スーパーLEAF大戦・第15話 投稿者:ジン・ジャザム
 嵐は止んだ。
 かわりに安らぎが世界を包んだ。
 安らぎの正体もまた電波だった。
 まるで手を月にかざしたときのような、そんな温かい電波。
 この電波を祐介は知っていた。
「る……瑠璃子さん……?」
 そのとき。
 突然、黒い影がこの場に舞い降りた。
「なっ……誰だ!?」
 影は叫ぶ月島にかまわず、倒れている祐介を肩に担ぐ。
 続けて、祐介の電波で気絶した沙織も担ぐ。
 そして影は2人を抱えたまま……跳んだ!
「!……くっ、逃がすか!」
 月島は電波で影を止めようとする。
 だが、そのとき月島と影の目が合った。
「!?」
 咄嗟に電波を散らす月島。
 その隙に影は建物の屋根から屋根へと飛び移り、やがて見えなくなった。
 気絶した香奈子たちと、月島だけが残される。
 月島は呆けたように動かない。
 まるで、信じられないものでも見たかのように。

「……何故……何故……る……がここにいる……?」


スーパーLEAF大戦 第15話『瞳ニ映ル優シサ』


「痛ぅ……」
 先程の戦場から遠く離れた場所で、ようやく祐介は肩から下ろされた。
 折れた骨が、刻まれた傷口が痛む。
 その痛みを堪え、祐介は自分を助けた者の方を見た。
 その姿を見て一瞬、驚く。
 無理もない。
 それはまるっきり『忍者』だったからだ。
「…………あのぅ……。」
 語りかけて見たものの、何を話せばいいか悩む祐介。
 ……忍者は短身痩躯。
 さらに身体のラインを見ると、どうやら女性らしい。
 その表情は覆面のため、伺い知れない。
 ただ、彼女の瞳だけがやけに印象的だ。
 わずかに焦点のずれた、精神の『壊れた』者の瞳。
(そう、それはあの日の太田さんのような……って、ええ!?)
 そこまで考えて、祐介は気付いた。
「もしかして……瑠璃子さん!?」
 ………………。
 しばしの沈黙。
 やがて忍者はゆっくりと答えた。
「……違うよ。」
「やっぱり! 瑠璃子さん!」
 声でバレた。
「瑠璃子さん! 無事だったんだね?」
 涙すら浮かべながら忍者の手を握る祐介。
「違うよ……瑠璃子じゃないよ……謎の覆面忍者るりるりだよ……。」
「よかった……よかった……! 瑠璃子さんに何かあったら、僕は……!」
 謎の覆面忍者るりるりは否定するものの、祐介は聞いていない。
 そうこうしている間に、沙織が目を覚ました。
「ん……あれぇ? ここは……?」
 頭を起こし、辺りを見回す。
 そして、やっぱり謎の覆面忍者るりるりと目が合ったとき、一瞬、凍り付いた。
「あ、あのぅ〜どちら様で?」
「謎の覆面忍者るりる……」
「瑠璃子さんだよ! 瑠璃子さんが無事だったんだ!」
「ええっ! 月島さん!?」
 謎の覆面忍者るりるりの台詞は、またもや無視された。
 祐介の話を聞き、沙織もまた謎の覆面忍者るりるりと向かい合う。
「月島さん、心配していたんだよ!? 聞きたいこともいっぱいあるし……」
「瑠璃子さん、月島さんのところからどうやって逃げ出したんだい? それに月島さんは
いったい何を企んでいるんだ?」
「私……瑠璃子じゃないよ。るりるりだよ。」
 謎の覆面忍者るりるりはなおも抵抗を続ける。
 だが2人ともやっぱり聞いていない。
「……ええっ? 月島さんが私と祐くんを助けてくれたの? 凄い! どうやって!?」
「多分、電波で自分の潜在能力を引き出したんだと思うけど……でも僕たち2人を抱え
て跳べるなんて……さすが、瑠璃子さんっ」
「違うもん……るりるりだもん……」
 謎の覆面忍者るりるりの瞳が涙目になる。
 でも興奮している2人は気付かない。
「#*♂∞◎▼〒☆п吹順凵シ+♪@〆々梶噤凵「÷!!!」
「@☆∈∧⇒〒⇔∀¶‡Å‰√‖《≦∞♀℃¢仝〆〇!!!」
「……るりる……」
「……月島さん!」
「……瑠璃子さん!」
「……いぢわる。」

 次の瞬間
 電波が
 爆発した。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 沙織が突然、頭を押さえて苦しみだす。
「さ、沙織ちゃん!?」
「電波はいややややややややややややややややややややややややややややややややや!
止めてええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
 さらに苦しむ。
 しかし、しばらくすると
「……はぅ……。」
 気絶した。
「あの……沙織ちゃん……だ」
 気絶した沙織に祐介が『大丈夫?』と声をかけようとしたとき、

