『まどろみ』 第1話 投稿者:司堂 馨


あの闘いから、数ヶ月がすぎた。
俺は、柏木耕一に水面に叩き付けられ、
生死をさまよった。

だが・・・幸運か、それとも不運か俺は生き延びた。
心の中で死を願っていた俺にとって、
あまり気持ちのいい事ではなかった。

胸の傷は癒え、普通に生活してもばれる事はあるまい。
俺はまた、職場へと復帰した。
長瀬は何も詮索しなかったが、
もしかしたら何か感づいているかもしれない。
だが、いっこうに何か問われるような事はなかった。

柏木耕一・・・か。
いまさら仕返しする気もおきんな・・・。
俺はそんなことで、やつと関わる気もなかった。
むしろ、もうこの地を離れていこうと決意していた。
幸いあちらはこっちの事に気付いていないらしい。
ふふ、何しろ、まだあれから
一度も狩りをしていないのだからな・・・。
俺の中の鬼は、あれ以来出て来ない。
だが俺にはわかる。
まだ俺の中でじっくりと力を蓄えているのを。
だが、ある意味、柏木耕一のおかげでこのチカラを暴走させず
に済んでいるのかも知れんな・・・。
そんな事も考えていた。
すでに出て行く準備は出来ている。
新たな狩猟場を見つけるための、だ。
貴之のいない今、ここに用はない。
警察からさらってくる事も可能だが、
貴之を傷つける事になっては仕方がない。
時々会いに行ってやればいい。
いや、いつか無事取り戻す。
もし神という者がいるのなら、
それまで・・・どうか貴之を守っていて欲しいものだな。

一週間後、俺は退職願を届け、電車へと乗った。
借りてあるマンションには、もう荷物が届いてあるはずだ。

俺は電車に揺られながら、流れる景色を眺めていた。
緑の山々が左から右へと遠ざかってゆく。
──美しいな・・・。
こんな気持ちになったのは久しぶりだ・・・。
思えば貴之と出会い、吉川を殺した後、
俺の心に安らぎはなかった。
鬼が、エルクゥの本能が俺を支配していた。

あちらに着いたら向こうの派出所に所属する事になっている。
もう入社手続きは済んであるから、
明日からにでも顔を出せばよいだろう。

俺は席を立つと、トイレへ向かった。
よく揺れるな・・・。
そっとバランスを崩さないように歩いた。
トイレに着いて、鏡に向かったときだった。

ドオオオオオオン!!!!!

ものすごい爆発音と共に、電車が急停車した。
なんだ!?
俺は急いで車内へと戻った。

電車内は、恐怖と不安に包まれていた。
騒ぐ大人ども。泣き叫ぶ子供。
俺は鞄を持つと、爆発音のあった方へ向かった。

どうせ誰かのいたずらであろう。
線路上に爆発物でも置いてあったらしい。
ちょうど、前の運転席が破壊されていた。
──つまらないことをする・・・。
そう思った。
途端に、俺の中で『なにか』がズキリと痛んだ。
く・・・。
何だ・・・?この感覚は・・・

俺は破壊された窓から外を覗いた。
田園地帯だ。
「ちっ・・・・・」
俺は舌打ちすると、外へ飛び出した。
運転手はいなかった。
部屋に運ばれたのであろう。
誰かが何か叫んだような気がしたが、
俺は気にせず外へ出た。

エルクゥのチカラを使えばすぐに次の駅には着くだろう。
俺は力を解放しながら、走り出した。
顔に吹き付ける風が、妙に心地よかった。

               <第2話につづく>

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まだ投稿歴の浅い司堂です。
堕説・雫と並行して出す事になるか、
はたまたこれ一本でいくかは謎です。
LF97にはまってるんで・・・ちょっと次はいつになるかわかりません。
期待しないで待ってて下さい。
感想など、またこれから下さると嬉しいです。
あと、修正版をよく書き込むと思います。それでわ。


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大変、申し訳ありません・・・・ 投稿者:dye  投稿日:11月30日(日)20時58分29秒

個人レスになりますが。

>SGYさん
シンバさんに続いて、またしても・・・・。
実は、久々野さんの『A Musial Box』の感想レスでも「Musial」
と間違ってます。(正しくは「Musical」です。他にもミスを・・・・)
ええぃ、この右手め!(ビシッ)

本当に失礼しました。  m(_ _)m


P.S  休筆宣言:『初音!!』の影響スゴイですね。(私も)
        でも色んな設定が明らかになっいるので、プラスになってると思います。
        取材休載って所ですか。