スーパーLEAF大戦F 投稿者: ジン・ジャザム
 彼女は『忌み子』だった。
 それは彼女の持つ力ゆえ。
 明らかに人のものではない、その超能力。
 その力は母から継いだものだった。
 ……彼女に父親はいない。
 いや、いるにはいる。
 だが、彼女の身体にはきっと父の血は流れていない。
 本当の父親は別にいるとか、そういう意味ではなくて、『彼女の身体には母親の血しか
流れていない』という意味だ。
 彼女の染色体は、人間のそれの半分しかない。
 自分は母から分けられたもの……彼女は自分のことをそう認識している。
 自分のことを一個の人間だと考えていない。
 ……元々、母から分けられたものならば、人間であるはずもない。
 何故なら、彼女の母も人間ではないからだ。
 彼女の母は異星人だ。
 エルクゥに故郷を滅ぼされた者たちの生き残り。
 母はこの地球(ほし)に流れ着き、この地球で生き、この地球の人間を愛して、この
地球で彼女を生み、この地球で死んだ。
 この地球を愛して。
 だが、自分の故郷を最期までその胸に抱いて。
 ……だから、彼女は母を意志を継ぐのが、母の分身である自分の使命だと思った。
 この地球に、母の故郷を滅ぼしたエルクゥが攻めてきたときに。
 母の愛した地球を守る。
 母の故郷を滅ぼしたエルクゥを狩る。
 自分が造られたのはそのためなのだ。
 その証拠に、彼女はそのための力を持っている。
 周囲に忌まれるほどの強い力を。
 たとえこの命を代償としてもエルクゥを滅ぼす……いやむしろ、エルクゥを焼き尽くす
ため、自分の命は燃えている。
 死ぬのは恐くない。
 命なんていらない。
 恐いのは……自分の存在価値を失うこと。
 母の想いを守れなければ、自分の造られた意味はない。
 存在するだけの……ただの肉塊。
 それは嫌だ。
 それだけは嫌だ。
 だから戦う。己の総てを賭して。
 必死に、戦う。
 だから。
 だから。
 だから!

 私を捨てないで、お母さん。
 私を独りにしないで、お母さん。


スーパーLEAF大戦F 第2話『あるよ……助ける理由。』


「………………。」 
 敵エルクゥとの戦いに傷ついた彼女を救ったのは、怪しい覆面を被った女性だった。
 彼女の手当をしたのも、この覆面女だろう。
 包帯にくるまれた、その姿は自分で見ていても痛々しいが、不思議と痛みは感じない。
 覆面女は、何処かが壊れた瞳で、ただ自分を見つめている。
 見捨てられた街の、見捨てられた家。
 壊れた窓から差し込む朝日が、二人を照らしていた。
「とりあえずお礼は言っておきます……えっと……」
「謎の覆面忍者るりるりだよ。」
 悩んでいた彼女に、覆面女――謎の覆面忍者るりるりは答えた。
 自分で『謎の』と名乗るところが、確かに謎である。
「ありがとうございます……る、るりるりさん。」
 僅かに冷や汗を流しながらも、るりるりに礼を言う。
 それに、るりるりは、覆面の上からでもはっきりと分かる笑顔を浮かべた。
「貴女は……?」
 今度はるりるりが尋ねてくる。
「えっ……?」
「貴女の名前。」
「あっ……琴音、姫川琴音です。」
「そう……琴音ちゃん、よろしくね。」
 にこり。
 また、あの笑顔。
 琴音はそんな、るりるりに戸惑った。
「あの……るりるりさん。何故、私を助けたんです?」
 疑問。
 そうだ。自分は忌み子。
 自分は人から疎まれることはあっても、助けられたり、愛されたりするはずがない。
「何かおかしい?」
 るりるりは、さらりとそう言った。
 考えれば、当たり前のことだ。傷つき倒れた人間を助けることなど。
 だが琴音にとって、それは当たり前ではない。
 彼女は異様なまでに、自分を卑下している。
「貴女には、私を助ける理由がありません。」
 そんなことを言う。
 悲しすぎる台詞。
 しかし、るりるりは笑顔を絶やすことなく、再び、さらりと、事も無げに、こう答えた。
「あるよ……助ける理由。」
「……えっ?」
「おんなじ。貴女、おんなじ。貴女も、長瀬ちゃんも、私もおんなじ。心の中で泣いてい
ることも、世界から消えちゃいそうなことも、誰かに助けを求めていることも、みんな、
おんなじ。だから、私……助けてあげようと思った。」
 朝の風が、二人の頬を薙いだ。
 優しく。
 優しく。
 るりるりの言葉と同じように、
 優しく。


