堕説・痕〜心の痕(あと)〜 投稿者:司堂 馨


石を投げる。
ぽちゃん、という音と共に、水面には波紋が広がる。
波が、水を乱していった。
まるで・・・私の心みたい・・・。
水門に腰掛けたまま、ぼうっとしている。
ここで・・・耕一さんを・・・・殺した・・・。
ここで・・・愛する人を・・・・殺した・・・。
無機質な私の声が頭の中に渦巻いていた。
私は、あれからひどい虚無感に苛まれながら毎日を過ごしていた。
「・・・・こんな所で待ってたって・・・耕一さんは帰ってこないのに・・・」
私は自分に問い掛けるように、声に出していった。
ただ哀しみに打ち砕かれたような声。
「馬鹿な・・・私・・・」
耕一さんを失って生きていけるとでも思っていたのだろうか?
私の頬を、涙が伝った。
「耕一さん・・・耕一さん・・・・・・」
一度流れ出した涙は止まらなかった。
せきをきったように流れ出す、涙。
両手に顔を埋めて鳴咽をもらす。
耕一さんが生きていた頃の思い出が、頭を駆け巡った。

───千鶴さん。
微笑みかけてくれた、耕一さん。
───千鶴さん、なんだか可哀想だ・・・。
気付いてくれた。私の心。
───千鶴さん・・・俺を殺してよ・・・。
あの場面・・・ひどく胸が痛む・・・。
愛する人を失った瞬間。
愛する人をこの手で失った瞬間。

まだ、涙は止まらない。
もう、なにも見えなかった。


・・・・・モウ、ナニモ・・・・・・・・・

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堕説・痕シリーズ第3弾です。
読んでくれてる人が少しでもいるらしいんでとても嬉しいッス。
千鶴さん一人称、耕一を殺した後。
いきなり書いたからまだまだ改良の余地があるなぁ・・・。
ここに書き込んだからには抗議の声が殺到・・・しそう。
セリスさんが堕説・痕の選択肢@の続きをずっと書いて下さってます。
感謝!!
あと、でんぱくんという方が僕の書いたSSとかをHPに置いて下さってます。
来て下さいね〜


http://www1.odn.ne.jp/~caa83050/