「鍋」 ACT 3 投稿者:シャアのじんじろ毛


<あらすじ>
隆山の町で年末を過ごそうとやってきた柏木耕一は、従姉妹で鶴来屋グループの会長を務める千鶴から、
鶴来屋が木之八という男から買収の危機にさらされているという話を聞かされる。
そして木之八は千鶴たち四人姉妹をも己の毒牙にかけようと狙っていた。
話を聞き、憤りを感じる耕一。そして耕一たちは鶴来屋本館のロビーで、木之八と美食家の
唐山筑前とバッタリ出くわす。
そこで千鶴は唐山にいわれのない罵倒を受け、ただ立尽くすのみ。
それを隣で見ていた妹の梓は・・・・・・。                 
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「堪忍袋の緒は、切れるために、あるんだあああ!!!」ついにキレた梓。吠える。
「梓、落ち着きなさい!」そりゃ無理ってもんす、千鶴さん。
「な、何よこのホルスタイン娘は」恐れおののく唐山。手足をバタつかせる。
「放せ千鶴姉!こいつら全員ぶち殺してやる!」顔を真っ赤にし、吠える梓。その顔つきはまさに鬼。
制止する千鶴さんの手を振り解いた梓は、唐山の着物の襟筋をわしづかみにとり、どこで覚えたのか
柔道でいうところの逆十字絞めをかける。
まともに首にはいったのか、唐山は肌色から黄色、そして赤、最後に緑色と信号機のように顔色が変
化する。口はタコのように突き出し、天を仰ぐ。
「ごごがごげごごげごごぐごごがごげごあごぐんごげごうんごくうんげこ」 
地獄の底で、牛頭馬頭に首をシメられる鳥のような鳴き声を想像させる、唐山の叫び。悲痛な姿だが
見ていてけっこう面白い顔をする。
ああ長良川の鵜飼いってこんな感じで鵜が人に首をシメられるんだろうなあと
その光景をつい想像してしまうって、そういう問題ではない。
「やあすごいすごい」横で関心したように手をぱちぱちと叩いて、御ひねりまで投げるのは木之八。
助けたれよ。
「宅八郎を凶悪にしたようなツラしやがって。なにが鍋はフレキシブルにエレガントにコケティシュ
にだ。そんな柄か。
狐がせんずりこいたような顔をしてよくいいやがる」ものすごいことを言う。しかしコケティッシュ
というのは言ってなかったと思うのだが。
「人が黙って聞いてりゃ好き勝手なこと抜かしやがって。何がホルスタイン娘だ。乳がでかくて悪か
ったね。
あたしゃどうせ牛チチ娘だとか爆乳娘だとか脳みそが全部チチにいってるだとか爆乳少女ヒロポンち
ゃんだとかカジワラタケシのマンガのキャラだとか人気順位万年最下位だとか同人誌ではいつも悲惨
な目に会う役だとか実はレズだとか影で言われまくってるよ」
どさくさにまぎれて、個人的な恨みごとを言わないように。
「くそ、こら、死にたいか。死にたい?死にたいか。よしなら私が引導つけてあの世に送ってやる。
感謝しな。世間の皆様が“Not guilty”とかいっても私一人は“You guilty”と宣告してやる。よっ
てあんたは死刑。Do you understand?
 この際ついでに言わしてもらえばN○Cイン○ー○ャン○ルさっさとセン○メンタ○グラ○ィティ出し
やがれいつまでも出し惜しみしてんじゃねえぞ同人誌や関連グッズは鬼のような量出てやがんのに
ゲーム以外の副産物でいつまでも儲けやがって本編をださないでどうする
あもうすぐ発売されるかよかったでもこれでクソゲーだったらマジで同士募って騎馬隊率いて社屋に
夜襲かけるぞ。全てお前のせいだ。山○が潰れて株価が大幅下落したのも予想していなかった市民税
の請求書が急に来たのも作者が先週の競馬に負けてオケラになって家まで延々3時間もかけて徒歩で帰
ったのも今年のトヨタカップの試合をビデオで録画してたのに観ようと思ってテレビをつけるとニュ
ースが結果を先にばらすというオチになったのもお前のせいだ。楽しみにしてたんだぞこちとら。
この口が、この口が開、く、んかい。何、と、か、言う、て、み、い。言ってみそ?
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、死ね」 
上下左右斜めと首を絞めながら唐山を振り回す梓。こいつの方がヤクザっぽい。
多少意味不明な言葉を口走ってるようだが。
「・・・・・・・クエ」息もできない様子の唐山。あ、白目むいてる。
「やあすごいすごい」なぜか嬉しそうに手を叩く木之八。だから助けたれって。
 さすがにこのままぶち殺すというのはヤバイだろう。今のこいつならマジでやりかねない。
それに加えて梓の強力すぎる鬼パワー。このまま傍観していてはこのおっさんもイチコロ。
それはそれで面白いけど。あ、泡ふいてる。
「耕一さん、梓を止めて!」無茶を言う千鶴さん。下手に手を出せば俺が殺される。
しかしここは間に入って止めねば。俺は羽交い締めにしようと梓の後ろに回る。必殺・・・・
  ボインたーーっち。
  むにゅ。
  ん?
  むにゅむにゅ。
  ん?ん?
  むにゅむにゅむにゅ。
ん?ん?ん?
 俺の手が梓の胸を攻撃する。ここぞとばかりに揉みまくる。ああ、いい感触。
でかいチチだがとってもやわらかい。
こいつまた大きくなった?んーおそらくサイズ89?
「ん・ん・ん・ん・ん・・・・・・・・んきゃああああああああああーーーー!!!!!」 
絹を切り裂くような梓の悲鳴。
「こ・こ・こ・耕一の、どすけべえええええええええええええええーーーー!!!!!」
 攻撃の対象が唐山から俺に変わる。梓は俺の顔面に右・左とワンツーパンチを76回えぐり込むよう
に打ち、ぐるうりと体を180度に反転させ、最後にソバットで俺の後頭部にフィニッシュを決める。
床に崩れるかわいそうな俺。
「こ、耕一さん、なんてことを!! 見損ないました、ぷん!」そりゃないっす千鶴さん。
「いいなあ」心底うらやましそうに指をくわえる木之八。ほんとにいいか?
 俺の倒れた隣には、髪をくしゃくしゃにして同じく悶絶する唐山のボロギレのような姿が。
口をぱくりとおおびらきに開け、そこへビビアンがおしっこをかける。人間便器とはこのこと?
 しかしなんとか暴走する梓を止めることができたかのだから一応は結果オーライということでって
全然よくない。
頼むからもう少し手加減してくれと、俺は薄らぐ意識の中でつぶやいた。

