スーパーLEAF大戦・第19話 投稿者: ジン・ジャザム
「きしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 エルクゥ・ビーストが熊に襲いかかる。
 だが、その瞬間、熊の前方に見えない壁が生じ、エルクゥ・ビーストの侵攻を阻む。
「ぐるるるるる!」
 そこは絶対の領域。
 愛の心によって創られた、総ての魔を拒絶する壁。
 熊は先程あかりに見せたものとは違う、冷たい瞳でエルクゥ・ビーストを睨む。
 瞳は背けないままに、熊は再び、心に語りかけた。
 ただし、今回はあかりにだけではない。
 その場にいる者全てに語りかける。
『時は来た。』
「わ!……な、何よ?」
「これは……?」
「クマちゃん……。」
「………………。」
 心に直接、響く声に志保と雅史は戸惑う。
 しかし、熊は気にせず続けた。
『この時代、この場所に、我らは集った。これは必然。』
「我ら……?」
『戦いが始まる。この星の命運を賭した壮絶な戦いが。……さあ、目覚めよ。恐れるな。
汝らは既に知っている。戦いの意味を! 守るべき者を!』
「いったい何のこと……きゃあああ!」
 今度は志保と雅史の眼前で、光が迸った。
 その輝きは、まるで太陽の欠片が降ってきたかのように、辺りを白い闇で覆った。
 その光の中、熊の声だけが響く。
『4の御霊はここに揃った……!』


スーパーLEAF大戦 第19話『LEAF結成IV―獣と魂―』


 光が収まったとき、新たに2匹の獣が出現した。
 雅史の前に現れたのは狼。水晶の狼。
 志保の前に現れたのは豹。水晶の豹。
 そしてあかりの前に立つ水晶の熊。
 3匹の獣は、ちょうどエルクゥ・ビーストを取り囲む形になっている。
「ぐるぅぅぅ……」
 あまりに立て続けの出来事に、エルクゥ・ビーストも混乱しているようだ。
 ……あかりたちの方は、言うに及ばず。
 とにかく3匹の獣は例の、心に響く声で唄うかのように語りだした。
『愛。それは種の生存本能。』
『原初の欲望。』
『弱さを補うため群れること。』
 冷たい声が響く。 
 罪人に審判を下す天使の声が。
 だが……
『だが……』
 声にはすぐに暖かいものが含まれていった。
『愛。それは他のために、命をも顧みぬ心。』
『己を楯にして子を守る親。』
『命を創る女。それを守る男。』
『愛。それは欲望より生まれ、欲望を超えるもの!』
 あかりの、雅史の、志保の心の中に光が生まれた。
 それは獣たちの声と同じように暖かい。
『その愛ゆえに』
『我らは人の中に宿り』
『理不尽な侵略に屈せぬ力を与えてきた。』
『そして今、新たなる侵略者が』
『命の炎を喰らう魔物が』
『かつての魔物たちが』
『総てを滅ぼすためにやってくる。』
 唄いつつ、3匹の獣が、エルクゥ・ビーストに強いプレッシャーを与える。
 エルクゥ・ビーストの本能が危険を感じていた。
 同時に、狩猟の高揚も。
 エルクゥ・ビーストの口元が歓喜に歪んだ。
 3匹の獣とエルクゥ・ビーストの闘気がぶつかり合う。
『……今こそ、獣王復活のとき!』
 闘気を緩めないままに、獣たちは続ける。
 ある者を呼び覚ますために。
 ある者……
『そう……獣王……』

『トゥハート!』

 3匹の獣が同時に叫んだ。
 刹那、どこからともなく炎が吹き荒れ、病室全体を包み込む。
「きゃあああああああ!」
 悲鳴をあげる、あかり。
 しかし、炎は決してあかりたちを焼くことはなかった。
「これは……!」
 雅史が炎の発生源を探る。
 その視線の先に……
「ヒロ!?」
 炎の中、不死鳥の闘気を纏い、佇(たたず)む浩之がいた。
 その表情には、戦士の鋭さがある。
「浩之ちゃん?」
 あかりが浩之に触れようとした、そのとき。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 浩之が吠えた。
 その叫びに応じるように、

ヴオオオン! ヴアアアン! ビュアアン!

