スーパーLEAF大戦F・第3話 投稿者: ジン・ジャザム
「ヨーク。『宇宙ゲノム計画』の要。」
「ヨークは覚醒させなければならない。いかなる代償を払っても。」
「そして、ヨークをエルクゥの手に渡してはならない。そのためのLEAFだ。」
「鶴来屋は次郎衛門の結界を守っている。結界の破壊。それがおそらくヨーク覚醒の鍵と
なるだろう。」
「切り札は向こうにある。だから迂闊には動けまい。」
「しかしこの大戦に関わった以上、奴らの尻尾を掴めるときは必ずやってくる。」
「そのときのために……君がいるのだ。分かっているね?」

「はい……心得ております。」

「次郎衛門の結界は、鬼の血を継ぐ者でしか察知することができまい。」
「そのための君だ。期待しているよ。」

「お任せ下さい。この使命、必ず果たしてご覧に入れます。」

「それで良い。総ては――。」
「輝ける未来のために。」

 …………。
 闇の向こうの声が、老人たちの声が消えた。
 闇の中には、ただ一人、男が残された。
 男……柳川祐也は今まで慇懃であった態度を崩し、嘲笑をその唇に張り付かせた。
「ふん……死にかけの爺ィどもが、未来を語るか。」
 滑稽な、賢者気取りの老人たちに対する侮蔑を隠さないまま、柳川は続ける。
「まあ、構うまい。俺が求めるのは生命の炎……より激しく、美しく燃える炎を狩ること
だけだ。爺ィどもの思惑など知ったことではない。」
 その瞳が、肉食獣の輝きを帯びる。
「……大戦か。多くの生命の炎が散る。その生命の生きた道程を過程に、儚く、壮絶に炎
が散る……。」
 柳川の瞳は前方の闇を捉えてはいない。
 彼の瞳に映るのは、もう一人の同族。
 未だ、完全に目覚めてないものの、間違いなくこの星で最強の力を持つ、気高き狩猟者
の末裔。

「柏木耕一。貴様の生命の炎は、どんな色を見せてくれるのだろうな……?」


スーパーLEAF大戦F 第3話『……さあ始めましょうか、『狩り』を。』


「敵エルクゥは主に3タイプ確認されている。」
 戦艦『イグドラシル』内、ミーティングルーム。
 長瀬がスクリーンの前に立ち、『LEAF』の面々に解説を行っていた。
「まずは最初に隆山で確認されたエルクゥ……まさに『鬼』と呼ぶに相応しい、男型のエ
ルクゥ。」

ピッ

 スクリーンに隆山で耕一が倒したエルクゥが映し出される。
 それを見た耕一の表情が僅かに歪んだ……『血の覚醒』のことを思い出したのだろう。

すっ……

 耕一の表情に気付いた千鶴が、そっと耕一の手の上に、己の手のひらを重ねる。
 耕一はこくりと頷き、元の落ち着いた表情に戻った。
「この他にも続いて出現したエルクゥ……祐介が倒したエルクゥもこのタイプだ。他にも
無論、女型のエルクゥも存在するはずだが、敵方のは、まだ存在を確認されていない。我
々は今までにこのタイプを6体殲滅してきた。」
 長瀬が柏木姉妹の方にちらっと視線を向ける。
 だが、それは一瞬のことで、すぐに視線をスクリーンに戻し、解説を続けた。
「次に……」

