第七話 人の造りしもの 投稿者:沢村 奈唯美



「ば、ばかな、HMX−13には、あらゆる事態を想定して
何重ものプログラミングがなされている。暴走など、あり得ない!」
 わざわざ云わなくてもいいよーな事を長瀬主任が大きな声で云ってる間にも、
 マルチはゴール目指して一直線に歩いていた。
 『ぎょいーん ぎょいーん』
 間接の具合がおかしいのか、奇妙な音が響いている。
 なんだか目に生気がない。手をぶらりーんと象の鼻の様に前後に揺らして、
 マルチは、コースの真ん中でぐっすり眠ってる自分のハムスターを無視して歩き続けた。
 ちょっと猫背だ。タイツが下がって、ルーズになっている。
「なんか、、こーしてみると、マルチもフツーの女子高生やなぁ」
 委員長が笑顔を見せた。普段笑わない委員長の笑みを見て、
 あかりの心が和んだ。
  『ふふふぅ』
「……………………」
「え、停止の為のパスワードを教えなさい、って?」(浩之)
 こくこく。
 『みょいーん  みょいーん』(マルチ。)
「いや教えたいのはやまやまなんだが、何しろ国家機密なんだ。あっはっは」
 ぴろりろりーん! 
  長瀬主任 は 無責任な事を云っている!
「うらぁぁぁぁぁ! 教えやがれーーーーっ!」
 ずばきぃぃぃぃっっっっつ!!!!
「はぐっっ!!」
「はっ初音っ!? なぜここにっっ?!」(千鶴)
「ふふっ、このレースでマルチに勝たれちゃあ、瑠璃子に全額投資した
 アタシの立場がなくなるんでな」
「初音っ、あんた、また私のお財布からっ!?」
「ケチケチすんじゃねーよ、100万や200万くらいよォ、てめぇ、企業の会長だろ? アン?」
 『みょみょーん みょみょーん』(マルチ。)
「…………今、来栖側の衛星を介して、マルチさんにハッキングしています」
「おおっ、頼んだぜ! セリオ!!」
 『びしっ』
 初音は親指を立てた。
   ・・・・初音、私たち、いつまでも姉妹よね?
 両の頬に涙の滝を流し、観客席の遙か隅っこで、梓が笑顔を引きつらせていた。
  空は蒼かった。 
                          続く……続けて、誰か(笑)

 ああ、なんかマルチファンを敵に回したような、そんな、変わらない予感……