チリチリチリチリチリチリチリチリチリ・・・・・・ 思い出そうとしなくても、 あの時の感覚は、よみがえってくる。 長瀬祐介という青年の放った『電波』という力だ。 何故、こうも思い出してしまうのだろう。 それは・・・『恐怖』 馬鹿な・・・。俺はこの世界で最強の生き物『鬼』のはず。 恐怖する要素など・・・。 チリチリチリチリチリチリチリチリチリ・・・・・・ また。 ────コワサレル 俺の中の声が呟く。 壊される・・・精神を。 警告?それは・・・ ────キケンナチカラ 電波という力。 あれは、何だ? 懸命に防御したにもかかわらず、俺の脳に直に響いてきた。 まるで脳を破壊せんと言わんばかりの勢いで。 気がつくと、朝になっていた。 昨日の傷も癒えたようだ。 鬼・・・か。 こんなところにいるのも不思議だが、 もう一度出会ったときは・・・・ 俺はベッドから降りると、支度をした。 今日から正式に社員になる、か。 昨日の鬼が起こした事件についても 何か情報が入ってくるに違いない。 もう一度警察に所属して良かった。 だが、最大の欠点、というべきか・・・。 それは、派出所ゆえに情報の入ってくる速度が遅い、という事だ。 奴が何か特徴的な痕跡を残してくれるとありがたいが・・・。 体が疼く。 血が、蠢く。 まるで禁断症状のように、俺の身体は狩りを欲していた。 昨日、鬼に会ってからだ。 早く八つ裂きにしないと気が済まない。 俺は身体を両腕でぐっと押さえつけて 自分の身体を落ち着かせた。 勤務先──派出所 その日は秋の涼しさと、肌寒さを感じた。 高校の近くという事もあって、夕方は生徒たちの姿を見掛ける事が多い。 雑務をこなしながら、ふと外を見かけたときだった。 「!」 そこには、あの長瀬祐介が歩いていた。 こちらには気付いていないらしく、となりに歩いている女と話している。 (ここの高校に通っているとは・・・) 偶然にも祐介の通っている高校の近く、か。 これでアイツと話しやすくなった。 「どうした?柳川」 上司の・・・名前は知らないが、ここに前からいる人だ。 「あ、いえ。なんでもありません」 明日ぐらいに声をかけてみるか・・・。 『電波』について訊いてみた方がいいな・・・。 俺は再び疼き出したからだを押さえつけた・・・。 <第5話につづく>