ピッ

 映像が変わる。
 スクリーンに映し出されたのは鬼型の獣……エルクゥ・ビーストだ。
「来栖川施設内に侵入した奴だな。大量の数が確認されている。おそらくはエルクゥの細
胞を移植された動物だと推測されるが……そこで……」
 長瀬が今度は祐介の方を見た。
 祐介は黙って頷く。
 隣の瑞穂が、びくっと震えた。
「3タイプ目。これは我々はまだ接触していないが……エルクゥ細胞を移植された人間の
存在を、祐介が確認している。それは……以前、来栖川からエルクゥに関するデーターを
盗み出した男、月島拓也に操られてる……太田香奈子、吉田由紀、桂木美和子の3人だ。」
 長瀬がそこまで話すと、瑞穂は可哀想なくらいに震え出す。
 そんな瑞穂を慰める沙織。
「彼女たちは月島拓也の超能力、通称『電波』によってエルクゥ細胞の能力を極限まで引
き出されている。多分、エルクゥ・ビーストも同じ理論で造られたのだろうな。」
「つまり……俺たちの敵はエルクゥと月島拓也ってワケね。」
 綾香の呟きに、長瀬が答える。
「そういうことですな。もっとも、エルクゥと月島との関係がどうなっているのか、それ
はまだまったくの不明。敵のいる場所もね。」
「結局……」
 浩之がジト目で長瀬を睨んだ。
「俺たちは受け手に回るしかないってことじゃねーか。この馬鹿デカイ戦艦だって、敵の
『方舟』とやらが出てこないと、まったくの用無しだしな。」
 ………………。
 来栖川の面々の額に冷や汗が浮かぶ。(除く芹香。)
「と、とにかく、新しい情報を手に入れるまでは迂闊に動けないと言うワケだ。辛い戦い
が続くだろうが……まあ、その、頑張ってくれ。以上!」
 誤魔化すようにミーティングを打ち切る長瀬を見て、一同は深いため息を吐いた。
 そう……辛い戦いが続くのだ。
 ここ2ヶ月、彼ら『LEAF』の行動と言えば……
 敵の出現。出撃。撃破。敵の出現。出撃。撃破。
 これの繰り返し。
 新しい進展は何もなく、気持ちばかりが焦る。
 特に瑠璃子、そして香奈子を助け出したい祐介と瑞穂は。
 どうしようもないのは分かっているのだが。
 焦りは苛立ちを生む。
 自室に戻った祐介は、ばんっ!と部屋を壁を叩いた。
 表情に激しい怒りと憎しみが滲み出る。
「くそ……いつまで隠れているつもりだ、月島さん! はやく出てこい……僕は貴方を滅ぼ
したくてたまらないんだ!」
 そして再び、拳で壁を叩く。
 そんな祐介の様子を、沙織は部屋の外から、複雑な表情で見守っていた。


 ……結界……
 ……次郎衛門の結界……
 ……打ち砕く鍵を……
 ……我を解き放て……
 ……そして再び……
 ……『始まりのヨーク』を……


「……また、同じ夢。」
 楓は、ここ何十回と見ている夢にまた起こされた。
 ……幼いときから何度も見ている夢ではなく、闇の向こうから何かが呼びかけてくる夢。
 暗い情念の夢だ。
 ベットから降り、適当な上着を寝間着の上からかけて、部屋から出る。
 あんな夢を見た後では、眠れないからだ。 
 ゆっくりと廊下を歩く。
 廊下を抜けると、そこはちょっとした庭になっていた。
 緑の生い茂った、くつろぎの場。
 『イグドラシル』は魔導戦艦という性質上、このような自然界のエネルギーと相性が良
く、またその大きさのため、艦の至るところにこのような庭や森がある。
 まさに世界樹の名を冠する艦に相応しい光景だ。
 楓は庭の中に足を踏み入れる。
 緑の濃い匂いが心地よかった。
 そしてしばらくの散歩を楽しんでいると
「あっ……」
 自分と同じく、夜の散歩をしゃれ込んでいた男を見つけた。
 従兄の耕一だ。
 それに気付くと同時に、どくんっ、と心臓が跳ね上がる。
 まただ。
 あの人を見ると、いつもこう。
 私はあの夢を思い出す。
 さっき見た、闇の声の夢ではない。
 幼いときから何度も見ている、あの夢を。
「楓ちゃん。」
 耕一の方も楓に気付き、近寄ってくる。
「どうしたんだい、こんな時間に? 眠れないの?」
 こくっ……。
 耕一の問いに、楓は黙って頷いた。
 それを見て、耕一が微笑む。
「実は俺もそうなんだ。何か変な夢を見てしまってさ……。」

びくっ

 『夢』という単語に、楓が反応し、身体を震わせた。
 ……それは、どんな夢ですか?
 そんな問いが浮かぶ。
 だが、それは言葉にはならなかった。
「何だかよく覚えていないけどね……なんか、闇の向こうから声が聞こえてくるような…
…そんな変な夢だったよ。」
 耕一の話の続きを聞いて、楓は一瞬、大きく落胆した。
 だが、すぐに耕一の話の意味に気付く。
 その夢は、今の自分が見ている夢だ。
「耕一さん。その夢なら……」
 楓が耕一に自分の夢の話も聞かせようとした、そのとき。

がぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんっっっっっ!!

 爆音が聞こえ、艦全体が大きく揺れ動いた。
「きゃあっ!」
「な……何だ!? 何が起きたんだ!?」

・
・
・

 スクリーンには、攻撃を受けた『イグドラシル』の映像が映し出されている。
 それを見て、リズエルは満足げに頷いた。

「……さあ始めましょうか、『狩り』を。」


                                    つづく

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 ……ええと、何も申すことはございません。
 皆様、えらくお久しぶり(泣)
 ジン・ジャザムでございます。
 まあ、その、何だ?
 期待しないで、ゆっくり待って下さい(核爆)
 いや、ちゃんと終わらせます。
 ホントだって。
 多分……(汗)


 ええい、次回予告だ!
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 突如、月面に侵攻したインベーダーは(略)

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 んなことだろーと思ったよ、俺(涙)