東鳩高校の奇跡 投稿者:セリス


俺の名前は藤田浩之。
ここ、私立東鳩高校の新入生だ。
ほどほどで控えめな成績の俺が、進学校で有名な東鳩高校にまさか合格
できるとは思わなかった。
最高の気分だ。
密かに思っている、神岸あかりと同じ高校に入学できたんだから。
実は、俺と彼女とは幼なじみで、家も近いんだけど・・・。
俺と比べて、月とスッポン。
だから、いまだに友達以上の関係には・・・。

トントン・・・。

ん? 誰かが机を叩いている。
「やあ。なんかつまらなそうな顔してるね」
『あ、ああ・・・』(なれなれしい奴だなあ・・・)
「僕、佐藤雅史。これからよろしくね。君は、何て名前?」
『俺は、藤田浩之。こちらこそ、よろしく』

ガラッ・・・。

「あっ、来たわよ!」
「素敵〜!」
「ど、どうしたんだろう? 急に女子が騒ぎ出したね」
俺達が前を見ると、
「やあ、諸君! 待たせたね!」
ここの生徒らしい男が教壇に立っていた。
「この僕のことを知らない者はいないと思うが・・・。僕が理事長の孫の、
月島拓也だ。同じクラスの男性諸君には悪いが、ま仲良くやっていこうじゃないか」
そう言ってキザに髪を掻き上げた。
「月島って、あの金持ちの? いやなクラスになっちゃったなあ」
『そ、そうだな・・・』
(あっ、次はあかりの自己紹介みたいだ)
「みなさんはじめまして。名前は、神岸あかりです。趣味は音楽鑑賞で、熊のテーマ
なんかをよくききます。みなさんこれからよろしくお願いします」
「か、かわいい〜。神岸あかりちゃんか〜。このクラスに入れてよかった〜」
(さっきは、いやだって言ってたくせに・・・)
「あっ、いま君のこと見たよ。彼女と知り合いなの?」
『知り合いも何も、幼なじみだよ』
「へえ〜、そうなんだ。じゃあ、誕生日とか教えてくれない?」
『それはいいけど・・・。お、お前、そのメモ帳、女の子のことでいっぱいじゃないか』
「へへ〜。ま、女の子のことで知りたいことがあったら、僕に相談してよ。力になるよ」
『あ、ああ・・・』
「それよりもさ。君、この高校の伝説、知ってる?」
『伝説?』
「うん。そこの窓から、校庭の真ん中のでっかい樹が見えるでしょ?」
確かに雅史の言う通り、大きな樹が見えている。
『大きな樹? ああ』
「卒業の日。あの樹の下で、女の子からの告白でうまれたカップルは、永遠に幸せな関係に
なれるんだってさ」
『永遠に幸せな関係・・・?』
「誰が言い出したのか知らないけど、うらやましい話だよね」
『伝説か・・・。そうだな、俺なら・・・』
俺の脳裏にあかりの姿が浮かんだ。

こうして、不安と期待に満ち溢れた高校生活が始まった・・・。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あああああ・・・。
勢いだけのお馬鹿ものだ・・・。