コミックパーティー(仮) 第一話 (爆) 投稿者: 沢村奈唯美
プルルルルル。 プルルルルル。
  プルルルルル。 プルルルルル。

 がちゃ。 
 
はい。。。
  
 あ、孝弘(仮名)ー?

・・・あ、大志? 何?
 
 あーまーちょっとね。あ、そーいやお前、インターネット始めたってこないだ言ってたけど、その後、どぉ?  

大志とのTELは大体いつもこんな感じだ。最初にズバリ要点を話せばいいものを、あたりさわりのない会話から入って外堀を埋めてから攻めようとするから、こっちも多少苛立ってしまう。それでも会話に付き合ってるのは、社交辞令と、まぁ、一応、友人だから。

 あ、そだ、今ヒマ?
 
会話が進んでからそんなことを訊きだす大志に
  
 ヒマじゃないって言ったら?
 
と、聞いてみたくなったけれど、実際訊いたらどーせ鼻先で笑って

 ヒマなクセに・・
 
 と、バカにしたように言うに決まっているのだ。ので。
 言わなかった。



 のが。

 過ちだったと今、俺はなんとなく後悔していたりする………。
 後悔しながら、駅前の開店直後の本屋の中で、「ウィンドウズスタート」とか言うパソコン雑誌を立ち読みしていたり。
 しかも、パソコンとは全然関係なさそーな編集後記のページを見詰めていたり。

  
「いいところへ連れてってやる」
 と、昨日のTELで大志が言ったのだ。

 目は『しおりん』とか言うライターの人の、最近ハマっている推理小説のタイトルの上に固定していたり。
 
 ああ。
 うう。
 『いいところ』って、どこだろう。
 考えるだに、なんか恐ろしい。かもしれない。
 %S300(←分かる人には分かるSCR3構文 笑:作者注)・・・・・・%s10もしかして、オトナの世界なんだろうか。
 あいつ、いつの間に、そういう場所へ出入りするようになったんだろう。
 とゆーか、どこにそんな金があったんだろう。ついひと月前には「かねがね金がねーからバイトするっ」とか電話越しにオヤジギャグ飛ばしてたクセに・・・・。競馬かなんかで大穴でも当てたのか? 宝くじでも当たったか? んで気が大きくなって、歌舞伎町あたりにでも繰り出した時にふらふら〜と・・・・しかしそんな金があるんだったら
 あああああ。
「オッス」
「こないだ貸した650円、早く返せよな」
「は?」
「あ、いや・・・」
 気がつくと、雑誌を手に取る俺の右に、大志が居る。
 こいつ(バグバグ11月号参照)が大志だ。
 色白で、緑の髪に、丸いファッショングラス、黒っぽい服と、なんとになビジュアル系な、俺の・・・・・。
「親友だもんな。まー、もう少し貸しててくれや。今日、余ったら返すからさ(笑)」
 いや、どっちかというと悪友の方が近いって気がしないでもない・・・・・
 ・・・・・って、余ったらって・・
「あ? 『窓始め』? んまー、初心者にはこれでいーかなー」
 俺の手にした雑誌を覗き見て言う大志に
「結構これでも俺にはチンプンカンフンなんだけど・・・」
 と素直な感想を漏らせば
「まぁ、そのうち教えてやるよ。フォトショップは、もう入れた?」
「うん。まぁ、その為に買ったようなもんだし、パソコン」
「よしよし。いいぞ」
 メガネの奥の目を大志は細める。俺に執拗にパソコンを買うように勧めたのも大志だ。フォトショップという、やたら高価なお絵描きソフトを勧めたのも、大志だ。
『お前、一応仮にも芸術学科なんだからさー。やっぱ、これからはパソコンで絵描けるようになんなきゃダメじゃん』
 とかなんとか言って、在籍しているのが『人文学部芸術学科』であって『芸術学部』ではない事に僅かなコンプレックスを抱いている俺を口車に乗せたのも、大志だ。
 何かこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、陰謀の匂いって奴?
   感じる。
「ふっふっふ」
 何故そこで笑う、大志・・・・・・
「なんだよ、気味の悪い笑い方だなー」
「ん? あ、そーかー?」
 大志は髪をかきあげながらもまだ、明らかにカッコつけてる風のニヤけ顔のままで、反対側の手の人差し指を、俺の前で左右に数回振った。
「ちっちっち」
 と、口に出して言いながら。
 親友になってから3ヶ月、時折、こういう意味不明な仕草を大志は見せるのが、多少不気味だったりするけれど、まぁ、友人だし・・・・。
「ふっ。あめーな。蜂蜜たっぷりの上に練乳をかけたベルギーワッフルのように大甘だぜ」
 ・・・また意味不明なことを・・・・・
 とゆーか、会話が噛み合ってないじゃん (汗)
 ちなみに、何故か大志は台詞の前に「ふっ」という擬音?を発音したがる。何故かは今もって良くは分からない。
「何が?」
 訊いてみた。
「キミは今これから、新たな世界を切り開こうとしているのだよ。そう、僕という存在が導く道程によってね」
 ・・・何故か大志は興奮すると一人称が『僕』だの『私』だのになるのだった・・・・
 ・・・・・・って、やっぱり・・・・・???
「あのさ、まだ聞いてなかったんだけど」
「ん?」
「今日、どこ行く訳?」
 一瞬後、大志は再び俺の前で人差し指を揺らしていた。

