スーパーLEAF大戦・第11話 投稿者:ジン・ジャザム
「……答えろ……この男に見覚えはないか……?」

 祐介は再び問う。
 だが『この男』とはどの男だ?
 祐介は『この男』の写真を見せるわけでもない。
 『この男』の容姿を説明するわけでもない。
 ただ問うだけ。
 だが
 それでも鬼には『この男』のことが手に取るように分かった。
 『この男』。
 年頃は17〜18歳くらい。
 背は高く、体つきもしっかりしている。
 美形と呼べるその相貌には穏和な笑みが浮んでいる。
 ……鬼の知らない男だ。
 でも、知っている。
 何故?
(コレハ……えるくぅノ精神干渉!?)
 鬼は祐介の持つ情報が、自分の脳に流れ込んでいることに気が付いた。
 それは鬼にとって珍しいことではない。
 鬼同士では意識を共有することがある。
 事実、彼はこの惑星に棲む同族の意識に呼ばれて、星の海を渡ってきたのだから。
 ならばこの目の前の少年が、自分たちを呼んだ同族なのか?
(……イヤ、違ウ。コイツカラハ同族ノ力ヲ感ジナイ……ナラバ、コレハ一体!)
 鬼は完全に混乱した。
 そんな鬼をしばらく黙って見つめていた祐介だったが、やがて
「……ふぅ」
 短いため息を吐いた。
(……外れか。なら……)
 そして、祐介の瞳に危険な光がともる。
(用はない。)

「ぐぎゃるるるるるるるるるるうううううううううううううううううううががががががが
ががががががああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ふううううううぐぬんんんんんんんんるるるるるるるるるるるるるるああああああ!!!!!!」

 次の瞬間、鬼が断末魔をあげた。


スーパーLEAF大戦 第11話『狂気ノ始マリ』


「何が起こったの……?」
 千鶴がモニターの向こうで起きたことを理解できず、呆然としていた。
 突然鬼が苦しみ始め、悲鳴が治まると同時に地面に倒れた。
 その間、祐介は微動だにしていない。
 まったくもって理解不能な光景だった。
 呆然とする千鶴に気付かれないように、柳川が長瀬にそっと耳打ちした。
(主任……彼は……)
(ああ……私の甥だ。あの事件以来、姿をくらませていたが……とにかく助かった。今マル
チやセリオを失うわけにはいかない。)
(それに彼がここに現れたということは……)
(ああ、やはり奴の目的は鬼か……。)
 話を打ち消すように、長瀬が叫んだ。
「よし……敵の沈黙を確認した! マルチとセリオを回収するぞ! それと医療班は藤田君の
救助を頼む!」
 途端、慌ただしく動き出すスタッフたち。
「……ということで、柏木さん。今日のところは引き上げさせてもらいます。迷惑をおかけ
しました。」
「いえ……。」
 そう答えながらも、千鶴の表情は険しい。
 先程の長瀬たちの様子を見逃していなかったのだ。
(何を企んでいるの……来栖川は……?)
 地球防衛の戦い。
 だがその裏では、得体の知れぬ何かが蠢いているようだった。


「祐く〜ん!」
 祐介のもとにロングヘアの活発そうな少女が駆けつけてきた。
「沙織ちゃん……」
「大丈夫、祐くん?……鬼は……」
 そう言って少女――祐介のパートナーである新城沙織は、倒れている鬼に視線を向けた。
「もう動かないよ……電波で精神を破壊したからね……。」
 それだけ答えると祐介は沙織に背を向けて歩き出した。
「ちょっ!……ちょっと祐くん! この人たちは!? 大怪我しているんだよ!」
「……僕の知ったことじゃないね。」
「そ、そんな……!」
「僕の使命はただひとつ。月島さんを見つけ出し、この手で……」
 祐介が振り返る。
「殺すことだ。」
 ……まただ。
 また、あの瞳だ。
 怒りが憎しみが悲しみが狂気が渦巻き、溢れ出す瞳。
 コールタールのようにぎらぎらと輝く闇。
 沙織は祐介のそんな瞳に魅了されていた。
「…………祐くん……。」
 呆然とする沙織を無視して、再び歩き出す祐介。
 ……祐介の瞳。
 その理由……月島拓也。
 先程、鬼が心の中で見た男。
 もうひとつの理由……月島瑠璃子。
 その月島拓也の妹。
 それは鬼の襲来より一ヶ月前の出来事だった。

 
「長瀬ちゃんも……私とおんなじだよね?」
「えっ?」
 学校の屋上。
 瑠璃子が祐介をじぃ……っと見つめていた。
 精神の壊れた者の瞳。
 狂気の扉を開いた者の瞳。
 祐介はそう感じた。
「長瀬ちゃんもできるんでしょ? 電波の受信。」
 最初は何のことだか分からなかった。
 話したこともなかった、かつてのクラスメイト。
 彼女が見せた狂気。
 そして電波。
 だが、謎はすぐに解けた。