  しばらくして目を覚ました俺の目に写った光景は、木之八に頭を下げ平謝りする千鶴さんの姿だった。
千鶴さんは大変恐縮している様子だが、当の加害者である梓は腕を組んでへへんとうそぶいている。
罪悪感などこれっぽっちも感じていない様子。鬼。
「本当に、本当に申し訳ございませんでした」
「申し訳ないじゃないですよ、柏木さん。いったいどうしてもらえるんですか、この始末」ここぞと
ばかりに位上高な態度の木之八。自分は面白がって見てただけのくせによくいう。
「唐山先生はウチの大切なお客様。わざわざ東京からお招きして、楽しんでいただこうとあれこれ用
意していたのに」
ならどうして自分のところのホテルを使わん。前にも言ったが。
「それがこの始末。これが老舗たる鶴来屋さんの流儀ですか?」
「ま、まことに・・・・・・・ドウモ・・・・・」千鶴さん。語尾は蚊の鳴くような声。
「こんな接客態度が悪い旅館じゃあ、唐山先生がお気に召すような料理もロクに作れない訳だ。
さっさと旅館ののれんをたたんだらどうです?」余計なお世話だ。
これを聞いて、「ちょっと待った。先にケンカ売ってきたのははそっちだよ」 梓がずいと前に差し出
てきた。
為か木之八はたじろぐ。さすがにその態度はびびっている。
「梓、お黙りなさい」止める千鶴さん。しかし、
「千鶴姉は黙ってて。たしかに暴力をふるったのはこっちだよ。それは謝る。
でもさ、いくらお客とはいえ、限度ってもんがあるでしょ?」
「まずいものをまずいと言って何が悪いのかね?」梓の胸をじいいっと凝視しながら木之八は言う。
後ずさり、びびりながら。
「それが解せないのよ。まずいんだったらまずいとそう感じてくれてたらそれでいい。
でもそれをネタに千鶴姉をネチネチと責めるのは止めて欲しいのよ、スケベ面してさ。
文句があるなら、あの美食家のセンセイをボコにした私に言いなよ。
あんたがうちの旅館やナワバリを欲しくて難癖つけようってのは分かってんだから、そういう姑息な
やり方で攻めるなんてやめてもらえない?
フェアじゃないのよ、あんたのやり方。やるならもっと正々堂々とかかってきなよ」梓。
やっぱりいやがらせが目的だったか。
木之八は何を根拠にと言わんばかりに一笑に附す態度。しかしおそらく図星。顔つきでわかる。
大体そうでもなければ、普通はあんな大声で「まずい」と騒がないだろう。
ちっ、梓の言うように姑息だ、やり方が。
続けて言う梓。
「大体私、食べ物に対してへ理屈こねる奴が何よりも大嫌いなんだよ。
作った人の苦労も知らないで、ただ食べるだけに執着して、
「この味はまろやかでこくがありうんたらかんたら・・・・・」黙って食えっての。
美味いものは美味い、不味いものは不味い、ただそれだけでいいじゃん。
そりゃ食べ物に対してこだわりを持つのは大切だと思う。人間生きていく上で「食事」という行為は
絶対必要なものだから。
けど、評論家ぶった奴が偉そうな顔して、自分は文化人でございと訳の分かんない小理屈述べて位上
高に振る舞うのは犯罪的だよ。
何様のつもりでいるのさ。気に入らなかっら食わなきゃいい、ただそれだけのことなのに、知った風
な口を聞く。
自分が偉い人間だとでも思ってるの?物を作りだすこともしない人間に、そんな事言う資格はないよ」
単純で幼稚。しかし梓らしいストレートな意見だ。俺も同感。

