような気がしてならん
が。気のせいか。
それにしても、いい歳こいた大学生の男二人が雪の降る中、朝っぱらからタチ
ションベンをする姿というのは、なかなか豪快さんな風景だと思うが、人に見
られると弁解の余地がない。幸い今は朝の6時すぎ、店の周囲は誰もいないのだが。
                                                                      
そこへ。
「ひっっっっっっぅ!」
「おっ・・・・!」
後ろに気配を感じたので、と俺と彰はくるうりと後ろを振り向いた。
そこには店長の姿。相変わらずの髭面と、存在感。まさしく、店長。
「て、ててて店長・・・・・!」
「お、おおお叔父さん・・・!」

よりによって見つかったのが店長。しかも店の前で。もはや弁解の余地はない。
「あああああ、あの、こここれは・・・」
「おおおおお叔父さん、これはその・・」
うろたえまくる、俺達二人。
店長は相変わらず無言。得体の知れない圧迫感を覚える。

「叔父さん、実は冬弥が氷レモンを作ろおって言い出してそれで・・」
正直に話す彰。世渡りヘタそうで実はうまい奴だったのか。ちっ。

「い、いや彰が氷レモンてなあに?なんて言い出してそれであの・・・」
「あ、冬弥ずるい。最初に氷レモン作ろうって言ったのは自分じゃないか」
「俺が雪を見てそこはかとない憐れみを感じていた時に、お前が何してんのっ
て突っ込んできたからじゃないか」
「そこはかとない憐れみなんて、そんなこと言ってなかったじゃない。だいた
い冬弥が雪を見ると氷レモンを思い出すなんて変なこと言い出したから」
「俺がいつ何時何分何秒に、ンなこと言ったんだ?」
「冬弥、小学生みたいなこと言うのやめてよ。ひょっとして冬弥、雪見てエッ
チなことでも考えてたんじゃないの? そういえば僕が冬弥に声かけた時、美
咲先輩の名前言ってたでしょう。何考えてたの?」

鋭いやつめ。ちっ。普段は鈍いくせに、こういう時になると妙に冴えやがる。

「美咲先輩にエッチな想像するなんて、美咲先輩が汚れちゃうよ。これから冬弥のことを『イヤーンエッチ之介』て呼ぶからね」
「なんじゃそれは。お前、美咲さんだって生身の女だぞ。エッチなことも考え
るし、欲求もあるよ。何が汚れるだ。自分の内だけで人を偶像視するな」
「美咲先輩はそんな人じゃないよ。それを冬弥がエッチな想像するから。自分
だって人を偶像視してるじゃないか」
「奇麗事だけで物を見るやつよりはマシだよ」
「なんだと!」
「なにお!」

俺達が一戦触発となるその時。

「ん・・・・・?」
「叔父さ・・ん?」

俺達四つの瞳が集中した一点。そこには店長が俺達が氷レモンを作った隣に、
タチションベンをする店長の姿。

「・・・なにやってんすか?」
「叔父さん・・・・・・・?」
「・・・・・・」
「え? いやあお前たちが氷レモンなんて懐かしいことやっとるもんで、私も
久しぶりにやって見たくなったんだよ。氷レモンかぁ、懐かしいなぁ。私も
昔田舎で兄や弟達と作って遊んだもんだよ・・・・って?」
「・・・・・・」(コクン)
  
無口だが確かにそう言った店長のセリフ。妙に説得力がある。
そして俺達は別の一点に集中する。
・・・・・・・・。感想。店長の『息子』も存在感がある。ありすぎ。
まあよい。男は長さではない。

「・・・・なんかやる気なくなっちゃったね、冬弥」
「・・・・だな。俺達何でケンカ始めたんだろ」
「なんか忘れちゃった」
「んだな」
「まあいいっかぁ」
「もういいっかぁ」
俺達はケンカする理由も忘れ去り、ただただ奇妙な笑いに取り付かれた。

「店長、それじゃあそろそろ鍵開けますよ。早く閉まってくださいよ、その立
派なモノを。人が来たらなんて思われるか」
「冬弥だって人のこと言えないじゃない」
「そうかあ?」
「そうだよ。じゃあ、叔父さ・・・・あ・・・・」
「どした、彰?・・・・え・・・」
「・・・・・・・」

三度凝視する六つの瞳。
その集中する一点、店長の氷レモン。いや、『氷イチゴ』。
「お・・・叔父さん・・・これって」
「・・・・てんちょう・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
みるみる青ざめてゆく、店長。やはり無言のまま。
数十分後、けたたましいサイレンが鳴り響く中、店長は救急車で運ばれて去っていった。

翌日、店長は入院した。(完)                        



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(能書き)
はい、お久しぶり・・・・というより始めましてと言った方がいいですね。
マイクDと申します。以前LeafさんのHPによく出入りして、この即興小説コー
ナーに投稿していた者で御座います。といっても、連載もの一作ですが(しかも未完。あううっ)。どうぞよろしく。
なんやかんやと私の周辺が騒がしくなり、投稿はおろか、インターネットをや
めて早半年近く達ちました。このことをここに書くと、MO10枚分ぐらいの分量
になるため止めておきますが、誓って言えば、決して、投稿に飽きたというわ
けではありませんです。ネットを止めてからも、ここのことは心残りになって
いましたし、せっかく小説を書く楽しみを知ったのだからそれを続けていきた
いと思う気持ちもありました。で、最近になってようやく落ち着きを取り戻し
はじめ、再び投稿でも再開しましょかねぇ、と柏木梓風に思い至り、今回この
小説を投稿してみました。今後ともコンスタントに・・・とは言えませんが、
ぼちぼちマイペースにいきたいと思います。どーぞ新入りとして、かわいがっ
てくださいまし。でもパラシュート部隊とネジリンボウは勘弁してください。
根が小心者でお坊ちゃまであり、お坊ちゃまだけに痛いのや恐いのは苦手なん
です。ヤなんです、私。血とか争いとか荒れ狂うバイオレンスとか。痛くしな
いでね。ちなみに私の部屋に置いてある、初音ちゃん人形、ATB、KORG D8、
某臭作、サッカーボール、某ウエイトレスさんのファミレス18禁ゲームの続編、
ライカVf、スノーボード、サ○ラ大戦2、伊集院くん人形は、投稿を止めた
こととはまったく関係ないので気にしないでください。男子たるもの細かいこ
とや過去のことにこだわっていては大事は成せない。
・・・・で、今回の話。今旬の「ホワイトアルバム」ネタのバカな小話なんで
すが、いかがだったでしょうか?・・・・ここのHPの品を落とすかもしれない
と自覚しとる作品です。W.A.自体かなりシリアスな物語だし、原作の品を
落としかねないお下劣話だと自覚してます。でもわかっちゃいるけど止められ
ねえんだよなあ。こういうネタ。
・・・いかん、このままでは私が下品でお下劣ネタ好きのゲス野郎と思われて
しまうではないか。いかん。ん、まさに遺憾に思う(減点)。
てな訳で、次回作はもっとまともな話を書いて、皆様の目前に出たいと思いま
す。それでわ。


                             マイクD 拝