スーパーLEAF大戦・第18話 投稿者: ジン・ジャザム
 来栖川の某施設内。
「……セリオとマルチはどうだ?」
 長瀬が傍らに立つ柳川に尋ねた。
「修理は終わりました。AIの方は彼女たちの自我回復機能を信じるしかありません。」
 柳川は、いつもの冷静な声で答える。
「そうか……で、藤田君の方は?」
「意識はまだ戻りませんが、怪我は順調に回復しています……しかし、あれほどの大怪我
にも関わらず、一命を取り留めるとは……これも例の新技術ですか。」
「ああ……『魔導科学』。敵に対抗するための、我々の武器だよ。……そうそう、彼女た
ち、また来ているのかね?」
「藤田さんのご友人ですか?……はい、今も病室の方にいると思いますが……。」
「そうかい……。」
 そこで長瀬は深いため息を吐いた。
「祖霊(トーテム)の力か……それが、彼らにとって、残酷な運命にならなければいいん
だけどね……。」


スーパーLEAF大戦 18話『LEAF結成 III―愛と力―』


「浩之ちゃん……。」
 未だに眠り続ける浩之を見つめつつ、あかりは呟いた。
 その表情は、暗く沈んでいる。
「……大丈夫だよ、あかりちゃん。医療スタッフの人も心配ないって言っていたし……。」
「そうよ。それにあかり、あんた、ずっとつきっきりでしょ? あんたの方こそ無理して
倒れないか心配よっ」
「うん……御免ね。雅史ちゃん、志保……。」
 あかりを気遣う雅史と志保に、あかりは少し無理のある笑顔で応えた。
「……たまには家に帰ったら?」 
「でも……浩之ちゃんの両親も忙しいだろうし、だから……。」
「…………。」
 かける言葉を失い、黙ってしまう志保。
 浩之が来栖川の医療施設に運ばれたと聞いて、真っ先に駆けつけたのはあかりだった。
 最初は取り乱していたものの、命に別状ないと知って、今ではようやく落ち着いている。
 だが、あかりはそれから、つきっきりで浩之の世話をしていた。
 志保が心配するのも無理はない。
「浩之ちゃん……。」
 再びあかりは、浩之の方に目をやり、彼の手をぎゅっ……と握り締めた。
 当の浩之は穏やかな表情で、静かに寝息を立てていた。
「……ったく、この馬鹿……あかりの気も知らないで呑気にぃ〜っ」
 志保はそう言いつつ、浩之のこめかみを拳でグリグリした。
「ああっ 志保〜っ」
「くっ……うぬぅ……」
 苦しそうに呻く浩之。
 そんな浩之の様子に、ようやく、みんなの笑顔が戻ってきた。


 闇。
 冷たい闇。
 月島が香奈子たち3人を弄ぶ。
 淫猥な喘ぎ声。
 アンモニアとフェロモンの混ざった淫臭。
 快楽に歪む3匹の牝。
 だが、月島の表情は不機嫌そうだった。
 闇の中に響く、牝の鳴き声。
 それは彼のトラウマを刺激する。
 布団を被り、耳を塞いで、震えながら必死に耐えた、あの夜を思い出させる。
「ちっ……」
 月島は3人を乱暴に払いのけ、立ち上がる。
 そのとき、月島の心に直接、何者かの声が響いてきた。

『……ジローエモン。』

 声はそう呟いた。
 その声に応え、月島が闇に向かって語りかける。
「……焦がれているね……しかし、どんなに焦がれても、それは永遠に癒されることのな
い渇望なのではないのかい?」
 少し意地悪そうな笑顔を浮かべる月島。
 しかし、闇からの答えははっきりしていた。
『エルクゥは互いに引かれ合う。我がエルクゥの尽きぬ限り、奴と我の再会は必然。たと
え百万の昼、百億の夜が過ぎ去ろうと、輪廻に導かれ……我らは必ず邂逅する。』
「はははっ……『恋は盲目』とはよく言ったものだね。……まあ、かまわないさ。それよ
りも、来栖川がそろそろ本格的に動き出しそうだ。また君の力を貸してもらえるかい?」
『……この星を、命の炎で焼き尽くすためならば。』
「ありがとう、ご協力感謝するよ。」
 月島の言葉に応えて。
 月島の眼前の床が盛り上がり、大きな肉塊が現れた。
 その形は卵か繭を想像させる。
 そして、その想像が正しいことを証明するように肉塊が裂け、中から何かが――しかも
複数――現れた。
 月島はそれを満足そうに見つめる。 
「本来なら滅びるはずの、エルクゥたちの細胞……それを移植された生物。そうだね……
死せるものから生まれた生命だから……デス・アーミー(死の軍隊)といったトコかな?」
『……名など記号だ。何とでも呼ぶがよい。』
 闇からの声は素っ気ない。
 月島はわざとらしくため息を吐いた。
「ふぅ……相変わらずだな。もうちょっとくらい、ノってきておくれよ……ダリエリ。」
 ダリエリと呼ばれたものからの返事はない。
 月島はやれやれといった風に、肩を竦める。
 ダリエリの心は既に月島から離れ、遥か過去……あるいは近い未来に想いを馳せていた。
『……次郎衛門!』


ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 長瀬たちの耳に、けたたましい警戒音が届いた。
「何事だ!」
「L−466にパターンE反応!……エルクゥです!」
 オペレーターの報告に、辺りは騒然となった。
「何っ!…… くっ、マルチ警備タイプを全機、そちらに回せ! C級以下の非戦闘員は全
員退避!」
 長瀬は即座に指示を出す。
「しかし……何故だ? 何故、ここに出現した?……まさかこの前、捕らえた鬼を助けに来
たなんてことじゃないだろうな……。」
 長瀬の表情には焦りが見て取れた。
 無理もない。
 マルチが目覚めない今、鬼に対抗する手段は限りなく少ないからだ。
 長瀬は頭の中で対抗策を必死に考える。
 が、そのとき。
「ほ、報告します! 反応増えました! 同位置に敵エルクゥ、さらに4体出現!」
「!!!!!?」
「E−921、A−429、F−181にもエルクゥ出現! その数、それぞれ5!」
「ば、馬鹿な!? そもそも、どこから……!」
「……全ての地点で、空間の歪みを確認。直接、転送されたようですね。」
 例によって柳川の声は冷静である。
「くっ……! 魔導兵器の準備もできてないというのに!」
「しかもF−181は医療施設のすぐ近く……藤田さんたちが危ないですね。こちらにはセ
リオ警備タイプを回します……敵を映像で確認。モニターに映します。」
 長瀬たちの正面にあるメイン・モニターに、その鬼の映像が映し出された。
 それを見て、その場にいる全員が驚愕する。
「これは……?」
 画面に映し出された鬼。
 それは今までの人型とは大きく異なり、肉食獣の姿をしていた。その全長はおよそ3メー
トル。体表はまるで鱗のように、硬質化している。
 額に1本の角を戴くことを除くと、鬼らしい風貌は見当たらなかった。
「……今までとタイプが違いますね……。単純にエネルギー値を計算して……どうやら、人
型の鬼ほどの力はなさそうです。」
「……気休めにしかならんな。セリオ戦闘タイプにあるだけの魔導兵器を武装させろ。」
「魔導兵器は全て試作段階ですので、暴発の危険もありますが?」
「そんなこと言ってられんだろう……どうせ最悪の場合は本部を爆破さねばならん。」
「分かりました。現在、使用可能な魔導兵器、4器をセリオ戦闘タイプに装備させます。」
「4器……ちょうど、1区画に1つ……か。残りの戦闘タイプも一機残らず出撃だ。」
「了解。」


 F−181近くの医療施設。
 つまりは浩之の病室がある場所。
 あかりたちにも警報は聞こえていた。
「何? いったい何なのよっ!?」
 不安になる3人の前に、数体のマルチ看護タイプとセリオ警備タイプが現れた。
「非常事態デス。避難シテ下サイ。私タチガ安全ナ場所マデ案内シマス。」
「非常事態?」
「慌テズ、落チ着イテ、後カラ付イテキテ下サイ。浩之サンモ別ノ場所マデ運ビマス。」
「よく分からないけど、急いだほうがいいみたいだね。」
 雅史の言葉に2人が頷く。
「コチラデス。付イテ……」
 刹那。

びゅるおおおおおおおおおおお! べらきっ! べらきっ! べらきっ! ぐおあるるるん!

 それは事態を認識する間も与えず訪れた。
 一瞬にして全てのメイドロボが破壊されたのだ。
 紫電を走らせ、崩れ落ちるメイドロボの残骸たち。
 3人はその光景を呆けたように見つめていた。
 ……彼らの視界に何かが映る。
「な……なんなのっ……コレ?」
 ようやっとのことで、志保が口を開いた。
 3人の目の前にいるのは、先程の獣型の鬼――名付けるならエルクゥ・ビーストといっ
たところか――だった。
 金色の視線が3人をなめ回す。
 気のせいか、その表情は嘲笑っているかのように見えた。
 3人は動けない……まるで金縛りにあったかのようだった。
 エルクゥ・ビーストは志保……雅史……あかり……と順番に睨み付ける。
 そして、視線の焦点がベット上の浩之と重なったとき、瞳の動きが止まった。
「!」
 あかりはそれに気付くと同時に、身体の自由を取り戻した。
 そして、それから一瞬の間を置くこともなく。