「それに・・・・・許せないんだよ・・・・」何が?
「あの鍋を侮辱するのだけは・・・・・・。死んだ父さんが残したものだから・・・・」
初耳だ、そんな話は。
「父さんと母さんが生きてたころよく作ってくれたんだ、あの鍋を。
父さんと母さん、まだ中学生の千鶴姉、それに小学生の私や楓、初音、家族6人で鍋をつつこうと
なった時、父さんがわざわざ自分の足で魚市場へ行って材料を買ってきて作ってくれた・・・・・」
知らなかった。そんな事実があの鍋に隠されてたなんて。たかが鍋一つのことで梓があそこまで激昂
したのもそれで合点がいく。
梓に限らず、千鶴さんも楓ちゃんも初音ちゃんも、あの鍋を死んだ父親、即ち俺の叔父だが、の面影
を投影していたに違いない。
それを他人にバカにされる。即ち自分たちの父親をバカされたと感じたのかもしれない。
鬼の力を制御できずに己の業と戦い抜き、そして敗れ死んだ父親。その父親が残した料理、それは形
見にも等しい。
それを出来損ないと言われて、梓の心はどれほどの痛みを感じたのだろう。梓だけではなく千鶴さん
も、楓ちゃんも、初音ちゃんも。
それを思うと、俺の心は重く重く突き刺さる、何かを感じずにはいられない
隣にいた千鶴さんも目をつぶり、じっと何かをかみ締めるようにうつむいている。
木之八もさすがに気まずくなったのか、あっちの方向をむいて咳込んだりしている。
そんな中、一人吠える奴がいた。唐山だ。こいつ生きてたのか。もう起きてやがる。ちっ。

