スーパーLEAF大戦・第17話 投稿者:ジン・ジャザム
「……ということで、鶴来屋さんにも協力してもらいたいのですが……。」
 鶴来屋の会長室。
 椅子に座っている千鶴とその横に立つ足立は、長瀬の話を黙って聞いていた。
 しばらくして、千鶴が口を開く。
「それは……来栖川に我々の戦力を提供しろ、ということですか?」
 千鶴の冷たい口調に、長瀬は苦笑した。
「そういうことになりますね。敵……エルクゥの力はあまりに強大です。そのエルクゥと
互角以上に戦える彼……確か耕一君と言いましたね?……彼の力は我々にとって必要不可
欠です。それに今度、発足される『例の部隊』は来栖川の正規軍からは外れた、いわば独
立部隊です。ですから上層部に振り回されることはありません。」
「………………。」
 そこまで聞いて、千鶴はまた考え込んだ。
 そんな千鶴に足立は耳打ちする。
(ちーちゃん……これは来栖川の連中に恩を着せる、いい機会じゃないかね?)
(……来栖川が何を企んでいるのか、気になりますけどね。)
(……しかし、我々だけでは鬼と対抗しきれないのも事実だ。)
(………………。)
 そんな2人の様子を見守る長瀬。
 千鶴が決断した。
「分かりました。我が鶴来屋は来栖川の『例の部隊』に協力いたします。ただし、鶴来屋
戦力の最終的な指揮権はあくまで我々という条件で。」
「感謝します。柏木さん。」

 今、地球最強部隊が静かに誕生しようとしていた。


スーパーLEAF大戦 第17話『LEAF結成U―血と心―』


 炎。
 ……やめろ。
 美しい炎。
 ……やめろ。
 命の炎。
 やめろ。
 その生命の歩んだ道程を糧に
 やめろ。
 燃える炎。
 やめろ……!
 赤く。
 やめろ!
 赤く。赤く。
 やめろ!やめろ!
 赤く。赤く。赤く……
 やめろ!やめろ!やめろ!
 赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く……
 やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!
 赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く。赤く……!
 やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!

 にたり。

 奴が笑う。
 その全身を真っ赤に染めて。
 そこらに転がる、引き裂かれた屍。
 もの言わぬ肉の塊は皆、その首を耕一の方に向けていた。
 その顔は……。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 がばっ!

 耕一は目が覚めた。
 見知らぬ天井。
 耕一はベットに寝かされていた。
「はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……」
 耕一の呼吸は荒い。
 身体を起こし、悪夢の残滓を振り払うかのように頭を振った。
「はあ…………はあ…………ふぅ……」
 呼吸を落ち着かせる。
 そして辺りを見渡した。
「ここは……。」
 どうやら病院の一室らしい。
 耕一以外の患者はいないようだ。
 頭上では点滴が揺れ、近くのテーブルには花の差さされた花瓶があった。
 小さく、綺麗な花だった。
 その花を見つめつつ、耕一は混乱した思考を整理した。
「……あれから……俺は……」
 耕一の脳裏に鬼との戦いの記憶が甦る。
 立ち向かったが、かなわず、腕を折られ、吹き飛ばされて……
「………………。」
 ゆっくりと折られた方の腕を動かしてみた。
 ……何ともない。治っている。
 それに、ビルの壁を吹き飛ばす程の……常人なら命どころか原形すら止めないほどの衝撃
を受けたはずなのに身体には傷一つ無い。
 そして、思い出す。
 あのときと、そして今、悪夢で見た命の炎。
 異形へと変貌していく自分。
 そして、俺は、あの鬼を……
「くっ!」
 胃から何かがこみ上げてきそうなのを、何とか押さえる。
「はあ……はあ……そうか……俺は……。」

きぃ……ばたんっ

 そのとき、病室の扉が開いた。
「耕一!?」
「耕一お兄ちゃん!気が付いたの?」
 扉の方に目を向けると、そこには梓と初音が立っていた。
「よう……梓……それに初音ちゃん……。」
 耕一は無理に笑顔を作り、2人を迎えた。
 2人が耕一のもとに寄ってくる。
「大丈夫、耕一お兄ちゃん……?」
「ああ……見ての通り、怪我一つ無いよ。心配かけたね……。」
「そりゃあ、心配したさ!何せ、お前3日も目を覚まさなかったんだからなっ」
「何ぃ!3日だとぉぉ?」
 さすがに、それには耕一も驚いた。
「そうさ!耕一が鬼と戦って、それで……あっ……」
 答えようとした梓が、急に口を噤む。
 その理由は分かっていた。
「梓……初音ちゃん……俺……」
「……ん? 何?」
「……いや、やっぱり何でもない。」
「そう……。」
 耕一も尋ねようとして、やっぱり口を噤む。
 しばらく、気まずい沈黙が訪れた。
 その重い空気をどうにかしようと、初音が話題を変えた。
「あっ、そう言えば、お花が差してある……まだ新しいね、誰だろう?」
「初音ちゃんじゃないの?」
「うん、違うよ。今、来たばっかりだし……。」
「そうなると、千鶴さんか……あれ?そういえば楓ちゃんは?」