「ぐるあああああしゃああああああああああああああああああああああああああああ!」

 エルクゥ・ビーストが浩之目がけて、一直線に駆け出した!
「浩之ちゃんっっっっっっっっっっっっっっ!」
 あかりは咄嗟に浩之を庇う。
「!……あかりちゃんっ!!!!!!!!!!」
「あかりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 叫ぶ雅史と志保。
 眼前にエルクゥ・ビーストが迫り来る。
 あかりは思わず目を閉じた。
 そして、あかりの華奢な身体をエルクゥ・ビーストが、粉微塵に吹き飛ばす……

 はずだった。

 それは一瞬。
 いや一瞬にも満たない、まさに刹那の時間。
 あかりは確かに、その声を聞いた。

『恐れるな。』 

(……!?)

『恐れるな。私はいつも汝と共にある。』

(……貴方は……)

『汝が、その愛を忘れぬ限り!』

 その声と同時に光が、あかりの目の前で迸った!
 そして吹き飛ばされたのは……エルクゥ・ビーストの方だった。
「えっ……?」
「あかり……ちゃん?」
「今度は……何なのよぉ?」
 何が起こったかも分からず、再び呆然とする3人。
 吹き飛ばされたエルクゥ・ビーストは再び起き上がり、あかりの目の前に現れた『それ』
を睨み付ける。
 それは……何と形容すればよいのだろうか?
 それは2メートルを越す、巨大な体躯を持った獣だった。
 地上に存在する動物に敢えて例えるならば、熊に一番近い。
 後ろ脚で直立する、強靱な腕――前脚――と鋭い鉤爪を持った、熊。
 しかし、その身体は毛では覆われていない。
 その熊はまるで、水晶か何かを重ね合わせて造ったかのような身体をしていた。
 水晶の身体が赤く、透明に輝いている。
「あ、あの……クマちゃん?」
 あかりは思わず、場違いな台詞を吐く。
 そんなあかりを、熊は理知と慈愛に満ちた瞳で見つめていた。

                                    つづく

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 元ネタはビースト・ウォーズ(大嘘)
 皆様、はろはろでございます。
 ジン・ジャザムです。
 俺の中では、ようやく鶴来屋の目的やら勢力関係やらが見えてきて(←前回に引き続き、
問題発言。今までは月島とエルクゥの目的があるだけだった(爆))テンション高過ぎです。

 そういうワケで、突然にダリエリが登場しました。おめでとう、ダリエリ(笑)
 これも勢力関係をまとめたおかげ(笑)

 ラストも見えてきました……とりあえず、キャラ別には。
 ラストが見えているキャラは

 柳川(一番始めに閃いた。既に彼のラストは決定事項。)
 月島、瑠璃子(この2人もかなり早くから。ただし、けっこう変更の余地有り。)
 千鶴(最近ようやく。はっきり言ってヒロイン。これは譲りません。譲りませんとも(爆))
 楓(最近。活躍させなければならないキャラなのにネタ無しで辛かった(笑))
 初音(前々から。……柏木4姉妹でラストが見えてないのは梓だけ(笑)) 
 マルチ(前から考えてたのを最近、補完。BAD ENDにはならないと思いますぅ。)
 耕一(千鶴さんたちと連動して。もしかして一番の主人公かも?)
 香奈子(ホントに最近。もしかしたらHAPPY END!? 連動して瑞穂、由紀、美和子も)

 ……祐介と浩之はどうした。主人公なのに(爆)
 しかし、俺のあとがきはこういう話題が多いですね(^^;)
 実はこうすることで、自分の中にあるネタの確認をとっているワケです、ハイ(笑) 

 1部完結、マジでそろそろです!
 20話までにまとめきれるか不安(^^;)
 場合によっては、19、20話はスペシャル版になったりして(爆)
 ……ヤダよ、俺。
 この分量でも大変なのに、俺(核爆)


 ふははは! 貴様らに最新っぽい情報を後悔……もとい公開しよう!(爆)

 あかりを助けた謎のクマちゃん!
 そして、さらに目覚める力たち!
 4つの御霊が揃うとき、救世主は降臨する!
 ついに揃うか、LEAF主人公!(超核爆)

次回・19話『LEAF結成 IV―獣と魂―』(やっぱり仮)

 次回も、何でもいいからとにかく承認!