『まどろみ』 第2話 投稿者:司堂 馨


5分後には、もう次の駅に着いていた。
あれくらいでは微塵の疲れもない。
俺は走ってきた道を振り返った。
「・・・」
別に何という事はないが、何か心に残るものがあった。
「・・・・・くだらん」
自分にそう言い捨てると、駅から離れた・・・。

ゴオオーーーーー
ヴオォォオオーーーーーー・・・・・
バァン、ブァン・・・

車の音が、やけに耳につく。
あっちではこんなに車は通っていないものな・・・。
まだ、出ていくらも経たないというのに、ふとそんな事を思った。

俺は新しいマンションの位置を確認すると、
適当にタクシーを拾った。
そんなに遠くはなく、すぐに着くという。

運転手のいったとおり、2,3分で着く事ができた。
運び込むように言っておいたので、荷物は中にあった。
適当に荷物をほどき、片付ける。
普通の人なら一日かかるものを2時間足らずでやった。
「ふう・・・・」
たいして大きい荷物がある訳でもない。
さっぱりした部屋だ。

昼から、一応署の方に顔を出すと、
配属先などの書類を受け取った。
どうやら、近辺にある、高校の近くの派出所に配属する事になったらしい。

やがて、夜になった・・・。
おれは、適当な所で食事を済ませると、
夜風に誘われて、公園へと出た。

所々にある、外灯はその近辺だけを照らし、
虫達を集めていた。

    どくん

と、その時だった。
何か、懐かしいような不思議な高揚感が込み上げた。
おれは、外灯の光の届かない、一個所の闇を見た。

なにか・・・いる・・・。

「ぐるるるるるううるるうるう・・・・・・・」
低い、声が聞こえた。
懐かしいような、獣の声だ。
そう、鬼の声だ。

俺の口元にはいつのまにか笑みが浮かんでいた・・・。

          <第3話へつづく>