「弾空咆!!!!」
 雅史の叫びと共に、闘覇斗が気弾を吐き出す。
 気弾は獣の咆哮にも似た轟音をあげながら、敵――エルクゥに命中、爆発する。
「闘覇刀!!!!」
 間髪入れず、浩之が剣を振り下ろすアクションをとる。それに従い、闘覇斗もまったく
同じモーションで刀を振り下ろした。
 刀が空を裂き、エルクゥに容赦ない一撃を加える。
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 エルクゥの断末魔。
 闘覇刀の圧倒的な力は、エルクゥを両断、そのまま存在を無に還す。
 光が迸り、エルクゥはその光の中へと砕けていった。
 ……LEAF結成より、約2ヶ月。
 敵の動きは活発化していた。
 LEAFはこれまで、5体のエルクゥと、数十体のエルクゥ・ビーストを倒している。
 そしてこれが、6体目。
 『方舟』から降りてきたエルクゥを、LEAFは街の郊外で迎撃した。
 まず、柏木家とセリオが敵を攻撃しつつ、誘導。
 その先に待ち受けていた浩之たちが、それを撃破した。
 浩之が膝を突くと同時に、御霊の結束が解け、闘覇斗はそれぞれの獣の姿に戻った。
「くっ……みんな、大丈夫か?」
 浩之が片膝を突いたままの姿勢で、あかりたちに声をかける。
「はあ……はあ……なんとかね……」
 そう言う志保の、呼吸は荒い。
 闘覇斗を召喚しているとき、4人の意識はシンクロしている。
 一人が見たもの、感じたものは、4人共通の情報になる。
 闘覇斗はその莫大な情報量にまとめ、超常的な反応力によってそれに応える。
 結束された4つの意識……それが闘覇斗の強さなのだ。
 だが、それと同時に、その最強の獣王を制御する浩之たちの負担も大きい。
 闘覇斗を操る間に、4人の体力は急速に失われていくのだ。
 それがエルクゥを凌駕する闘覇斗の唯一の弱点だった。
「あかりちゃん、大丈夫?」
 雅史が、あかりに向かって尋ねる。
「ん……大丈夫。ありがとう、雅史ちゃん。」
 あかりはいつもの気弱そうな笑顔で答えた。しかし、その笑顔がすぐに曇る。
「? どうした、あかり?」
「え……ううん、なんでもないよ。」
 誤魔化すあかりに、浩之は怪訝そうな表情をしたが深くは追求しなかった。
 そこにちょうど、小型無線機からバックアップの瑞穂の声が流れてきた。
『お疲れ様です、皆さん。では迎えにいきますので、イグドラシルに帰還して下さい。』
「了〜解〜」
 おどけた風に答える浩之。
「よし……じゃ、帰るとするか?」
 促す浩之に、雅史たちはイグドラシルとの合流場所に向かって歩き出す。
 先を進む浩之たちの後に付いていきながら、あかりは一度だけ後ろを振り返った。
 そして、先程エルクゥを倒した辺りに目を向ける。