 始まりは、太田香奈子の発狂だった。
 淫猥な言葉を口にしながら、自らの顔を爪で引き裂いた女生徒。
 そして彼女を狂わせたのが月島拓也だった。
 そのことを知ってしまった祐介は月島に殺されかける。
 『電波』の力で。
 祐介の危機を救ったのは瑠璃子だった。
 そして祐介は瑠璃子から全てを知らされる。
 電波についてを。
 電波とは、人の精神を自由に操ることができる力のことだった。
 太田香奈子を狂わせたのも電波の力である。
 そして月島は電波で総てを壊そうとしていた。
 自分を否定する、くだらない世界を。
 ……だが、電波の力は祐介の中にも眠っていた。
 瑠璃子はそれに気付いていたのだ。
 だから
 祐介から電波の力を引き出した。
 兄の暴走を止めさせるために。
 祐介は瑠璃子と愛し合うことで、電波の力に目覚めた。
 そしてそれと同時に、瑠璃子の狂気の理由をも知った。
 瑠璃子は、実の兄に陵辱されたのだ。
 ゆえに月島も電波の力に目覚めたのだ。
 そのことに気付いた祐介は、月島との戦いに赴(おもむ)いた。

 ……祐介は敗れた。
 月島の電波の方が強かったのだ。
 身動きひとつできなかった。
 ……目の前で瑠璃子がさらわれようとしているのに。

「……さあ、逝こう瑠璃子。レザムからの使者がやってくる……破滅の刻が訪れる……
僕たち2人だけの世界が誕生するんだ……瑠璃子……。」

 月島の声がやけに遠くから聞こえていた。

「瑠璃子。愛している。瑠璃子。愛している。瑠璃子。愛している。瑠璃子。愛している。
ルリコ。アイシテイル。ルリコ。アイシテイル。ルリコ。アイシテイル。ルリコ。アイシテ
イルルリコアイシテイルルリコアイシテイルルリコアイシテイルルリコアイシテイル……」

 壊れた機械ような声が。


「……月島さん……!」
 どろり。
 祐介の闇が濃度を上げた。
 あれから月島を追い続け、ようやく鬼と月島との関わりにまでこぎ着けた。
 鬼を追えば、月島に会える。
 そして今度こそ……

「瑠璃子さん……助けてあげるよ。瑠璃子さんを苦しめる月島さんを打ち砕いて、すべての
悲しみから救ってあげる……。」

 愛ゆえに狂うこと。
 それは人の業ゆえか。
 ……分からない。
 唯一、分かること。
 それは、運命はいつも残酷であること。
 ただ、それだけ。
 
                                    つづく

………………………………………………………………………………………………………………

 だから試験勉強しましょう!>俺

 しかも今回、説明ばかり。
 つまらない。
 ……ごめんなさい。

 さて、ようやく雫編。よく見たらパロなし(縛……じゃなくて爆)
「マルチたちはどうしたぁ!」等のご意見には
「痕編と同じく、演出上の都合です。」とお答えします。
 くどいですがマルチは死んでません。
 ご安心をば。
 そろそろエルクゥのほう、コトの真相(?)に話が関わってきそうです。
 ……設定、ちゃんとまとめとかなくちゃ(←今までノリかいっ!)
 それにしても話がダークな方に流れて困ります。
 そろそろギャグを入れたい。ネタも一応あるし。
 話もだんだん長くなるし。
 ホントにあと何話で終わるんだ、コレ?
 ……まあ、20話は間違いないから……はぅ(失神)
 20話でも確信に近付いてなさそうだぞ!
 このまま50話とか行くんじゃねぇか!?
 みんな、話忘れちまうわい!
 ……対策を練らねばな……。

と言うわけでレスです。


>久々野さま
 「♂♀☆◎〒¥$%£∞▼◇@*!??!!!!(大爆笑!)」
 ……いやあ! やられ役じゃないですよね、マルチは!(爆笑)
 謝る必要はないでしょう。彼もデンパマンに出演できて光栄のはず!
 なあ、男子生徒A!(まだ爆笑)
 以上、男子生徒Aの悪友、ジン・ジャザムでしたっ!(結局、爆笑)

>FOOLさま
 前回からの疑問。
 ……なぜクラゲ(笑)
 千鶴さんが京なら耕一は真吾でイけますな。
「千鶴さん、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁいっ!」
って。うむ、けっこうハマっている(笑)

