で。
浩之ちゃんがマルチを買うと言い出したので、私も協力してあげることになった。
なんで?
ってゆーと、まー色々あって何から話していいもんだか迷っちゃったりもするんだけれど、ホラ、ねぇ? 浩之たちゃんの家って、両親が共働きだから、家事やる人手が足りないんだ。そんで、まぁ、メイドロボのひとりでも欲しいかなーってゆー事になって、じゃーマルチがいーだろー可愛いしーとなったってーのは、みんな、想像も難くないよね?
多分、so。
はぅ。
『幼馴染み』な、私としてはそれはそれでまーいーかなー手間省けるしーとか。だってさ? このままじゃ、殆ど私、浩之ちゃんの奥さんだもん。
・・・・・・奥さん。ふむぅ。
ふふふぅ。
「あかりちゃん、今日、予約入ってるんだけど、OK? NG?」
「あっ、はい。(汗っ) OKでーす!」
ちょっち白昼夢モード入ってニヤけてた顔を為五郎さんに見られてビビる私。慌てて頭の上のリボンを整えるフリなんかしちゃったりして。
「5時からね?」
後ろへ全部ポマードで撫でつけた頭の為五郎さんは名字を緒方とゆって、お兄さんはなんでも某有名プロデューサーなんだそうだ。
似てるっちゃ似てるかな?
向こうもこっちも結局アレだ、女のコを食い物にしてるわけだしーー。
ねぇ?
「はいっ、て・・・・今日ひとりめのお客さん?」
「の、はず。まだ来てないけど」
私は自分の頬に、人差し指と中指を揃えて当ててみる。
控え室のちゃぶ台の上にはちっちゃくて可愛いい『たれパンダ』のデジタル時計がおいてあって、青白く光ってる文字は
PM4:45
予約のお客さまは10分前までに来店することになっていて、遅れるひとはあんまりいないんだけとれどなぁ。
「じゃーもースタンバイしてた方がいーですねー?」
「そだねー」
と為五郎さんもゆったので、立ちあがって部屋の方へ行くことにしたら、肝心な事訊くの忘れていたのを思い出して、くるっと振り向く。
「あ、そだっ」
つい×2、大声出したら
「は、はい?」
なんかもー驚いちゃってる為五郎さん。
「で、コスチュームは?」
「え、ああ」
為五郎さんの返答を待つ間、なんとなくあいちゃう間。静寂の美・・・
ここはべっそうち さかりばじゃないのよと〜
・・・・の隙間から忍び込んで来る有線放送・・・・・
アイドルやってる妹やらそのプロデューサーの兄やらへの反発なのか、為五郎さんはヤング向けの曲が嫌いらしい。
とゆーのが真実かどうか確かめよーと本人にこないだ直接訊いたら、そんなことはないぞ僕だってなー、とゆって
ヤングメン さぁたちあがーれーよ ヤングメン
とゆー曲をデッキから流してくれた。
いやまぁ、ひとのシュミにけちつける気はないけれど、ほら、ねぇ? ここは、こーゆーお店なんだからさーーー。
はふぅ。
かんわきゅーだい。
「パジャマ」
と為五郎さんはゆった。
「は?」
「パジャマ」
「はぁ・・・?」とか変な納得してるわたしは怪訝なかお。の、はず。
「いゃぁ、先方のたってのご希望で、どーしてもってゆーんだな」
誰かな? 誰かな?
予約って事は、多分一回来た事のあるお客さんだよねぇ?
でも、このお店に来てパジャマ希望、ってひとは、もしかして初めて?
ん。
「パジャマなんて、ありましたっけ? ここ」
「ないねぇ・・・」
「ないねぇって・・・どーするんですか?」
なんかのコスチュームで代用するしかないかなーとか頭をひねっていたら、どだどたと足音がして、控え室の扉がばたんっっっと開いた。
「買って来たでぇぇぇぇっっっっっっ!!!!」
ぜーはぜーはと息を切らしてそこに立っているのは委員長・・・もう委員長じゃないけど、の智子ちゃんだった。
ぐーぜんがいーくつもーなノリで、この店でばったり再会した頃は委員長と呼んでいたのだけれど、智子ちゃんが嫌がったので智子ちゃんと呼ぶようにしている。
「はいっ、為五郎さんっ領収書っっ!! ちゃんと後で払ってーな」
ばしっ、て感じで領収書を為五郎さんに叩きつける智子ちゃん。
「あーサンキュー智子ちゃん」
「それから、あかりっ」
メガネの奥で智子ちゃんの瞳に電流が走る。私の方を振り向いた時に、背中の一本お下げがぶらーーーーんと大きく勢い良く揺れた。あ、なんかかっこいい。
「青と黄色っどっちがいいっ?」
「え? え?」
「青と黄色やっ!! ブルー オア イエロー!!」
「えええええっと、チ、チルチルミチルが追いかけていたのが青い鳥で幸福の象徴だから・・・」
しどろもどろモードで、なんかよくわかんない迷い方をする私。
「あと3秒!!! 3、2、1!!」
「黄色」
「よっしゃ、じゃ、こっちな」
と、片手に下げていたLoftの紙手提げから、智子ちゃんはなんかがさがさゆー包みを取り出して、私に、ぼんっと投げつける。
これって・・・・・
「パジャマだよ」
優しい顔で何故かうんうん頷く為五郎さん。何か感動的なシーンだと誤解しているらしい。
「そや、パジャマや」
場の雰囲気に流されて智子ちゃんも優しい顔になる。で、その手にはいつの間にか青のパジャマが握られていたり。
「ふふ、おそろいやな、色違いやけど」
うん・・・
なんとなくそうしないと後が怖そうな気がしたので、智子ちゃんの言葉に頷いてみた。
「あかり・・・・」
そっと私の肩に智子ちゃんは手を差し伸べる。
あったかい。
「智子ちゃん・・・・」
「今何時やっっっ!!!!????」
はっ!!
