『まどろみ』 第3話 投稿者:司堂 馨


「ぐるるる・・・・」

闇から出て来たのは・・・鬼だった。

「ぐうおおおお・・!!!」
鬼はこちらに大きな腕を振りかざして襲って来た。
ブシュウゥ!!!!!
風が巻き起こる。
俺は後ろに飛びのいたが、肩の辺りが血で滲んでいく。
どうやら風圧で少々斬れてしまったらしい。
「・・・こんな所に鬼がいるとは・・・驚いたな」
続けてこちらに向かってくる。
鬼の力を解放していく。
ドクン、ドクン・・・
俺のからだが鬼の体に変貌しようとした、その時だった。

「危ないッ!!!」
そんな声が聞こえたかと思うと、突然脳に電気のようなものが走った。
「ぐっ・・・」
チリチリチリチリチリチリチリチリチリチリ・・・・・
何だ!?この・・・電気のようなものはッ・・・・
それと同時に鬼の方もうめき出した。
みしみしと、鬼のしたの地面がめり込んでいく。
「ぐう・・うがああああああああああああああああああ!!」
どうやら、苦しみ方からしてあちらの方がきついようだ。
という事は・・・これは、余波のようなものか・・?
さっきの声がした方を向く。
一人の、高校生くらいの青年が立っていた。
その青年の周りでは、紫電がバチバチと音を立てていた。

「早く・・・逃げ・・て・・・下さいッ・・・・!!」
青年は絞り出すような声で呟いた。
「・・・な、何だッ・・・これ・・・は・・・!?」
俺は頭を抱えながら訊く。
苦しい。頭が割れるように痛い。
身体中の血液が、激しく脈動する。
「・・・・逃げるんだッ・・・・!!」
もう一度、そう言った。
「ぐるうるるるうるるるるるるるるるるるるるるるうううるる
ああああああああああああああああああああああああああ!」
鬼は、叫び声を上げて動き出した。
「・・・・そんな、馬鹿なッ!!?」
青年が声を上げる。
俺は、いつのまにか鬼へ走り出していた。
自分でも、何故向かっていったのか解らない。
まさか、人間を助けようとして・・・?
違う。
違う。
俺は、戦いに飢えていただけだ。
そうだ。

「おおおお!!!!!」
腕だけ鬼化させる。
めきッ・・めきッと音を立てながら腕が変化していく。
鋭いつめが姿を現す。
「!」
青年と、鬼は驚いた顔でこちらを見た。
俺の腕は、鬼に向かって真っ直ぐに伸びた。

ブシュッ!
血が吹き出る。
鬼は咄嗟に後ろに仰け反ったのだ。
そのせいで致命傷は与えられなかった。
俺の爪はやつの胸の辺りを引っかいただけに過ぎなかった。

「・・・キサ・・・・マモ・・・エルクゥ・・・・!?」
鬼が、人間のような発音をする。
「ふん、どこのどいつか知らんが俺を狙うとはいい度胸だ」
俺もまさかこんな所で鬼を見つけるとは思わなかった。
「キサマノクビ・・・カナラズ・・・ウバウ・・・!!!!」
鬼はそう言い捨てると、闇に飛び去った。
俺の口から微かな笑みがこぼれた。
喜び・・・?
くくっ・・・そうだ。鬼の散らす命の炎・・・見てやろう・・。

「あの・・・」
そんな声が後ろからかかる。
俺は、ふと後ろを振り返った。
「だいじょうぶですか・・・?」
さっきの青年だ。
「・・・俺は何ともない。・・・・それより・・・貴様、一体何者だ・・・?」
いきなりそんなことを聞いたせいか、青年は少しびっくりしたような
顔をしていた。
「・・・僕は、長瀬祐介といいます。この近くの高校生です」
「そんなことを聞いているんじゃない。さっきの電気のようなものは何だ?」
長瀬という青年は、少しためらった後、こう言った。
「・・・・・・あれは、『電波』です」
「電波?」
電波・・・?あの、ラジオとかのか?
「・・・それより、そちらの名前は・・・?」
「おれは・・・柳川。柳川裕也、という」
俺は、渋々答えた。
「腕から血が出ていますよ。病院へいった方がいいんじゃないですか?」
「ああ・・・いや、いい。これくらい、すぐ治る」
鬼の治癒能力は半端ではない。
これくらいの傷、2,3日で完治する。
「そうですか・・・?いった方がいいと思いますけど・・・」
「それより、さっきの電波とやらは何だ」
俺はもう一度訊いた。
「え、あの・・・あ!すいません!ちょっと、ゼミがあるんで!」
突然、長瀬はそんな事を言い出すと走っていってしまった。
俺は少々呆気に取られて、立ち尽くした。
ポタポタと、血が地面に落ちては染み込んでいった。

だが、あの長瀬と言う奴・・・
普通の人間とは違う感じがした。
あの、変わった感じをたどっていけばまたあえるだろう。
おれは、家に帰る事にした。

あの、鬼とも、また会うだろう。
今度こそ仕留めてやる・・・!

               <第4話へつづく>

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司堂です。かなりの間があきました。
こんな僕のSS(?)を読んで下さっている方がいて下さるそうで
感謝!です。
dyeさん、べつに盗作してる訳じゃないんだから少々だぶっても
いいじゃないですか。気にしてませんよう。
次のアップはいつになるだろう・・・
堕説の方も書かないとなぁ・・・
誰か、励ましのメール下さる人います?
あと、週刊フロム司堂欲しいひといるかなぁ?
もし、興味が湧いたらメール下さい。
配布します。