>青紫さま
 はう! リアルタイムで青紫さまの小説を見るのは初めてです。
 自己紹介。
 ジン・ジャザムと申します。
 新キャラも登場していて、今後の展開が楽しみです。
 今後ともどもよろしくお願いします。
 (はう……俺にしては普通の挨拶っ)

>NOGODさま
 何か納得してしまった(笑)
 ホントのところ、いつから居たんでしょう、千鶴さんってば(笑)

>ゆきさま
 俺も心底、鬼畜なダークは好みじゃありません。
 人の心に訴える何かがあってこそのダークだと思っております。
「光は闇の中にこそあれ」……これが俺の求めるダークです。
 そういった意味で、俺もゆきさまと同じだと思います、ハイ。
 ……我が作品を愛して下さって嬉しい限り。
 マルチは酷い目に遭いましたが(汗)、勿論あれで終わらせるつもりはありません。
 彼女にはもっと輝いてもらわないと。
 でも……悲劇はやってくるかも知れない(爆)←所詮は俺(ダーク)
 「歪んだ愛」……またまた俺好みの作品を(笑)

>ARMさま
 「マルマイマー」……あいかわらず、凄いクオリティです。
 読んでいて、熱いモノがこみ上げてきます。熱血ロボットファンの俺としては(笑)
 しかも少し泣いてしまった(←涙腺は脆いです俺)
 ……「ガガガ」の方はもうすぐ終わってしまう〜っ
 何か話が急展開でしたがソルダートJがカッコよかったのでOK(笑)


 さあて、前回は忘れていた(爆)次回予告だぁぁぁぁぁぁ!

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 ……病院の一室。
 鬼によって、瀕死の重傷を負った浩之の部屋だ。

 『面会謝絶』

 扉には、そう書かれた札が掛けてあった。
 なのに
 部屋の中には浩之以外の人影がある。
 回診の医者や看護婦ではない。
 ……雅史だ。
 雅史はベットの前に立ち、浩之を見下ろしている。
 顔は俯いている。
 前髪に顔が隠れ、その表情はよく分からない。
 ただ、泣いている子供のように見えなくもなかった。
 雅史が、いまだ昏睡状態の浩之に話しかける。
「……浩之……助けてよ……あかりちゃんも志保も、みんな怖いんだ……助けてよ、浩之。」
 雅史が浩之の肩を揺さぶる。
 だが、浩之は目覚めない。
 雅史の、浩之を揺さぶる力が徐々に強くなっていった。
「浩之……起きてよ……いつもみたいに僕を馬鹿にしてよ……ねぇ、浩之……目を覚ましてよ
……浩之……浩之……浩之……浩之!浩之!浩之!浩之!浩之!……ひろゆきぃぃ!!!!!!!!!!」
 ベットが、点滴が激しく揺れる。
 点滴の芯が、心電図の管が浩之の身体からはがされていく。
「はっ!!!!!!!!!!」
 雅史の手が止まった。
 気が付けば、浩之の寝間着がはだけ、素肌が露出していた。

ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ……

 管が外れたために、心電図は直線のまま何の変化も示さない。
 甲高い機械音が病室に鳴り響いていた。
 それに負けじと鳴き続ける、外の蝉。
 五月蠅い静寂が訪れた。
 しかし、それも束の間のこと。

「はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……」

 荒い息づかい。
 陽に照らされる病室。
 浩之の、衰弱しているが、美しい肢体。

「はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……」

 病室の扉。
 相変わらずの『面会謝絶』の札。
 扉の鍵は『CLOSE』

「はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……うっ!!!!!!」

 ……頂上に辿り着いた。
 雅史の掌を、今、吐き出されたばかりの白い液体が汚す。
 雅史はしばらく自分の汚れた掌を見つめた。
 酷く、自らを蔑む目で。

「俺って……最低だ。」

 その呟きは、やけに強く雅史の中で響き渡った。


次回・第12話 『Air』(嘘)

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 ふっ……。
 さっきから嫌な気配、感じているよ。
 ベ○リット、血の涙流しながら「死にたくない!」って叫んでるし。
 ……ってコトはアレかい? 薔薇ネタの「業」ってやつかい?
 ……くくくくくくっ……おもしろい!
 これでも俺はシャッフルの紋章と、獅子の絆Gストーンを持つ男!
 ただでは死なん! いくぞ!
 戦いに巻き込まれて死ぬ奴が悪ィんだよ!
 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 自ら戦場に身を投じるジン・ジャザム。
 空間に飲み込まれ、その姿は消えてしまう。
 果たして奴の運命やいかに!?

「助けてぇぇぇぇ! ガ○ビーノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

 悲痛な叫びは聞こえなかったことにしよう!
 じゃあ、次回もこのチャンネルに……カァァァァム・ヒアアァァァァ!

(銀貨3枚握りしめて泣いている誰かが一瞬見えるが、無視してフィールドアウト。)