「ちっちっち」
 あう。(汗)
 人目がー一人目がーーーーー。(泣)
 そんな俺の心の嘆きなど完全に無視して、大志はこう言った。
「い・い・と・こ・ろ・!」


「じゃ、あたしちよっと追加椅子買ってくるわー」
 予想したより、机が広かった。
 1スペースが、公民館なんかで良く使う、脚が折畳式の長机、その半分だという基本は変わっていないけれど、この会場の机は縦幅、横幅、共に夏冬のコミックマーケットで使っているものなんかよりも、広めだったのだ。
 これなら、3脚目の椅子を置くことができる。
 1スペースにつき椅子は2脚。それが今回の即売会の標準セットで、それ以上の椅子を使うには、会場の入り口付近で『追加椅子』を借りて来なければならない。ひとつ、500円。椅子自体は、ただのパイプ椅子だ。肘掛がついてる訳でもなければ、黒の皮張りって訳でもない。
「あ、足んない? 椅子」
「まーね。開場したら、神部、来るんでしょ?」
「って言ってた。んじゃ、猪名川?」
 立ちあがったその場から、あたしは相方を見下ろす。
「ふん?」
「見本誌、出してきてー」
 本の入ったB4のクラフト封筒を、あたしに差し出す水上。彼女、同じサークル『憩』の仲間。
 同人誌即売会では普通、『見本誌』というものを、開場前に提出することになっている。
 法に触れる描写などがあった場合、事前に販売を差し止める為だ。表3・・つまり裏表紙の裏、に、サークル名、責任者名、発行年月日、誌名を書いたシールを貼って、即売会の運営スタッフに差し出さねばならない。大抵、運搬途中で折れ曲がったりしたりしてまった本が、その役目を担うことになる。というか、普通、そうする。
「向こうから徴収に来るんやないのー?」
 しまった、と思って息を飲む。
 油断すると関西弁が出てしまう。悪いとは思わないが、関東での即売会では標準語を使うのが無難だ。というか、客商売だから。
「違う。本部に持ってくんだって。はじまる前に」
「めんどいなー」
「すぐじゃん(笑)、入り口んとこだからー本部」
「へい」
 受けとってから、机の上に平積みにした今回の新刊へ目を遣り、水上に訊いた。
「あ、ね、ついでに挨拶周りしてきたいんだけど、貰ってっていい?」
「いーよー」
 水上は、後で、あたしの描いた絵を貼りつける為の簡易型イーゼルを組みたてながら言った。このイーゼルは水上がハンズで木材を買ってきて作ったものだ。机の上に乗る程の小型で、ネジをバラして持ち運びができるようになっている。かなり便利だ。
「んじゃ、いち、にぃ、さん、しぃ、っと」
『DOKIDOKIリーフ大渋滞』四冊。
「でもなんか長谷部さんって、こういうの嫌いそーだよな(笑)」水上が言う。
「んー、でもこんなイベントに来てること自体ーーーーー」あたしは胸に『DOKIDOKIリーフ大渋滞』を抱えて苦笑してみる。
「まー、そりゃそーか。同じ穴のーーって奴?(笑)」
 あはは。と軽く笑ってから、あたしは席を離れた。
 今回の本は18禁、性的な描写を含む作品だ。これから最初に挨拶しに行く大場詠美程の人気はないうちらだと、赤字を回避する為にも18禁マンガが必須になる。イベントではそれほどでもないのだが、『虎の穴』や『メッセサンオー』と言った同人誌専門書店は、18禁でなければ買い取ってはくれないのだ、うちらのような中堅、もしくは弱小、なサークルだと。エッチなマンガを描くのは、けれどでも、嫌いじゃないけれど。

