ーある少女のもう一つの雫 IIー ここはどこ? あやふやな、それでいてはっきりとしている 真っ白な世界。 音も無い、色も無い、何も無い真っ白な世界。 ・・・わたしは・・・わたしは・・・。 「・・・ママ。・・・ママ。」 だれ?私を呼ぶのは。 「・・・ママ。・・・ママ。」 だれ?だれなの? それも今のわたしにはどうでも良い事・・・・。 ポロロ〜ンポロロ〜ン♪ 何処からともなく流れてくる音。 ポロロ〜ンポロロ〜ン♪ 懐かしいメロディー。それでいて悲しいメロディー。 わたしは知っている。このオルゴールの音を・・・。 楽しかったあの日の思い出・・・。 「・・・菜ちゃん。・・・ヵ菜ちゃん。」 だれ?わたしを呼ぶのは。 「・・・香奈ちゃん。香奈ちゃん。」 涙ながらにわたしを呼ぶ声。 「香奈ちゃん。帰ってきて。」 心の底からわたしを心配してくれるその声は・・・ 瑞穂ちゃん? 「帰ってきて。香奈ちゃん。」 「お願い・・・帰ってきて・・・。」 瑞穂ちゃん・・・。 わたしは・・・わたしは・・・。 「太田さん。」 だれ?わたしを呼ぶのは。 「太田さん。お兄ちゃんをゆるして。」 ゆるす?お兄ちゃん? 「そう。許してあげて。お兄ちゃんを。」 はっきりと聞こえるこの声は・・・ 瑠璃子さん? 「そう。私は瑠璃子。月島拓也の妹、瑠璃子。 今あなたの心に話しかけてるの。」 どうしてわたしを呼ぶの? 「みんなの、お兄ちゃんの願いだからだよ。」 願い? 「そう。みんなの願い。お兄ちゃんの願い。 聞こえるはずだよ。みんなの声が。願いが。」 「太田さん。」 「太田さん。帰ってきて。」 「香奈子さん」 「帰ってきて。香奈ちゃん。」 聞こえる。 みんなの声が。 解る。 みんなの願いが。 でもわたしには帰る場所が無い。 「帰ってきて欲しい。」 その声は・・・月島先輩? 「ごめん。本当にごめん。」 どうして?どうして謝るの。 「僕は取り返しのつかない事をしてしまった。 特に太田さん。あなたには。」 先輩・・・。 「だから帰ってきて欲しい。 そして僕に償いをさせて欲しい。」 ・・・。 「今更こんな事を言えた義理ではないが・・・ 好きだよ。太田さん。愛している。」 ・・・。 「だから・・・だからもう一度僕の所に 帰ってきて欲しい・・・香奈子。」 ほんとうに?ほんとうにあなたの所に 帰って行ってもいいの? 「香奈子がまだそれを望むなら。」 拓也さん・・・。 「よかったね。・・・ママ。」 終劇 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー どもども静耶です。 前回に続き太田 香奈子さんです。 一応太田さんの心が救われる話を書いてつもりです。 健やかさん 今の静耶にはこれが限界です。 「未熟者ー!こんな事で太田さんの心が救われるかー!!」 なんて電波は無しです。 それでは次回作で。