まどろみ 第4話 投稿者:司堂 馨


チリチリチリチリチリチリチリチリチリ・・・・・・

思い出そうとしなくても、
あの時の感覚は、よみがえってくる。
長瀬祐介という青年の放った『電波』という力だ。
何故、こうも思い出してしまうのだろう。

それは・・・『恐怖』

馬鹿な・・・。俺はこの世界で最強の生き物『鬼』のはず。
恐怖する要素など・・・。

チリチリチリチリチリチリチリチリチリ・・・・・・

また。

────コワサレル

俺の中の声が呟く。
壊される・・・精神を。
警告?それは・・・

────キケンナチカラ

電波という力。
あれは、何だ?
懸命に防御したにもかかわらず、俺の脳に直に響いてきた。
まるで脳を破壊せんと言わんばかりの勢いで。


気がつくと、朝になっていた。
昨日の傷も癒えたようだ。
鬼・・・か。
こんなところにいるのも不思議だが、
もう一度出会ったときは・・・・

俺はベッドから降りると、支度をした。
今日から正式に社員になる、か。
昨日の鬼が起こした事件についても
何か情報が入ってくるに違いない。
もう一度警察に所属して良かった。

だが、最大の欠点、というべきか・・・。
それは、派出所ゆえに情報の入ってくる速度が遅い、という事だ。
奴が何か特徴的な痕跡を残してくれるとありがたいが・・・。

体が疼く。
血が、蠢く。
まるで禁断症状のように、俺の身体は狩りを欲していた。
昨日、鬼に会ってからだ。
早く八つ裂きにしないと気が済まない。
俺は身体を両腕でぐっと押さえつけて
自分の身体を落ち着かせた。


勤務先──派出所
その日は秋の涼しさと、肌寒さを感じた。
高校の近くという事もあって、夕方は生徒たちの姿を見掛ける事が多い。
雑務をこなしながら、ふと外を見かけたときだった。
「!」
そこには、あの長瀬祐介が歩いていた。
こちらには気付いていないらしく、となりに歩いている女と話している。
(ここの高校に通っているとは・・・)
偶然にも祐介の通っている高校の近く、か。
これでアイツと話しやすくなった。
「どうした?柳川」
上司の・・・名前は知らないが、ここに前からいる人だ。
「あ、いえ。なんでもありません」
明日ぐらいに声をかけてみるか・・・。
『電波』について訊いてみた方がいいな・・・。
俺は再び疼き出したからだを押さえつけた・・・。


               <第5話につづく>