はぅっ!!!!
私は時計をみた。『たれパンダ』が示しているのは
PM4:55
「あと5分っっ!!!!」
なんとゆーかロボットアニメに出てくるオペレーターみたいな感じで叫ぶ私。
「うぉぉぉぉぉぉっっっ!! こんな事やってる場合やあらへんやんかっっ 支度や支度ぅぅっっっっ」
「いや、まだお客さんきてないから・・」
とゆー為五郎さんの助言なんかやっぱり無視して燃えあがる智子ちゃん。バックスバーニー並のどたばたさでドアを出て行ったかと思ったら、また、ばんっと開けて私にこーゆった。
「あ、それからなあかりっ、なんかお客さん、お下げ希望らしーから、リボン、外しときっ」
ばんっ。
取り残される私と為五郎さん。
「・・・・・・なんて爽やかな青年だろう・・・」
とか、為五郎さんはよくわけのわかんないことを呟いた。
私は私で、
智子ちゃんと一緒ってことはさんぴーなのかなーとかぼーっと考えていた。
「本当にここか?」
オレは大志に訊いて見る。
「ああ、ここだ」
なんか自信ありげに大志は胸を張っている。
「冗談抜きにマジにうそじゃなく、ここか?」
「ジーザスに誓ってアラーに誓ってエホバに誓って、その他諸々の神に誓って、ここだ」
最近気がついたのだが、どーも大志の言葉はどこかのマンガから引用されていることが多いようだ。
まー、それはそれで記憶力がいいということの証明でも(多分)あるからいいとしても・・・・・
「フーゾクじゃないかっっっっ、ここっっっ!!!????」
オレは泣きそうだった。
「ちっちっち」
大志は何故か人差し指を振る。「日本じゃ二番だぜ」
何が二番なのかはよくわからない。
「いいとこ連れてってやるってゆーから来て見ればっっっ 何ゆえ、イベント帰りで山のように同人詩抱えた体でフーゾクに入らなきゃならんのりじゃーーーっ!!」
「ちっちっち」
大志はまた、指を振る。
「ただのフーゾクじゃないんだせ? 孝弘(仮名)」
同人誌を満載した紙袋を両手に下げた俺たちの目の前には派手で安っぽい看板があって、そこには『コスプレイメクラ』と書かれていた。
「イメクラ・・・・」
その存在は、俺も知ってはいた。知ってはいたが入ったことはない。
「そう! しかもただのイメクラじゃないっ! 中の女のコはみーんなコスプレしてくれるとゆー、コスプレイメクラなのだっ!!」
その一言が、俺の理性を吹き飛ばした。
「なっなにーーーーーーーっっ!!!!」
とゆーことは東Hの制服とかPIA人参の制服とかCC檸檬とか、エターナル幻想曲のメ■ディとか・・・・
「そのとおーーーーーり!!!!」
大志は余計に胸を張る。その後でふぅ、と、長くため息を吐き出し、
「まぁ、今日は特別な趣向を凝らしてみたがな・・・」
「と、特別な趣向???」
俺はもう、どきどきだ。
「ふっふっふ、越後屋、そなちも悪よのぅー」
「いえいえ、お代官さまにはかないませぬ」
わっはっはっはっは。
笑いながら、俺たちは、両手が塞がっているにも関わらずに無理矢理肩を組んで、その店へ続く階段を降りていった。
「しかし大志、おまえ、ここにはよく来るのか?」
「ん? ああ。中々可愛い子がいてな。なんでもメイドロボを買う資金を溜める為に、働きはじめたんだそうだが…・・・・」
「はぁー、今時感心な子だなぁ」
「これがまた、お下げが似合いそうなロリーなコでなぁ」
「おお、それはイカスな。ぜひともパジャマなんか着せてみて寝転がらせてみたいものだ・・・・」
ついつい欲望の赴くままに口走ってしまった俺に、大志は、ニヤリ、と微笑んで、俺の頭をくしゃくしゃにした。
受け付け係りに指示されたドアの前まで歩き、ノックする。
背後では、ずいぶんと昔のポップスが流れている。
ノブを握り締めて回し、ドアを開けると、
パジャマ姿の女のコが赤いふたつお下げを揺らして元気な声で俺を迎えた。
「いらっしゃいませっ! 『桃色クラブへ』ようこそっ!!!
コミックパーティー(仮) 完
「「「「「ええええええええええええええっっっっっっっ???!!!」」」」」*********************************************
お久しぶりです。
「あんB」さんの『Go! Go! Girl』
が面白かったので
HDDがすっ飛んだときに消えたものを、再構築してみました(笑)
そそれでは、また・・・http://www3.airnet.ne.jp/nayurin/