「……ごめんね。」

 あかりの言葉は風に溶け、浩之たちの耳に届くことはなかった。


 ――『方舟』中枢部。
 そこに4人の女が集っていた。
 無論、ただの女ではない。女のエルクゥだ。
「へえ……これで6人目。この星の連中もなかなかやるじゃないか。」
 女の内の一人……エルクゥ独特の鎧を身に纏った、女戦士が感嘆した風に残りの3人に
語りかける。その表情には僅かな喜びが見て窺えた。
「……今の4人といい、この前の戦艦といい……この星の民を甘く見ていましたね。」
 静かな瞳の女が、静かな口調で答える。
 その表情は、女戦士とは対照的に冷めている。
「それほどの意味がこの星にはあるのです。我々に課せられた使命の重み、忘れてはいけ
ませんよ。」
 今度は長い黒髪の女が答える。
 ――リズエル。
 琴音と戦ったエルクゥの前に姿を現した、エルクゥたちの巫女だ。
 リズエルの台詞に、女戦士がわざとらしく溜め息を吐いた。
「やれやれ……またリズ姉の小言が始まったよ。これだから年寄りは……」
「アズエル……死にたい?」
 リズエルの剣幕に思わず怯む女戦士――アズエル。
 どうやら、彼女たちのヒエラルスキーの頂点に立つのはリズエルらしい。
 アズエル以外の2人も、冷や汗を流している。
「で、でも分からないことだらけだね……あのエルクゥを持つ獣といい……」
 最後の一人……到底、エルクゥには見えないほどの優しげな表情を浮かべた女が、話題
を逸らすべく口を開く。
 彼女の台詞で、リズエルは視線をアズエルから戻した。
 アズエルが安堵に胸を撫で下ろす。
「あの獣については、例の彼女も知らなかったわ。おそらくはエルクゥの細胞を移植され
たと思うけど……」
「ちっ……気高きエルクゥの血を下等動物なんぞに……!」
 アズエルが不愉快そうに毒突いた。
「とにかく我々がまず成さねばならないこと、それはこの星に落ちた『始まりのヨーク』
の覚醒。そして我々を呼ぶ声……かつての王ダリエリを見つけ出すこと。」
「……そのためには、敵に組みするエルクゥたちを調べることが一番の近道ね。」
「……っていうことはつまり……」
 嬉しそうに身を乗り出してくるアズエル。
 リズエルが頷いた。
「そういうことです。……アズエル。」
「応!」
 女戦士が答える。
「エディフェル。」
「……はい。」
 静かな瞳の女が答える。
「リネット。」
「うん……。」
 穏やかな表情の女が答える。
 全員の返事を確認した後、リズエルは厳かに宣言した。

「いいですね……敵に対する本格的な攻撃を開始します。」

                                    つづく

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 初めまして、皆さん!!!!
 SS初投稿の新人、ジン・ジャザムでっす!!!!
 ………………。

 全然、洒落になってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!(走召木亥火暴)

 だいたい、何処の世界に第2話から初投稿する人間がいますか、俺?
 ……と、いうわけで長らくお待たせしました。
 存在を忘れられているどころか、存在自体知らない人もいるでしょう(爆)『スーパー
LEAF大戦F』、略して『スパリフF』の第2話、ようやく完成ですぅぅぅぅぅ!(汗)
 ……ほぼ2ヶ月ぶりじゃないか、俺?
 それだけたって、まだ第2話か、俺?
 ここまで来ると、やっぱりタイトルの『F』が悪いと信じたくなるぞ、俺(←また名前の
せいにする奴)
 まあ、相変わらず『スパリフ』というワリには、パロディ無いですけど(爆)それは大人
の事情ということで(←嘘です)

 前回第1話の謎の人物、正体は琴音ちゃんでした〜(実はバレバレ?)
 琴音=宇宙人……一部の方々にはニヤッとする設定ですね(笑)
 『卵』は出てこないので安心して下さい(爆)
 でも、そうすると前回の女エルクゥの正体は……(にたり)というワケです。
 いや、本当は琴音はともかく、女エルクゥの方は前々から考えていたんですけどね。
 ……分からない人にはまったく分からないネタですいません。

 え〜、この『スパリフ』、かなり長期の連載なので、内容が分からない人には、ちっとも
分からないと思います。
 そういう方々は、下のアドレス、『りーふ図書館』に『スパリフ』の過去ログがあります
ので呼んで貰えると幸いです、はい。(まさた館長、さんくすっ!)

 今後のペースは保証できませんが……ちゃんと定期的に続きをアップしたいと思います。
 ですから見捨てないで下さいね☆(偽善チックな微笑み)
 とにかくラストは徹底的に盛り上げるつもりですから……(って、いつの話になることやら)


 さぁぁぁぁぁて、次回のスパリフは!?

 ……多分、LEAF対エルクゥの戦いが始まります(多分って何じゃいっ)
 リズエルたち4エルクゥに苦戦するLEAFたち、その命運は……ってな感じかな?(おひ)

 というワケで次回・第3話『タイトルはいつも未定(核爆)』

 次回もこのチャンネルに……レッツ! コンバイン!!

http://www.asahi-net.or.jp/~iz7m-ymd/leaf/masata.htm