スパリフ大戦・第八話 投稿者:ジン・ジャザム


ぐおおおおおおおおおおおがしゃああああああああああああああああああああああああ!

 鬼の爪が浩之に触れる、まさにその瞬間!
 セリオの突撃が鬼を吹き飛ばした。
 鬼は教室の壁を突き抜け、窓を割り、外へと放り出される。
 それをセリオが追う。
「あれは……セリオか?」
 呆けていた浩之が、やっとのことで口を開く。
 その場にいた生徒たちは完全に混乱し、滅茶苦茶に逃げ回る。
 混乱の中でマルチは鬼とセリオの飛んでいった方角を見つめていた。
 そして
「セリオさんっ!」
 そう叫んだかと思うと、突然、駆け出した。
「お、おいマルチ! どこに行くつもりだ!? 戻れ!」
 浩之もマルチの後を追う。
 人智を超える戦いが始まろうとしていた。


スーパーLEAF大戦 第8話『MARUTIBUSTER』


バァシュンッ! バァシュンッ! バァシュンッ! バァシュンッ! バァシュンッ!

 鬼とセリオの戦いは、浩之たちの学校に続く坂道の上で行われた。
 セリオが宙を飛びながら、ビームライフルで攻撃する。
 それらの全てを鬼は片腕で弾く。
 無論、セリオは隆山での鬼のデータをインプットしてある。
 こんな攻撃が通用するとは思っていない。
 ビームライフルはただの牽制である。
 ……狙うはバスターライフルによる一撃。
 バスターライフル。
 衛星からマイクロウェーブを受け取り、攻撃するサテライト・キャノンほどの威力は
ないが、汎用性と威力、そして重量のバランスから最強レベルの兵器として名高い。
 これの直撃を受ければ、いかに鬼とて無事にはすまないだろう。
 その必殺の一撃を決めるチャンスをセリオは狙う。
 外れれば、おそらく次は……ない。
「ぐおおおあ!」
 鬼が飛翔する。
「!」
 鬼は振り下ろす腕の風圧で、セリオのバーニアを破壊した。
 落下するセリオ。
 空中で体勢を立て直し、着地する。
 そこに、既に着地した鬼の爪が迫った。
 ヂャキッ!
 セリオはビームライフルを捨て、腕に内蔵したブレードでそれを防ぐ。
 そして耳飾りからのバルカン掃射。
 怯む鬼との距離を保つ。
「………………。」
「ぐるるるるるるる……。」
 セリオと鬼との間に緊張が走った。
「セリオさぁぁぁぁん!」
 その場にマルチと浩之が辿り着いた。
「マルチさん、浩之さん……危険です、下がって下さい。」
「でも……でも!」
「馬鹿! マルチ、下がれ!」
 この隙をつき、鬼が駆け出した!
 セリオは落ち着いて、標準を鬼にセットする。
 右手に持ったバスターライフルを構える。
 標準が合う。
 引き金をひく。

ふおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああぃぃぃんんん!

 白い閃光が炸裂した。


「敵は……!」
 セリオの戦いを見守っていた長瀬が叫ぶ。
 画面を包む閃光が徐々にひいていった。
「!……なんてこった……。」
 長瀬の表情が曇った。
 閃光の向こう、直立する鬼の影を見つけたからだ。
(やっぱり……あの程度なら闘気の壁で散らすことができる……やはり鬼を倒せるのは
同じ、鬼だけね……。)
 千鶴は、この結果を知っていたかのような瞳で画面を見つめていた。
 そして、何故か柳川も、千鶴と同じ瞳で画面を見つめていた……。


「!」
 鬼は一瞬にしてセリオとの間合いを詰め、腕を振り下ろした。

ばぎゃあんっ

 セリオの右腕とバスターライフルが砕け散った。
 さらに

ひゅおお……ジギィィィィ……ブアグアァァァァン!

 鬼の爪がセリオの腹部を貫く。
「セリオさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
「セリオォォォォ!」
 セリオはそのまま地面に膝を突いた。
 セリオの身体を紫電が走る。
(……破損率70%をオーバー……これ以上の戦闘続行は不可能……私の任務……目標
の破壊……マルチさんの絶対防衛……これらの状況により導かれる最善の戦術……)
 セリオが立ち上がった。
 目の前には鬼が立っている。
 セリオの瞳が光った。
「任務を……遂行します!」
 刹那、セリオのエネルギー炉が急激に加熱していく。
 セリオがやろうとしていることにマルチは気付いた。
「……まさか! 止めて下さい、セリオさんっっっっっ!」
 しかしマルチの声はセリオに届かなかった。

ぐおおおおおああああああああああああああああああぶおおおおおおおおおおおお……
どぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんんんんんん!