 耕一の入院している隆山総合病院の正面玄関。
 楓はそこから出てきた。
 梓と初音が中に入る、直後のことである。
 一度だけ病院……ちょうど耕一の病室がある辺りを見上げてから、歩き出した。
 そのとき、ふとその視界に、正面からこちらに向かって歩いてくる男が映った。
 知っている顔だった。
 男は楓に近付くと、彼女に声をかけた。
「これはどうも……確か、会長さんの妹の……。」
「……柏木楓です。」
 楓は、ぺこっと頭を下げた。
「ああ、そうでした。お久しぶりです。僕は……。」
「柳川さん……ですね。長瀬さんと一緒にいた。」
「はい、覚えていてくれましたか。」
 柳川は笑顔で応えると、病院の方を見た。
「耕一君のお見舞いですか? 確かこの病院に入院されていると聞きましたが。」
「……はい。柳川さんは何故?」
「僕も同じです。耕一君の様態を伺おうと思いまして……何せ、彼はあの鬼と戦い、住民
を救ったのですからね。我々も彼には感謝しています。」
 柳川の答えに、楓は僅かに憂いを見せた。
「……耕一さんが……望んだ戦いではありません。」
「……そうですね。ですが……。」

びくっ!

 刹那。
 楓の背筋を戦慄が走った。
 驚愕の表情を浮かべ、柳川を見上げる楓。
 柳川は、そんな楓には気付かずに続けた。
「……ですが、人の身では抗うことの出来ない運命というものは、確かに存在します。も
し運命が血を求め、人に剣を与えれば、人はその剣を振るい、戦わなければならない。そ
れがたとえ、望まざる戦いであったとしても、それが剣を与えられた者の生き、そして、
存在する意味なのだから……!」
 語尾には僅かだが、熱が込められていた。
 一瞬、彼の瞳に金色の輝きが揺らめいたのは、果たして楓の気のせいであろうか。
「……あっ」
 やや間があって、柳川はようやく我に返った。
「ははっ……何をつまらない話をしているんだか。……すみませんね、鬼のことで僕も、
神経質になっているみたいだ。」
 苦笑してみせる。
「い、いえ……。では、私、帰りますので……。」
「ああっ、これは引き留めてすいませんでした。……お気をつけて。」
「ありがとうございます……それでは……。」
 楓はそそくさと柳川のもとを離れた。
 柳川は黙って、楓の背中を見守る。
 そして再び病院の方に振り返ったとき……あの大人しそうな表情は微塵もなかった。
「……早く目覚めろ、柏木耕一。お前との死闘を、俺はこんなにも心待ちにしているのだ
からな……!」
 そのまま柳川は、病院の中に入ることはなかった。


 柳川と別れた後も、楓はあのときの戦慄を拭い去れないでいた。
 不吉な予感が、胸の中で広がっていく。
「あの人は……いったい……?」
 何故だ。
 何故かは分からない。
 ただ、楓はあの柳川が、自分たちの運命に大きく関わることを確信した。
 ……それに、もうひとつ、気になること。
 彼がその瞳に一瞬宿らせた、金色の灯火。
 肉食獣の瞳。
 その輝きに混じって煌めいた、哀しみの色。
 それもやはり、楓の気のせいだったのだろうか?


 耕一の病室を、夕焼けが赤く染めていた。 
 その赤は血の色と、あの命の炎の色を思わせた。
 梓と初音が帰って、もうだいぶ経つ。
 耕一は、ときおり自分を襲う不安に、肩を震わせながら静かに耐えていた。