「さっきからだまってきいてきてたらなーに、あーたのその態度?へ理屈?小理屈?犯罪的?
ウゥォッフォホホホホホホホホホ!ヨークそこまで名詞と形容詞を言えたものね、このホルスタイン娘。
このアタシにむかってそこまでほざいてけつかるのはあーたが初めてよ。
そこまで啖呵を切ったのなら当然覚悟は完了出来てるでしょうね。あーた、このアタシと勝負しない?」
ぎらりと目を輝かす唐山。
「勝負?」反復する梓。
「そうお鍋勝負。お鍋といっても別の意味の「おなべ」じゃないからね」わかっとるわい。
「ようするに、どっちの鍋が美味いか、勝負ってこと?」
「お察しがいいわね。そのとおりよ。題材は何でもOk。日時は切りのいいところで大晦日、
21:00スタート。でどう?」
「除夜の鐘をBGMに鍋をつつく・・か。あんた意外と風流じゃん。いいよ。で、場所は?」
「うちが提供しましょう!」
これはいい商売になると匂いを嗅ぎ付けたのか、このままでは影が薄いと危機感を感じたのか、
しゃしゃりでてきた木之八。
「あんたンところのホテルはダメ!信用できない!」確かに。何をされるか分かったものじゃない。
木之八は梓の勢いに押されたのか、おびえた犬のようにすごすごひっこむ。
「場所は私が決める。この町の中心地にある町営の公民館。
あそこは結構広いし、料理勝負にうってつけだと思うんだけど、これは役場の方に使用許可を取れば
OK。
審判は公平を規すため、温泉組合の職員さんにやってもらう。
材料もまた組合の仲介により、鶴来屋グループが老舗の名と誇りにかけて責任をもって管理、
調達する。文句は?」
「あるわけないじゃない。どーせこのアタシが勝つんだから。
けっこう好きなのよ、こういう包丁人味平みたいなシチュエーション」歳がバレバレの唐山の発言。
「よし、これで決まりね」
「梓、そんな勝手に話を進めて・・・・」千鶴さんが梓に言う。
「千鶴姉は黙ってて。ここでバクチに出なきゃ、いつまでもこいつら難癖をつけてくるよ。
逃げて逃げて逃げて逃げて、どこまでも逃げ続けているなんて私には耐えられない。
ここは無理と分かっていても一発勝負に出てこいつらの鼻をたたいてやらなきゃ、いつまでも負け犬
のままだよ」
梓の強気の言葉に千鶴さんも沈黙せざるをえない。
「じゃあいいね、私がこの勝負に勝ったら、二度と鶴来屋へのあこぎな営業妨害はやめるんだよ」
「ああわかった。その代わりこっちが勝ったら、ウチの言うことを何でも聞いてもらうよ。
何・で・も・ね」
意味ありげな木之八の不気味な笑顔。
今はそんなにつんけんしとるけど、そのうちわしのこと好きにさせたるからな的ナ態度。
いったい何処からそういう無意味な自信が湧いて出るのか。
「「ふふふ、ホルスタイン娘。そのチチと首を洗って大晦日までおびえて暮らしてるとイイわ」
自信満々な唐山のセリフ。
「それはこっちのセリフさ。逃げんじゃないよ!」どっこい負けない梓。
俺はただただ成り行きを見守るばかりで、これから始まることにわくわくするのかおろおろするのか、
自分でも戸惑うばかり。
我ながら情けないが。しかし俺もこういうノリは嫌いじゃない。
「師匠、俺はアンタを超えてみせる!!」梓。
「フン、ほざくな!このバカ弟子が!!」唐山。
言語障害を起こしたとしか思えない二人の会話。 その二人の背後には何やら巨大なオーラと炎が交互
に燃えあがるように俺には見えた。

 「えーーーーっ!それじゃあ梓お姉ちゃん、その美食家の偉い人と、
勝負することになったのーーーーーーーー!?」
仰天するのは、事の次第を千鶴さんから聞かされた初音ちゃん。
 「そだよ」耳を小指でほじくりながら初音ちゃんに返事をする梓。
 「ほんとに・・・・この娘は・・・・・・。勝手に話を進めて・・・・・」千鶴さん。
怒ってはいるようだが、どこかに微笑みを感じるのは気のせいか。
 「だーってしょうがないじゃん。あそこでケンカ買わなきゃ。女がすたるってもんよ」
 「 ・・・・・・・・・」先輩チックな楓ちゃんの発言。
 「え、勝つ見込みはあるのかって?だーいじょうぶ、何とかなるでしょう。
この私があんな海原○山のできそこないみたいな変態オヤジに負けるわけないじゃん!」
無責任ともとれる梓の発言。
 「ははは・・・・それで梓お姉ちゃん。どんなお鍋にするの?」初音ちゃん。
 「うーーーん。いろいろ考えてんだけどさあ、
やっぱあの浜鍋をもう一ひねりアレンジメントしたやつでいこうと思ってんだ」
 「あきれた・・・・あなたあんな大見得切っておいてまだ考えまとまってないの?」千鶴さん。
 「へへん。まあ、まかしといてよ。なんとかなるでしょうよ。ぼちぼちやってきゃいいの。
そんなもんアバウトに、色々試行錯誤繰り返して試していきゃ自然と出来上がるもん何だから」
アバウトすぎるのも問題だと思うのだが。
 