 はう。
 
 
 どこもかしこもまだ準備中の会場を歩くあたしの足取りは、ちょっと重い感じ。
 昨日も、また、父親に、ちょこっと嫌味言われたからだと分かっている。
 結局、あたしの職業:未だに家事手伝いってのが彼には気に食わないらしい。

 やっぱ、さっさとプロのマンガ家にでもなっとくかなぁ。
  
 名目だけあれば、暫くは両親騙して、現状維持、『憩』発展そしてその先のスターへの道を、やっぱ暫くは、邁進するのに情熱を傾けられるだろう。
 多少なりとも夢はある。『夢』というほどロマンチックじゃぁなくって、どっちかといや『目標』みたいな堅実な感じだけれど。それを実現させる為に日々、現実的な方法で努力を積み重ねていっているつもりだ。ただ、それが一般人には理解できないだけ。説明したって理解出きる訳もないから、黙っている。言ったって聞こうともしないし。
 
『本部』と極太ゴシック体で書かれたB5の張り紙が見えて、あたしはそれを目指して歩きつづけた。
 





・・・・・・・・
「・・・・・なんか、並んでるんだけど。酷く」
 四月に入ったというのに、午前中の風邪はまだまだまだまだまだ冷たかった。
「あらー、ちょっと遅過ぎたカニー?」
 俺を惑わす大志の謎の語尾・・・・
「・・・ここで一体何をするんだ?」
「なぁ、俺の髪が何故緑色なのか、お前、考えたことがあるか?」
「はぁ??」
 大志はまた、髪をかきあげて、斜めに俯いた感じのポーズのまま、すたすたすたすたすたすた列の最後尾へと歩道を歩いていく。
 しかしまぁ、『いいところ』の予想が外れたのは幸いだったという気がしていなくもなくもあり、残念な気がしなくもなかったりはしなくもあり。
 変な建物だった。
 カットされたケーキの形をしている。
 なんか昔見たTVのヒーロー物の秘密基地みたいだ。デレンガイヤー発進!とか言って変な形の飛行機が飛び出しそうで怖い。
「で、分かったかね?」(←大志)
 その怪しげな近未来的ガラス張り建築物の下に集う、男達・・・・というか、群れ・・・・・・
 ・・・の、おそらく最後尾につく俺たち・・・・
「い、いや」
 ちっちっち。
 また指を振る大志。しかし、どういう訳か、今この場所に限っては、彼のそんな仕草も、妙に自然なものとして俺の目には映るのだった・・・・・
「TO HEART、というゲームがあるんだが・・・・・」
「はぁ・・・・」
 目の前で、赤いフルゾンにしたはスラックス、テニスシューズという出で立ちの頭の薄い男が、しゃがみこんで携帯を使っていた。『いや、ダメっす。えー、ちょい遅れちゃいましてー。はい、『パープルリボン』は、まー並ばなくてもゲット出きると思いますー』。会社の上司と話しているんだろうか・・・いや、いや、それにしちゃ、タメ口が混じっているような・・・・
「で、だな、そのTO HEARTに、マルチ(←拡大:作者注)というキャラが居る訳だ、だ」
「そうなのかー。って、TO HERATってPSのゲームじゃなかったっけか?」
 ちっちっち。
 またもや指を振る大志。

