スパリフ大戦・第七話 投稿者:ジン・ジャザム


「……で、隆山の街は半壊したそうよ。怖いわね〜」
 ショートヘアの少女、長岡志保の話はいつの間にか森川由綺から、隆山の話題に変わっていた。
 志保の話を聞いているのは浩之と、先程2人の仲介に立った女生徒、神岸あかり。そし
ていつの間にやら話の輪に加わっている少し童顔の男子生徒、佐藤雅史だった。
 4人は中学校以来の親友同士である。もともと志保を抜かした3人が幼なじみ同士で、
中学に上がるとそれに志保が加わった。浩之と志保が口げんかを始めれば、あかりと雅史
がそれをなだめる……何だかんだ言って、なかなか息の合っている4人であり、本人たちもまた、
そんな自分たちの関係を気に入っている。
「『鬼』ねぇ〜……何か、にわかに信じられねー話だよな……。」
 志保の話を聞いた浩之が、そう愚痴る。
 それも無理はない。
 志保の話。それは、つい2、3日前起きた隆山半壊の事件……これが一匹の鬼によって
引き起こされた、という内容だった。
「でも目撃者もいるって話よ? 直前に起きた隕石の落下、非常事態宣言の発令、そして
鬼……何か、大きな事件が起こりそうな予感がしない!?」
 ……隆山の事件は箝口令が引かれ、一般にその全容は知られてはいない。
 しかし情報など、どこからでも漏れるものである。ましてや、あのような特異な事件で
あればなおさらである。
 たちまちこの事件は色々な形で広がり、『鬼』の存在は公然の秘密となった。
 地元隆山では、伝承にある『雨月山の鬼』が甦った……と、ちょっとした騒ぎになって
いるくらいである。
「……俺は大事件に巻き込まれるよりは、平和に昼寝でもしていたいぜ。」
「あんた、何、ジジ臭いこと言ってんのよ! あんたには夢の一つも無いワケ!?」
「おめぇみたいに夢ばっかりで、向こう側にイッちまってるよりはマシだっ!」
「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 またいつものように始まる口げんか。
 そしてそれを呆れ顔で止めるあかりと雅史。
 それが最後の日常だった。


スーパーLEAF大戦 第7話『ORGE』


ウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー

 1時間目の授業中だった。
 突然のサイレンに、うとうとしていた浩之は目を覚まされた。
「な、なんだぁ?」
 続けて流れる放送。

「ただいま、この地区に特別非常事態宣言が発令されました。住民の皆様は速やかに指定の
シェルターに避難して下さい。繰り返します……」

 教室が騒然となった。
「非常事態だって!?」
「もしかして隆山でも起きたアレか!?」
「……っていうことは噂の『鬼』!?」
「ええーっ、ウッソ〜!」
 騒ぐ生徒たちを教師が落ち着かせる。そしてシェルターへの移動が開始された。
「浩之ちゃん……。」
 移動中、あかりが不安そうな表情で浩之に語りかけた。
「……んなツラすんなって。隆山でも死者は出てないんだろ? そんなに心配するコトじゃねえって。」
 そう言ってあかりを元気つける浩之。
 しかし平静を装ったものの、浩之自身、妙な胸騒ぎを感じていた。

 ……何か、大きな事件が起こりそうな予感がしない!?

 志保の台詞を思い出す。
「……ったく不吉なこと言いやがってっ」
 浩之はあかりに気付かれないように、こっそりと舌打ちした。


「……というわけで、即、鬼の迎撃に向かって欲しい。」
 通信機から長瀬の声が聞こえる。
「あそこにマルチがいるのは知っていると思うが……彼女の『バスターモード』はまだ未完成だ。
とても敵と戦えるような状態じゃない。頼んだぞ……。」
 長瀬の命を受け、彼女は頷く。
「任務了解。これより目標……鬼を破壊します。」
 彼女の瞳に電子の光が走る。
 背中に搭載したバーニアが火を噴き、彼女は天へと羽ばたいた。
 ……彼女。
 同じ名をもつ、全ての来栖川製戦闘ロボとメイドロボの雛形。
 そして、それらの中にあって未だ最高の性能を保有するもの。
 そう。
 HMX13型セリオ・プロトタイプ。


「浩之さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
 混乱しながらもシェルターへ向かう生徒たちを押しのけながら、マルチ――セリオと同時期
に開発された、メイドロボの試作機である――は浩之の側に近付いた。
「おおっ、マルチか。」
「はいっ……浩之さん、いったい何が起きているんでしょうか?」
 不安そうな声でマルチが訊ねる。
「さあな……話には、隆山で起きた例のヤツと関係があるじゃないか、ってコトだけどな……。」
「……隆山の……『おに』さんのお話ですか?」
「『おに』さんって……まあ、鬼のコトはあくまで噂だけどよ。」
「………………。」
 急にマルチは黙ってしまった。
「?……どうしたマルチ?」
 変に思った浩之が訊ねる。
 マルチはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと重い口を開いた。
「……浩之さん、私、前に長瀬主任から言われたことがあるんです……。」
「えっ?」
「『マルチ、いつの日かお前が必要とされるときが来る』」
「へぇ?」
「『お前の力が世界に必要とされるときが来る。優しいお前が戦いに身を投じなければならない
ときが来る』……って……。」
「………………。」
 しばらく呆気にとられていた浩之だったが、やがて苦笑した。
「おいおい、そりゃ何の冗談だよ? マルチが戦う日が来るって?……マルチは普通の女の子だろ?
戦うコトなんて出来るわけな……。」

どぐおおおおおおおおんっ!

 浩之の台詞は爆音に打ち消された。
 突然、目の前の壁が砕け、瓦礫が四散する!
 生徒たちが悲鳴をあげた。
 そして土煙の中、佇む影がひとつ。
 それは人の倍近くあった。
「な……何だ……って、いいいいいいいっ!」
 『鬼』。
 そう、まさしく『鬼』だった。
 肉食獣の瞳が、獲物を見定めるようにギョロギョロと動く。
 浩之と目があった。
「ぐるう……ぐるお……ぐるうおああああああああああああああああああああああああああああ!」
 咆哮。
 そして『鬼』は浩之に飛びかかった!
「!」
「浩之さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 マルチの絶叫が響き渡った。

                                         つづく

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 束の間の復活。
 お久しぶり、そして少々遅いですが、明けましておめでとうございます。
 ジン・ジャザムです。
 ……って、この原稿書いているのは12/28なんだよな(爆)
 そろそろ年賀状書けよ俺(汗)
 あとレポートと試験勉強もな。
 某館の456やってる場合ぢゃねぇ(自爆)

 さて、次回予告です。

 戦場に駆けつけたセリオ!
 しかし、セリオの攻撃は鬼にまったく通じません。
 傷つくセリオ。
 そしてマルチを庇い、倒れる浩之。
 それを見たマルチの中で、何かが目覚めます!
 次回・第8話『MARUTIBUSTER』
 
 絶対見て下さいっ!

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追伸 今回のお話はセリス君宅から皆様にお届けしていると思います。
   セリス君、『自宅からインターネット』実現、おめでとう。
   あと俺のために、ここのコーナーの全小説、落としておいてくれ(爆)
   ……というわけで皆様、俺が直接ここを覗いているわけではないので、レスはできません。
   ごめんなさい。クリスマス小説の感想でも書こうとしたけどさすがに時期外れだし。
   
   応援して下さっている皆様、ありがとう!

追伸2 書くの忘れていたけど、俺も12/27をもって誕生日を迎えました。
    おめでとう、俺。
    そろそろ歳はとりたくないぞ俺。
    そんなことより勉強しろ俺。