千鶴さん。 こうやって心の中で話し掛ける資格は、僕にはもうないのかもしれない。 あなたがいなくなって、もうどれほどの時間が流れたのか、わからない。考えないようにしているからだ。 高校のとき、先輩が教えてくれた。 死んだ人の歳を数えては、いけないのだと(耳元で囁いてくれた)。 体を離れた魂が、安らかであるように、現世にいるものの未練で、その魂を引きとめてはいけないのだと。 千鶴さん。 だから、僕はあなたのいなくなった日を覚えていない。 ただ・・・ あなたがいないという事実だけを、胸に刻んで。 僕には、何もできないから・・・ せめて、これ以上あなたを苦しめないように。 僕は毎日一つのことだけを考えている。 たった一人のことを。 千鶴さん。 人間は喜びがなくても生きていける。たとえそれを見て、他の人が不幸だと思ったとしても。 たった一つの望みさえあれば・・・ 千鶴さんが僕の望みを知ったらどうするのだろうか? 笑うのだろうか? 怒るのだろうか? それとも・・・泣くのだろうか・・・ 誰よりも、笑顔の似合っていた人。 誰よりも、幸せでいてほしかった人。 でも、僕の知っているあなたの最後の顔は、泣き顔だった・・・ 変わったと言われる。 以前とは、別人のようだと。 あなたがいなくなってから吸うようになった、煙草のせいだろうか。 それとも、無頓着になった服装のせいだろうか。 あなたが選んでくれた服を着なくなり、髪を切ったせいだろうか・・・ 煙草は、楓ちゃんにも止められた。 でも、僕は止めない。 体に合わない人もいるが、僕にはそうではないらしい。 「力」を得るために常用している、薬のようなものだ。 「力」を得るために・・・ いつか、あいつに会うときのために。 そして、今日、やっと会えた。 柳川 拓也・・・ 僕が、たった一人想いつづけている人・・・