「つーわけで耕一、今日から付き添い役よろしく」ぽんと俺の肩を叩く梓。
 「へ?なんで俺?」
 「決まってんじゃん。あんたこの中で一番暇人なんだから」客に向かって言う言葉か、,それが。
 「んじゃあんた、このまま木之八に鶴来屋獲られてもいいっていうの?」うっ。
 「千鶴姉や楓、初音が、あの左腕に金のロレックス、右に健康磁気リングをつけて
趣味は接待のゴルフと麻雀で東南アジア買春ツアー年二回、旅費は会社の経費でいくらでも落せまん
がな的チンケなおっさんに、イヤラシイ舌でびちゃびちゃ体中アソコからココまで舐められまくって
もいいっていうの?」
それが一番いや。千鶴さんと初音ちゃんは耳を塞ぎ込み、やめてやめて聞かさないでと気色悪がる。
楓ちゃんは顔を赤らめて俺の後ろにぴとっと引っ付き、ティッシュを用意している。なぜ?
 「てな訳でサポートよろしく!」ちっ、しょーがねーな。

「それにしても梓、あの鍋にあんな思い出があるとは思わなかったよ」と俺。
 「へ、何の話?」怪訝そうな表情をする梓。
 「ほら、言ってたじゃんか。あの鍋は叔父さんの思い出の鍋だって・・・」
 「ああ、あれ。嘘」
 「へ?」
 「嘘」
 「ちょっと待てよ、おい」
 「どさくさにまぎれて、その場で即興で作ったホラ話」
 「梓さーん?」
 「そんな臭い話あるわけないじゃん今時。下手クソな小説のネタにしか使われないよ」悪かったな。
「そ、それじゃ・・・・」
 「いやーあん時はその場を盛り上げようと思って無理矢理話をデッチアゲたんだけどさー。
結構うまいでしょ?」
 「え?そうだったの?」ボケる千鶴さん。今まで気付かったんかい。
 「大体うちの父さんに料理なんか作れるわけないじゃん。スパゲッティ作らしゃどこかのメイドロボ
みたいにセンベイ作っちまうし、、ヤキソバ作らしゃセンベイ作るし、トースト作らしゃセンベイ作る
し」センベイばっかしかい。
 「すっげー味覚オンチの上に悪食でさ。
千鶴姉の味オンチは、きっと死んだ父さんの遺伝だね、ははは」
 「梓!」もう、怒るわよと言いたげな千鶴さん。
 「じゃあ、なんであんな勝負受けたんだ?
鍋をバカされたのがくやしいっていうのじゃなかったら」俺。 
「そりゃあ鶴来屋存立の危機だからよ。いずれあいつらをなんとかギャフンと言わせてやろうかと
機会を伺ってたんだけどね・・・・。
今回の騒ぎでちょうどいい機会が来たなーっと思ってさ、話に乗ってやったって訳」
ちょっと待てや、コラ。
 「それにね、私あの手のオヤジ、チョーむかつくのよ。ねとねと粘着型の、典型的団塊の世代って奴?
何考えてんだか。
もう近くによるだけであっち行けシッシ、臭いから寄るなて感じー。もうアマゾンの奥地で永遠に修行
してればって思ってたりして」
コギャル言葉を使うな。まったく似合わん。
  開いた口がふさがらない。こんな狼少女のホラ話にほろっとした俺が大バカだった。
 「とにかく私は・・・・」私は?
 「私は怒りのぶつけどころが欲しいだけ!!!!!!」
一世を風靡した某OVAのヒロインのような梓のセリフ。同じ鬼娘同士、
シンクロし合うところがあるのか。
  俺の耳に聞こえてくるBGMはRage against the machineの“Bomb track”。
妙にこの状況にハマッている。イヤすぎるほどに。
 
俺はただただこの身の不幸を呪うばかり。なんでこんなことに巻き込まれたんだ。
 やっぱりこの町に来るとろくなことがない。何、ACT 1と言ってたことが違う?却下だ却下。 
夏の時は千鶴さんに命を狙われ、今また梓によって訳の分からん鍋勝負に付き合わされる。 
こんなことなら東京の下宿で一人寂しく白菜鍋をつついている方がマシだった。
助けて欲しい。 誰か助けて。これは夢だ、夢に違いない。そうだこれは夢なんだ。
夢から覚めるといつもお馴染みのBad endingのテーマが流れ、選択肢が増えているに違いない。
そうだ、そうだ。そうなんだ。きっとそうだ。そうなんだってば。
 でも、これは、現実。悲しいことに、現実。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ACT 4に続く