 赤ブルゾンの男の左で、メガネを掛けた色の白い青年たちが会話をしている。
『いやァ〜、もう、やっぱ楓萌えっスから、ハイー』
『いやっ! 自分はやっば、ここで敢えて、葵ちゃんッス。って、ピアキャロのほうじゃなくってですねー』
『あ、そーゆー事言うならー。おいら、やっぱミーナとつかさっス』
『青の制服っすよねー』
 わっはっはっはっ。

 ちっちっちっち。
 ……大志の指振りが、場の雰囲気に沈没している………
「ふっ。もともとはパソコンのゲームだったのだよ、青年」
 ・・・・何故に俺を『青年』と呼ぶ、大志・・・・
 大志はニヤリと笑った。
「まーなんだ。この3か月、君と親友してきたわけだがキミには見込みがある、とボクは思ったのさ。だから、ここへ連れてきた」
 突然話しがズレる大志に
「はぁ………」
 と、眉根を寄せたその向こうで、列が動き出していた。



「それでは開場でーーーーーす!」
 館内放送が器用のイベントの開場を告げ、拍手が沸き起こる。
 11時10分。予定より10分遅れたけれど、いつもの予測範囲内、だ。
 私はお腹を軽く両手で押さえて深呼吸をして、『今日一日がんばろう』と自分に言い聞かせた。
 ひとつのスペースに2脚あるうちの、私の隣の椅子の上には、猪名川由宇さんから貰った『憩』の同人誌。いつも私の隣には人間が座った事がない。バックやら荷物やらが置いてある。今日はせっかく本を貰ったので、自分の荷物は足元に置く事にした。
(長谷部彩、顔UP)
 ひとりで売り子をするのも、それが私にとっては当たり前だから、辛いとは思わない。
 猪名川さんの所のように忙しいわけではないのだし。
 客が少ないのは仕方ない。一般受けをしない本だというのも、なんとなくだけれど、自分で分かっている。でも、本なんて無理して買うことなんかないのだ。私は私の描きたいものを描いて、それで、私の本が欲しいひとだけ買えばいいのだ。
 と、言い聞かせてみる。
  マインドコントロール、OK。
「よし、がんばるぞ」
 声が漏れたのか、隣のサークルの人が私を見た。気がした。
 人群が、押し寄せてくる。その足音が聞こえた。
 私は前で束ねた髪の先を掴んで、今日一人目の客を待った。
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うがーーーーーーーーーーーー
血がうずくーーーーーーーー押さえきれない情熱はーーーーーー
って訳で、早々と書いちゃいました 笑
ゲーム本編と全然違っても責任は持ちません 爆

あ、これで出したイベント会場、実在の場所です 笑
どこだか分かった人には・・・・・特にプレゼントはないな 笑


そうそう、ELOGINの巻末マンガに感動し(笑)、僕のHPでちょこっと
「楓ピカチュー」を後悔してみました。
よろしければDLしてやってください 爆


さて、真昼のその13もアップしなければねぇ・・・・
あ、久々野さん、そうです。「真昼〜」の小説パートです。手直しとかしたものを、アップさせていただいております。。。
 

http://www3.airnet.ne.jp/nayurin/