きぃ……ばたんっ

 再び、扉が開いた。
 千鶴だった。
「……千鶴さん。」
 千鶴はゆっくりと耕一の横に来た。
「………………。」
 千鶴は何も応えない。
 耳に五月蠅いほどの静寂。
 だが、やがて、耕一が意を決したように口を開いた。
「千鶴さん……一つだけ教えてくれ。」
「……………………はい。」
「親父は……『こんなもの』と戦っていたのか?」
 耕一は、自らの胸に手を当てながら尋ねた。
「はい……叔父様は、独りでそれと戦い続け、そして敗れました。」
 無表情。
 心を氷で閉ざしてしまったかのように、千鶴は淡々と答える。
「そう……事故死じゃないんだね。」
 こくり。
 千鶴は頷く。
「それが完全に目覚める前に……愛する者を手にかける前に……それを道連れに……私
の父も同様です。日に日に『人』を失っていく父を見かねた母は、ある日、父にお酒を
飲ませて……そのまま車で……崖の下へ……。」
「親父と……同じ……。」
「……それは柏木の男の中にしか生まれません。女はそれを制御できるのです。ただ、
肉体的な強さは男より遥かに劣ってしまいますが。……鶴来屋の創始者であるお爺様は
それを飼い慣らすことができました。飼い慣らすか、敗れるか……柏木の男は生まれな
がらにして、その賭けを定められているのです。それが柏木の、呪われた『血』の宿命。」
 耕一が自らの胸に爪を立てる。
 その痕から、血が流れた。
「俺が……こいつに……俺の中に眠る『鬼』に敗れたときは……。」
「私はあなたを殺さねばなりません。」
 無慈悲な宣告。
 だが、耕一は不思議と落ち着いていた。
 ……日は既に沈んでいたが、空の色はまだ赤かった。
 逢魔が刻。
 人がこの刻をそう呼んだのは、この色のせいだろうか。
 影が血の赤に溶ける、この色の。
「……負けない。」
 耕一は小さく、しかしはっきりと言った。
「負けない……俺は負けない。俺がこの『血』を継いで生まれてきたのは……奴らと…
…外から来た鬼と戦うためだろ?……だから、負けない。」
 千鶴は応えない。
 それはもし声を出せば、今まで堪えていたものが……凍らせたはずの心が一斉に溶け
だし、それは止まることのない流れとなって溢れ出すことを知っていたから。
 かまわず耕一は続けた。
「それが……俺の親父に対する……独りで戦っていた親父への……俺……親父は……俺
と母さんを捨てたとばかり……でも……それは違って……親父は……俺たちのことを想
っていたから……なのに……俺……親父のこと……何も気付かず……憎んで……俺……
俺……自分のことばっかりで……親父に何も……何も……してやれな……!」
 だが、それは既に言葉になっていなかった。
 想いばかりが先を逝き、言葉は追いつかず、それは涙に結晶して、シーツを濡らす。
 それを拭うことすら、耕一とっては魂の冒涜以外の何の意味を持たなかった。
 そんな耕一の様子に、千鶴の心の壁もついに決壊した。
 2人の泣き声だけが、この狭い空間に響いていた。
 ……赤い、赤い空。
 血の色に燃える世界。
 かつてキリストはその血を以て、人類を贖罪したという。
 ならば、これも贖罪なのか?
 答えも分からないままに、夜は来る。

「……ごめん……親父……」

                                   つづく

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「何だかもう、パロでも大戦でもねぇよ!」
 ってな感じのスパリフ17話でしたが、皆様どうお過ごしでしょうか?
 ジン・ジャザムです。(この頃、支離滅裂。)
 俺の中では、来栖川の目的とかが見えてきて(←今まで決まってなかったのかいっ!!)
クライマックスもだんだん出来てきて、テンションはけっこう高めです。
 ……って、いったいどんだけ後の話になるんだか(爆)
 少なくても第1部が終わって、2部「スパリフ大戦F(仮)」がこう終わって、「スパリ
フF完結編(あくまで仮)」だから……って、本当に終わるのかよっ!(核爆)
 まあ、完結編は短めでしょう……多分。

 柳川、ようやくまともな出番……また、しばらく無くなりそうだれけど(水爆)
 柳川の秘密とはいかに!?(笑)
 いや〜、分かりませんね!ドキドキです、ハイ!(笑)
 ……って、みんな、敵になるって思っているでしょう?
 ちょっと違います。
 シナリオが進むと分岐が発生して、その選択の結果によって寝返るか、味方ユニットのま
まか決まるんです(超核爆)
 ちなみに敵になった場合、柳川の穴を埋めるように、ヤンキー初音がユニットに加わりま
す(笑)もちろん、イベントとムービーデモ有り(笑)
 マップも違うし、エンディングも分岐。
 キャラクター図鑑を100%にするため、皆さん頑張って下さい(笑)

 17話後半、親父に関する話は書いてみたかった。
 「痕」って、実は柏木賢治の存在が大きいと思いますから、ハイ。


 では次回予告なんですが……

 本気でネタ切れッス!(超新星爆)
 浩之編か祐介編か……どっちやるかも決まってません!(サードインパクト的爆)
 筋からいくと、浩之編ですが……また病室からスタートだし(宇宙創造的爆)
 って別に、個別に話を進めることにこだわらんでもいいんだよな。
 さぁて、どうする俺!?

次回・18話『LEAF結成V―命と力―(超々々々仮)』

 次回もおもしろカッコイイぜぇ!