 3匹の獣が光球と化して、浩之の元へと飛んでいった。
 そして、3つの光球が浩之の不死鳥に飲み込まれる!
「くおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 さらなる炎が吹き荒れた。
 炎は徐々にその輝きを増し、ついには溢れる光と化した。
「もう……またっ!?」
 手で光を遮り、瞳を閉じる3人。
 そんな3人の耳に、浩之の叫びが届いた。

「獣王招来! 闘覇斗(トゥハート)!!!!」


「病棟で高エネルギー反応!」
「なんだと!?」
 長瀬がレーダーを覗き込む。
「これは……! ヘタをすれば、鬼化した耕一君に匹敵するエネルギーだぞ!? いったい、
何が……まさか!?」
 何かに気付く長瀬。
 その長瀬に、か細い声が語りかけた。
「えっ?……『4の御霊が集いしとき、降臨する者』ですか?……ということは、やはり
藤田君が。……! なら、残りの御霊は、彼の友人の!?」
 こくり。
 長瀬に語りかけた人物が、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「こんな近くに偶然、4つの御霊が揃っていたとは……いや、これは『必然』ですか?
芹香お嬢様……。」
 こくり。
 芹香と呼ばれた黒髪の美少女は、再び頷いた。
 そう、彼女こそ来栖川芹香。
 大企業、来栖川グループを統べる会長の孫娘にして、『魔導科学』の開発者。
 稀代の天才魔導師である。


 L−466。
 マルチとセリオが眠る部屋。
 そこにはセリオ戦闘タイプとマルチ警備タイプの残骸、そして4匹のエルクゥ・ビース
トの肉片が散乱していた。
 今、この部屋で動けるのは、甲虫の外殻を想像させる有機的なフォルムを持った、魔導
ライフルを装備したセリオ戦闘タイプと、この区画で最後の一匹であるエルクゥ・ビース
トだけだった。
 対峙するセリオ戦闘タイプとエルクゥ・ビースト。
 セリオ戦闘タイプが魔導ライフルを撃った。
 エルクゥ・ビーストが跳んで、それを避ける。
 そして魔導ライフルから放たれた光が収まらないうちに、エルクゥ・ビーストが、セリ
オ戦闘タイプを襲った。

 べきんっ!

 身体に風穴を開けられたセリオ戦闘タイプは、そのまま活動を停止した。
 エルクゥ・ビーストは倒したセリオ戦闘タイプに目もくれず、まっすぐに、眠るマルチ
を目指す。
 その牙で、マルチの首を食い千切るために。


 A−429。
 最後のマルチ警備タイプを破壊したエルクゥ・ビーストは、その視界に新たな獲物を見
つけた。
 人間の、若い雄。
 狩猟の本能に突き動かされるまま、少年に襲いかかる。
 それが命取りだった。
「ぐるああっ!? ぎぎぃ!? ぐぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
 突然、苦しみだすエルクゥ・ビースト。
 その様を見下ろしながら、襲われた少年が呟いた。
「……ったく、おじさんに連絡をつけて、やってくれば……何か大変なことになっている
ようだね。」
 そうは言うものの、あまり大変そうな口調ではない。
 そうしている間に、エルクゥ・ビーストは動かなくなった。
 横にいた少女が、心配そうに少年に尋ねる。
「祐くん、この前の怪我は大丈夫なの?」
「確かに酷い怪我だけど、電波で痛みを押さえているから戦えるさ。沙織ちゃんこそ、僕
の側から離れないでね。」
「うん……。ねえ、これもやっぱり鬼なのかなぁ?」
「多分ね。月島さんが、太田さんたちを鬼にしたのと同じ方法で……。!? これは?」
 そのとき、少年……祐介は遠くに凄まじい力が発生したのを感じた。
「どうしたの?」
「……鬼を超える力を感じる。力強くて、厳しい……でも、総てを包み込むように優しい、
そんな力……。」
 祐介が見つめる方向、それは、浩之の病室のあるF−181区画だった。
「瑠璃子さんはこのことを知っていててたのか……?」


 E−921。
 梓の拳が最後のエルクゥ・ビーストを貫いた。
「まさか、来栖川が鬼に狙われるとはねぇ……。まあ、大した強さじゃないけど。」
 梓が拳の血を拭いながらしゃべる。
「こんな鬼は見たことないわね……なにか、特別な力を感じるわ。」
 その隣には千鶴と耕一もいる。
 この前の話し合いの通り、鶴来屋は『例の部隊』に参加するため、来栖川に訪れた。
 だが、施設も近付いてきたそのときに、千鶴たちは鬼の気配を感じた。
 そこで3人は鬼の力を解放して、ここまで駆けつけてきたのだ。
「それに……さっきから感じるこの闘気……鬼になった耕一並じゃないのか? 悪意と
か、そういった類のものは感じないけど……。」
「とにかく急いだ方がよさそうだね、千鶴さん、梓。」
「ああ」
「ええ」
 そして3人は再び駆け出した。


 ずぎゅううん!

