「浩之さん。 もし、私の妹たちが売り出されていたら、買ってくださいね。 きっと、どこかに私が生きてますから…。」 そう言い残して、マルチは俺の前から消えた――。 そして、何日か、過ぎていった。 朝には、あかりと一緒に登校して(時々、志保に冷やかされて)。 フツーに授業受けて(たまに、寝たりして先公に怒られて)。 昼には、雅史と購買でパン買って(時々、あかりが弁当くれて)。 休み時間に騒いだり(たまに、委員長に無視されたりして)。 帰りに、色々と、寄り道したり(時々志保におごってやったして)。 ―――何も変わらない、日常。 ただ、そこには、何かが、足りない。――― 休みの日、隣町に遊びに行こうと、ふと思いたった。 善は急げ。 そんなことを思いながら家を出る。 「えっと…190円…っと。」 財布から、200円出す。 ちゃりんっ。 ぴっ。 『オツリト、切符ヲオトリクダサイ。』 機械独特の声でアナウンス。 「―――るせーんだよ。」 ぼそっと、つぶやきながら、釣りと切符をとる。 ガタン…ゴトン…。 電車の揺れが、胎動のようになんかやさしい。 落ち着く。 ―――なんかねむいな。 このごろ、寝てねーから……。 って、俺、何考えてんだ? 十分寝てるだろ? そりゃ、深夜番組の見過ぎで多少、寝不足だけど…。 ま、いっか。 しばらく寝てよう。 …おやすみ。 うとうとしはじめた。 その時。 「あのぉ…すみませ〜んっ。」 ―――ん…。 「ちょっと、つめていただけませんか〜?」 どこかで聞き覚えが…。 「すみません〜っ。 あのぉ…。」 がばっ。 マルチ?? 「あっ…起きてくださったんですねー。 すみません〜。つめてくださいー。」 が、目の前にいるのは、隣町の女子高生だった。 (どうやら、おばあさんが座れなかったのを、助けてやったらしい。 そういや、あそこの女子高、“ボランティア部”なんてのがあったっけ。 時々、駅前で募金やってたりするよな。) でも、なんか、いいよな。 こういうやつって。 今思うと、マルチって、すげー優しいやつだったな。 時にはパン買ってこい、とか、掃除当番をかわれ、とか、いいように使われてたけど。 おばあさんに、席をゆずったらクッキーをもらったとか言って、迷い犬にやってたっけ。 ―――なんか、なつかしいな。 いっつも、一生懸命で。 いっつも、息を切らせながら『みんなのために』とかいって。 たぶん、誰よりも、何よりも“生きてく意味”ってやつを考えたりして。 きっと、誰よりも、何よりも“それ”に気づいてたんだろうな、って思う。 ―――それこそ、俺なんかよりも。 ささやかだけど、マルチ以外には真似のできない“虹”をはなって。 もし、だれかに汚されそうになっても“それ” は、汚せない、と思う。 『次は―――』 おっ。もう着いた。 さて…っと何しようかな。 まずは腹ごしらえだ。 ヤックでもいくか。 「いらっしゃいませ。 ご注文をどうぞ。」 「じゃ、ベーコンエッグダブルヤックバーガーと―――。」 バーガー系2つと、ポテトL、それと飲み物のM。あとナゲットだ。 「1407円です。 お先にフォンタのMです。 ストローをお差ししてよろしいでしょうか?」 「あ…はい。」 この手のファーストフード独特の言い回しだ。 やっぱり、アメリカとかで、差した差さないで裁判でもあったんだろうか。 「こちらの番号札をお持ちになって席でお待ちください。」 28番か。 やっぱり休日の繁華街ともなると混んでるな。 ま、それなりに店も広いからいいけど。 …道に面した、カウンター席に座る。 一人になりたいときはおすすめだ。 さしずめ、群集の中の孤独ってとこか。 道には、楽しそうに歩く人々がいる。 時々、さも“休日出勤”ですってサラリーマンがいる。ご苦労なこって。 「28番の番号札でお待ちのお客様ぁ〜。 28番の…」 「あっと。 すいませ〜ん。俺です。」 手を振って呼び止める。 「あ。はい、お待たせしました。 ごゆっくり。」 いっただきまーす。 ぱく。 あ。けっこーおいしーな。 たしか、これ期間限定なんだよな。 ―――マルチが食べたらなんていうんだろ。 いつもみたいに、 「浩之さん〜。 とってもおいしいですー。」 とか言って、また感激するのかな―――って、何考えてんだろ? マルチはここにいないし、それに仮にいたとしても、食べ物は食べれないだろ…? ―――今度、あかりや志保、それに雅史でも連れて食べに来よう。 街にあふれてる人々。 どこか、流されてるみたいだ。 それとも、どこかへ行こうとしてんのか? 「たどり着きたい場所なら、きっと行けますよ…か。」 どこかで聞いたことがある言葉をそっとつぶやく。 じゃあ、もしマルチが俺のところにたどり着きたいって思えば、たどりくのだろうか? 俺が、マルチのところにたどり着くって思えば、きっとたどりつけるのだろうか? 「そんなことない…のか?」 けど。 信じ続けるくらい、いいよな? 一日中、遊びまわった。 新しいゲームがあったから、徹底的に攻略したり(これで志保にヤックおごらせる事ができる!)。 CD屋で、あかりが好きな歌手の新譜がでてた(買ったらダビング頼もう。まめなやつだしな)。 帰ろう。 電車に揺られて、また考え事をする。 時々、何でもないのに胸が潰れそうになる…。 何故? ―――いや、本当は判ってるんだ。 『きっと、どこかに私が生きてますから…。』 どこからか、そんな声が聞こえる。 本当に、生きてるのだろうか? ―――もし、本当に生きてるのなら――― それを励みに生きて行けるだろう。 『きっと、どこかに私が生きてますから…。』 その声が、自分の声と気づかずに―――。 <Fin> というわけで、あとがきです。 小説を書いてみました。感想をお待ちしてます。 一つ書き終えるとすぐ次のを書くんですよ。 けど、書いたものをすぐに“即興小説”のコーナーに書き込むのではなく、 一度うちの“おにいちゃん”に読んでもらって、感想を聞く&おかしい点を指摘してもらうんですよ。 で、今回の(“ダイヤモンドは傷つかない”)を読んでもらったんですが…。 「うん。いいんじゃない?」 と、お褒めの言葉をもらったんですね。も〜うれしくってうれしくって。 いま、幸せな気分にひたってます。 この話には、イメージソングがあるんですね。 いまは亡き(?)“東京パフォーマンスドール(略して“T.P.D”)”の、同タイトルの歌が、 そうなんですよ。 だから、それを聞きながら読むといい感じ…って(笑)。 (その歌の歌詞が小説にさりげなくちりばめてあるところあたり(笑)。) どーでもいい話ですが。 その歌のC/Wは、志保ちゃんのイメージだったりもします。 さて…っと。 がんばって琴音ちゃんをクリアしようと思います。 彼女が、私の思ってるイメージどおりなら、書きたい話があるんです。 いつか、ここに書き込もうと思います。その時は、どうぞあたたかい目で(?)見てやってくださいね。 では今日はこの辺で。 by.鈴木『あと六人!!』夕美