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はいこんにちは、シャアのじんじろ毛です。ACT 3、以外に早くアップしたのでここに
掲載させていただきます。
前回のACT 2を後で読んで見て気付いたのですが・・・・・・誤字脱字多すぎ。カッコ悪うう(泣)
前の反省も踏まえて、今回は4回5回と見直した上で投稿したのですが(当たり前?)、
さて・・・・・・。

今回の話は梓の一人舞台と化してしまいました。
確かに僕は「痕」のなかで一番のお気に入りといえば梓なのですが、
ここまで露骨になるとは思わなかった・・・・
もっと他の4姉妹を均等に活躍させるはずだったのに。反省。
まあ今回は話の展開上、梓が目立たざるを得なかったという理由もありますが。
次回はもう少しキャラの配分に気をつけて、筆を進めていきます。

感想&レスレスレス・・・・

久々野 彰さん>
海原さん的人の件ですが、お気になさらないでください。それは誤解です。
確かにACT 1を書きはじめた頃は、敵役として海原さんと
チャンピオンの料理漫画のゴーマンな主人公を登場させようと考えていたのですが、
話の展開に無理が生じてしまい、途中あえなく頓挫・・・・・。
そこで苦肉の策(?)としてあのようなオリジナルキャラを登場させたのですが・・・・
あんまり変わってないです(泣)
僕が前回のレスで言ったことで、そんなに深刻にとらえないでくださいね。
どんどん突っ込んでください。

興味を持って読んでいると言われ、大変光栄です。
大人しくしてるなどとおっしゃられず、これからもお引き回しの程をよろしくお願いいたします
(でも優しくしてね )


西山英志さん
>申し訳ございません。楓ちゃん今回もあんまり活躍はありませんでした。
多分他の楓ちゃんファンの方々、僕に対して殺意を抱いているでしょうね。
あの楓ちゃんに、あんな扱いをしてるのは恐らく僕一人・・・・・?あ、殺気。
もし怒っておられなければ、また読んでやってください。

「あ〜る」ネタでのマルチ小説、ぜひ書いてください。期待してます。

アルルさん>
「恋するセーラー服娘 千鶴ちゃん」面白すぎます。
ぼくもああいう風な作品書きたいです。
ぜひ続きを。

沢村奈唯美さん>
「登校風景」何気ないワンシーンをネタに書いた話。すごく僕自身、為になりました。
落ちも笑っちゃいました。。
あと関係ない話ですが、「初音のないしょ!」に沢村さんの本が載ってましたね。
おめでとうございます。
冬コミの原稿がんばってくださいね。

健やかさん>
面白いと言っていただき、本当に有難うございます。なによりもうれしい言葉です。
またよろしければ読んでください。がんばります(めいわく?)

パルティアさん>
「まだ癒えぬ痕」読んで背筋に冷たいものを感じました。耕一ならずとも。
これからの展開、楽しみにしています。

鈴木Rose静さん>
感想有難うございます。「院網グループ」当然そのまま読んでください(笑)そ
のつもりで銘々しました。
ちなみに「じんじろ毛」とはアソコの毛・・・・つまりシャアのお毛毛だから・・・・金髪?(←下品)

「ワルチ」あの発想の転換に驚かされました。脱帽。

Dyeさん>禁じ手の件のご指摘有難うございます。安堵いたしました。
これからは遠慮なく使わせていただきます。て、もう遅いか。
今回は話の展開上、梓の独断場となりました。確かに僕は梓ファンなのですが、
主観入りすぎも問題ですね。
でもDyeさんに生き生きしてると言われて、書いたかいがありました。本当にありがとうございました。

「天使流転」頑張ってください。

>Runeさん
「起動武闘伝L」 ストーリー、展開もさることながら、その文章力に圧倒されてしまいます。
シリーズ、楽しみに読んでます。


気がつけば、凄い量になった。今回はこれまで。感想かけなかったみなさん、ごめんなさい。
ご勘弁の程を。


ではまた、ACT 4でお会いいたしましょう。アディオス。