 エルクゥ・ビーストがマルチを襲おうとした、まさにその瞬間。 
 横から光が一閃し、エルクゥ・ビーストを貫通した。
「ぐ……るあ?」
 光が放たれたその先には、魔導ライフルを構えたセリオがいた。
 量産機の戦闘タイプではない。
 先程まで、マルチ同様に眠っていたはずのプロトタイプだ。
 突如として眠りから覚めた彼女は、床に転がっていた魔導ライフルを拾い、咄嗟にエル
クゥ・ビーストを攻撃したのだ。
「……私の任務。マルチさんの絶対防衛。マルチさんには指一本触れさせません。」
 冷たい声で告げるセリオ。
 それと同時に、エルクゥ・ビーストの体内から7色の光が溢れ、その身体を粉微塵に吹
き飛ばした。
 バスターライフルですら通用しなかったエルクゥが、である。
「敵の生命反応消失を確認。引き続き、任務を続行します。」
 セリオはそう呟くと、マルチの元に近付いた。
 そして、眠っているマルチの頭を撫でる。
「マルチさん……安心して眠っていて下さい。マルチさんは私が守りますから。」
 そのときのセリオの表情は、いつもなら決して見せることのない、優しいものであった。


 ……浩之の目の前に、3メートルを越える身長の巨人が君臨した。
 不死鳥の翼と、水晶の体躯とを持った巨人。
 いや、むしろ天使か。
 そしてその後ろで、天使と同じポーズで佇む浩之。
 その異様ながらも荘厳な風景に、あかりたちは魅入られていた。
 そして浩之は……浩之の意識は天使の意識と触れ合った。

(そうか……これが……俺の力の意味……そして『俺たち』の力の意味!)

 総てを理解した浩之が、正面の敵を見据える。
「ぐるああああ!」
 天使の闘気を察知したのか、残りのエルクゥ・ビーストもこの病室に集まっていた。
 浩之にとっては好都合なことだった。

(俺は……マルチを守れなかった。俺はもう、俺の周りの人間が傷つくところを見たくね
ぇ! 俺はこの力で……みんなを守る!)

 浩之が右腕を上げる。
 すると、天使も同様に右腕を上げた。
 その状態で、浩之が唄う。
「愛にて悪しき魂を断つ……名付けて……」
 浩之の言葉に反応して、天使の右腕に一本の剣が出現した。
 白く輝く、聖なる剣が。
 天使――浩之はそれを一気に振り下ろす!

「闘覇刀ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 その叫びと同時に、
 大爆発が起きた。


「……敵エルクゥの殲滅を確認。L−466はセリオ戦闘タイプとプロトタイプが、E−
921では駆けつけてきた鶴来屋の3人が、A−429では長瀬祐介が敵を殲滅させてい
ます。生き残っている敵もあらかたセリオ戦闘タイプの魔導兵器で倒されています。で、
F−181は……ふぅ。」
 報告しているオペレーターがため息を吐いた。
 そして続ける。
「F−181では、藤田浩之の『獣王』が医療施設ごと、敵5体を吹き飛ばしています。
藤田浩之ほか、神岸あかり、佐藤雅史、長岡志保の4名は、祖霊の加護により無事のよう
です。ただし、施設を失った損失は……はあ〜」
 また、ため息を吐く。
 その様子に長瀬は苦笑しながら答えた。
「まあ、勝ったんだし良いじゃないか。これでようやく我々も、エルクゥと互角に戦える
だけの戦力を身につけたってことだ。そう……『例の組織』の誕生も間近だ!」
 長瀬のその台詞に、その場にいる者全員の表情に闘志が宿った。
 長瀬が叫ぶ。

「そう……エルクゥ迎撃組織『LEAF』の誕生だ!」


                                    つづく 

………………………………………………………………………………………………………………
 よっしゃあああ! ラスト1!
 どもども、ジン・ジャザムです。
 よーーーーーーーーーーーーーーーーやっと、次回で第1部完で御座います!
 いやあああ、長かった!
 こんなに長くなるとは思わなかった!(爆)
 これでようやくスタートラインに立てる!(核爆)
 これも皆様のご声援があればこそ!
 まったくもって感謝感激雨霰(←読みづらい)で御座いますぅ!
 ……まだ終わってないけど。

 今回の浩之、ダン○ーガであります。久々のロボパロ(笑)
 浩之でダ○クーガの理由。それは……

 目つきが悪いから(走召 木亥 火暴)

 俺のせいじゃないです。
 サークルの先輩が「浩之は藤原忍なみに目つき悪いからダンク○ガにしろ。」と脅した
からであります(笑)
 名前も似てるし(←『藤』しか合ってません。)
 ああ、名前似てるのなら『雅人』と『雅史』も(笑)
 というワケでスパリフ初の合体ヒーローでした(笑)

 しかし今回は熱いっていうか……コテコテでしよ(笑)
 スパリフのテーマは『愛』なんですよ。
 いや……マヂですってば(笑)


 さぁぁぁぁぁぁて! 次回のスパリフはぁぁぁぁぁぁ!

 ついに地球最強の部隊は集った!
 理不尽な侵略から、愛する者の幸せを守るため、我らのLEAFがその手に剣を取る!
 さあ、この青空に向かって羽ばたけ、LEAF!
 そして証明するのだ!
 人の愛は、何より強いということを!

 次回・第20話『LEAF結成 V―葉と樹―』

 堂々の第1部最終回にぃぃぃぃぃ! スイッチ・オン!!!!!!