「ば、ばかな、HMX−13には、あらゆる事態を想定して 何重ものプログラミングがなされている。暴走など、あり得ない!」 わざわざ云わなくてもいいよーな事を長瀬主任が大きな声で云ってる間にも、 マルチはゴール目指して一直線に歩いていた。 『ぎょいーん ぎょいーん』 間接の具合がおかしいのか、奇妙な音が響いている。 なんだか目に生気がない。手をぶらりーんと象の鼻の様に前後に揺らして、 マルチは、コースの真ん中でぐっすり眠ってる自分のハムスターを無視して歩き続けた。 ちょっと猫背だ。タイツが下がって、ルーズになっている。 「なんか、、こーしてみると、マルチもフツーの女子高生やなぁ」 委員長が笑顔を見せた。普段笑わない委員長の笑みを見て、 あかりの心が和んだ。 『ふふふぅ』 「……………………」 「え、停止の為のパスワードを教えなさい、って?」(浩之) こくこく。 『みょいーん みょいーん』(マルチ。) 「いや教えたいのはやまやまなんだが、何しろ国家機密なんだ。あっはっは」 ぴろりろりーん! 長瀬主任 は 無責任な事を云っている! 「うらぁぁぁぁぁ! 教えやがれーーーーっ!」 ずばきぃぃぃぃっっっっつ!!!! 「はぐっっ!!」 「はっ初音っ!? なぜここにっっ?!」(千鶴) 「ふふっ、このレースでマルチに勝たれちゃあ、瑠璃子に全額投資した アタシの立場がなくなるんでな」 「初音っ、あんた、また私のお財布からっ!?」 「ケチケチすんじゃねーよ、100万や200万くらいよォ、てめぇ、企業の会長だろ? アン?」 『みょみょーん みょみょーん』(マルチ。) 「…………今、来栖側の衛星を介して、マルチさんにハッキングしています」 「おおっ、頼んだぜ! セリオ!!」 『びしっ』 初音は親指を立てた。 ・・・・初音、私たち、いつまでも姉妹よね? 両の頬に涙の滝を流し、観客席の遙か隅っこで、梓が笑顔を引きつらせていた。 空は蒼かった。 続く……続けて、誰か(笑) ああ、なんかマルチファンを敵に回したような、そんな、変わらない予感……