真昼の光は嘘をつく  その9 投稿者: 沢村奈唯美
夕食は賑やかだった。
 梓の後輩の、日吉かおりさんという女の子が招かれたからだ。
 調子に乗って作り過ぎた、と梓は言った。それで、タイミング良く梓を訪れたかおりさんを食卓に迎える事になった。おそらく梓は計画的に調子に乗ったのだ。照れるとつかなくてもいいような嘘をいちいちつく癖が、梓にはある。
 計六人で囲むとなると座卓は少し窮屈だった。窮屈な席で、私は、楓と初音に挟まれている。
 かおりさんは私の真向かい、梓と耕一さんとの間に座っている。梓に肩を密着させて、梓の皿に、宅の上のおかずを取り分けたりしていた。
「なんだか新婚さんみたいね、梓」私が言うと、梓は、
「ば、ばか言ってんじゃねーよ」と、照れて吃る。
 あはは、と初音が笑った。その笑い声に、意味深な響きの歪みを感じとり、私は、梓とかおりさん、ふたりの関係を察する。そういう事もあるかも知れない。梓は同性からモテそうだし。女子校だし。
 初音はもう快復していた。涙跡など微塵も見せずに、かおりさんへの接客に勤しむ。
「いいじゃないですか。はい、あーん」かおりさんは、お味噌汁の中のツミレを自分の箸で梓の口に運ぶ。
「う……」
 みんなが注視する中で、それでも梓は口を開ける。
「ぱくっ」
 明るく元気なかおりさんの誘導の言葉に従って、梓が口を閉じる。つられて同時に目も閉じる。
 いいな。私はそう思う。かおりさんの明るさは伊丹さんに似ている。けれど、きっと、余計な事を考える事なしで梓を慕っている。
「おいしい?」かおりさんが梓に訊く。
「あ、ああ」食べながら、梓は言った。
 私は小声で楓に話し掛ける。
「楓、あれ、梓が自分で作ったんじゃないの?」
 楓は答えない。私の方を見もせずに黙って御飯を口に運ぶ。
 あ……………そうか…………………
「まぁ、いいじゃない」代わりに初音が言った。
 楓が立ちあがろうとしたのを感じて、私は瞬間息を止める。
「耕一さん、お茶、どうぞ」
「お、すまんね」
 見る。楓は急須を手に、立て膝をついている。
 耕一さんの湯呑みに、お茶を注ぐ。緑色の液体が湯気を立てる。
「いやぁ、気が利くねぇ、楓ちゃんは」
 楓は黙ったままだ。本当に、誰にも判らないくらいに小さく口の両端を上げ、耕一さんの湯呑みを満たしてから、また座る。
「ごめんなさい」私は、つい口に出してしまう。
「あ、いや、別にそーゆー意味で言ったんじゃないですよ」
 首の後ろに手を当て、取り繕おうと意味もなく笑う耕一さんに、かおりさんは横目で、蔑むような視線を送っていた。
「いや、でも、ほら、先刻も玄関、閉めちゃって……」隣の楓を気に掛けて、私は耕一さんに言う。楓はまたご飯に箸をつけたようだ。
「あ、いいよ、だって鍵持ってかなかった俺が迂闊だったんだから」
「でも私、いつも気が利かなくて」
「なんの話ですか?」かおりさんが口を挟んだ。その下唇に、揃えた箸先が当てられている。
「ああ、こいつバカだからさぁ」梓は意地悪く笑い、「締め出されてやんの、先刻。あっはっは」
「ば、ばかとは失礼だなぁ、チミはぁ」耕一さんは、梓の方を向く。だから、その視線が私から背けられる。都合の悪い事をうやむやにしてしまった後味の悪さ。尚更、私は楓を気に掛ける。
「やーい、ばか」かおりさんが、耕一さんに白い目を向けた。
「う……」
 等々。
 それが今日の柏木家の夕食。

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うひゃぁ、ずいぶん間があいてしまいました;;;;
すみません。
HPの移動やら、本つくりやらやっていました。。。
に、まぎれて どきどポヤッチオも少々 笑
でも、まだエンディング迎えていません。
千鶴さんライク(井上喜久子さんライクとも言う 笑)なマリアねーさんにもうメロメロです……
とりあえず、多少本などの完成のメドが立ってきたので、今後はちょくちょくアップしていこうかと思います。
ぜんぜん関係ないですけど、窓98のIEってなんでこんなに良く落ちるんだろう?
うちだけなのかな……? はぁ。

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