 爆風がセリオと浩之を吹き飛ばす。
「くわあああ!っと……何が起こったんだ?」
「セ、セリオさぁぁぁぁん……」
 マルチの顔は涙で濡れていた。
 爆発がおさまる。
 そこには……上半身だけ残った、無惨なセリオの残骸があった。
「自爆……。」
 そう。
 それがセリオの導き出した最善の戦術。
 しかし、それはあくまで『セリオが出来うる』最善の戦術でしかなかった。
「なっ……!」
 あの爆発に巻き込まれながらも鬼は生きていた。
 さすがに身体の半分に火傷を負っている。
 しかし、

ぶくぶくぶくぶく……

 火傷は一瞬で再生した。
 セリオの残骸には目もくれず、鬼は浩之とマルチのほうを振り向く。
「ひっ!」
 鬼はじっと浩之たちを見つめる。
 そして口を開いた。
「エル……クゥ……レザム……デ…………」
「……何?……言葉……か?」
「……えるくぅ……コノ星……呼ンダ……ドウゾク……ドコニイル……」
「!」
 それは驚くべきことに、この国の言葉であった。
「エルクゥ?……ドウゾク……ドウ族……同族!? な、何のことだ!」
 浩之が叫んだ。
 しかし、鬼は答えない。
「ぐるるる……ぐる……ぐああああああああああああああああああああああああああ!」
 突然、雄叫びをあげると浩之とマルチに爪を振り下ろしてきた!
「きゃああああああああああああああああああああ!」
「危ねぇ! マルチィィィ!」

ざしゅ……!

 迸る『赤』。
「かっ……!」
「ひ、ひろゆきさん?」
 マルチを庇った浩之の脇腹がえぐれていた。
 血に染まった肋骨が覗ける。
「マ……マル……チ……逃げ……ろ……!」
 がくっ
 そう言うと浩之は力を失い、倒れた。
 脇腹から止まることなく血が吹き出ていた。
「浩之さん!」
 慌てて、マルチは浩之を抱きかかえた。
 マルチの身体が、血で真っ赤に染まる。
「浩之さん!……浩之さん! 浩之さん! 浩之さん! 浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん
浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん浩之さん浩之さんっ
……浩之さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
 マルチは泣きじゃくりながら、浩之の名を呼ぶ。
 それを愉快そうに鬼が見下ろしていた。
「ああ……!」
 マルチが恐怖に竦む。
 涙が、溢れ出る。
(私、死んじゃうのかなぁ?……私、弱いから……役立たずだから……泣いてばかりだから
……浩之さんも、セリオさんも守れなくて、死んじゃうのかなぁ……?)
 マルチは泣く。
 死への恐怖ではない。
 『失うこと』への恐怖。
 大切な人を守ることの出来ない悲しさ。
 自分への怒り。
 色々な感情が混ざり合って、マルチはただただ泣いた。
(セリオさん……)
 セリオ。
 毎日の下校。
 一緒にバスを待つ。
 落ち込む自分をいつも慰めてくれる、
 そんな無表情だけど、優しい
 セリオ。
(浩之さん……)
 浩之。
 いつもの笑顔。
 一緒で楽しいお掃除。
 エアホッケー。
 優しく、優しく
 自分を包み込んでくれる
 浩之。
(嫌だ……)
 そのとき、絶望に沈むマルチの心に小さな灯りがともった。
(嫌だ……失いたくない……)
(この温もり……暖かな日々)
(浩之さんの優しさ……)
(セリオさんの優しさ……)
(みんなの優しさ……)
(みんなの心……)
(私の心……)
 小さな灯りは徐々に、しかし確実に強くなっていく。
(失いたくない……)
(失ったりしない……!)
(私が……私が……)
(守ってみせる!!!!!!!!)
 灯りはついに太陽の輝きとなった。


「HMX−12、バスターモードに移行します。」
 冷静な柳川の報告に、長瀬は驚愕した。
「なに!?……マルチのバスターモードはまだ未完成なんだぞ!……止すんだ、マルチ!」

                                    つづく 

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 どもども、ジン・ジャザムです。
 うーん、かなりオリジナルですね(^^;)
 とりあえずセリオは某5人美少年戦隊(?)ロボットアニメの主人公。
 マルチは、とりあえず今回は一言だけ、庵○初監督(だったよな?)作品の主人公です。
 分かる人だけ気付いてくれ……ってな感じですね(^^;;;)
 一応、有名どころですけど。

 次回予告だっ!(声=横山やす……ぢゃなくて、智○)

 ついに反撃のマルチ!
 数々の超兵器で鬼を追いつめます!
 そう、私たちは地球の平和を守るため、負けるわけにはいかないの!
 もう……浩之さんもしっかりして!

 次回・第9話『FIGHT BACK!』

 荒廃地球に浪漫の嵐!(←もうそのネタはええっちゅうの!)