 ゆらり

 沙織は立ち上がった。
 しかし、その瞳は虚ろで焦点が合っていない。
 そんな沙織の瞳を見て祐介は、ふと、あの日の太田さんに似てるなと思った。
「……ねぇ、沙織ちゃん。私、瑠璃子じゃないよね? るりるりだよね?」
 ふいに謎の覆面忍者るりるりが沙織に尋ねた。
 沙織はゆっくりと口を開く。
 そう、ゆっくりと……
『ウン、違ウヨ。瑠璃子サンジャナクテ、謎ノ覆面忍者るりるりダヨ。』
「カタカナでしゃべってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」
 祐介が速攻でツッコむ。
「ちょ……ちょっと瑠璃子さん! 電波で操ってるんでしょ!?」
「瑠璃子じゃないよ……それに操ってないよ。普通だよ。」
『ウン。私、普通ダヨ。』
「だからカタカナだし!……瑠璃子さん、元に戻してよっ!」
「瑠璃子じゃないもん。」
 どうやら、完全に拗ねてしまったようだった。
『オッス、オラ、さおりん……オッス、オラ、さおりん……フ○ーザ倒スゾ……フリ○ザ
倒スゾ……オラ、腹減ッタゾ……オラ、腹減ッタゾ……』
「あああああ! 壊れてきているぅぅぅ! 頼むよ、瑠璃子さぁぁぁぁぁん!」
「瑠璃子じゃないもん。」
 謎の覆面忍者るりるりの瞳がまっすぐ祐介を見据えた。
「うっ……」
 怯む祐介。
「………………。」
「………………。」
 しばし、無言で見つめ合う2人。
 向こうでは沙織が『ミンナノ元気ヲ、オラニ分ケテクレ』とリフレインしていた。
 祐介の額に冷や汗が浮かぶ。
 さらに無限にも感じる時間が流れ……
「その……るりるり……さん。」
「(にこっ)」
 ……死海文書(シナリオ)の前に、祐介は敗れた。


「長瀬ちゃん……来栖川の人たちに会いに行って。」
 沙織を眠らせた後で、るりるりは祐介にそう告げた。
「えっ?……瑠璃……るりるりさん、それはどういうこと?」
「あそこには、長瀬ちゃんの仲間がいるよ……長瀬ちゃんを助けてくれる人がいるよ。」
「……仲間?」
 頷く、るりるり。
 そしてゆっくりと立ち上がった。
「長瀬ちゃん……独りは駄目だよ。独りはね、寂しいの。寒くて、寒くて震えるの……
とっても、辛いの。」
「あっ……。」
 るりるりが祐介の手を握った。
 その手はとても冷たい。
 だが祐介は、自分の心の中に暖かなものが流れ込んでいくのを感じていた。
「長瀬ちゃん、お兄ちゃんと一緒になっちゃ駄目だよ?……悲しいに負けちゃ駄目だよ?
……憎しみの毒電波は駄目なの……。」
「瑠璃……今、お兄ちゃんって……んっ!?」
 祐介のツッコミは最後まで続かなかった。
 るりるりが覆面の上から唇を重ねてきたからだ。
 瞳も閉じずに、呆然とする祐介。
 長く、甘い口づけ。
 やがて、るりるりの方から唇を離した。
 じっと見つめ合う2人。
 るりるりの表情は覆面のため、伺い知れない。
 ただ、やっぱり、その瞳が印象的だった。
 わずかに焦点のずれた、精神の『壊れた』者の瞳。
 そのくせに優しい……綺麗な瞳。
「約束だよ……。」
 呆然とする祐介をそのままに、るりるりは跳んだ。
「!」
 祐介はようやく気が付いたかのように慌てて、るりるりを目で追った。
「瑠璃子さん!」
「……るりるりだよ。」
 何処からともなく返ってくる答え。
 しかし、るりるりの姿はもう、どこにもなかった。
「……瑠璃子さん。」
 祐介はただ、るりるりの消えた闇をみつめていた。
 風が吹き逝く。

「瑠璃子さん……僕はどうしたら、君を助けられるんだい……?」

 祐介のその問いに答えるものはなかった。

                                    つづく

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 ジン・ジャザムです。
 スパリフ第15話完成っ!
 これにて『雫』編、終了!
 次回から、それぞれのキャラが邂逅を果たし、第1部のクライマックスとなります。
 パロはほとんど無し(汗)
 まあ、『雫』編も蓋を開けば、「どこが『Gガン』?」ってな感じだけど(汗×2)


>今後、活躍するであろうキャラです。(第2部での活躍も含めて)

 耕一、千鶴、柳川、初音、長瀬、浩之、あかり、志保、雅史、マルチ、セリオ、芹香、
祐介、瑠璃子、るりるり(笑)、月島

>活躍させたいキャラ(少しはネタがあるキャラ)

 楓、かおり、葵、綾香、レミィ、セバスチャン、瑞穂、香奈子

>登場はするでしょうキャラ(深く関わってくるかは謎)

 梓、足立、沙織、由紀、美和子

>ネタがありません、助けて下さい、なキャラ(爆)

 智子(一発ネタならあり)、琴音(超能力の設定がおいしいのに……)、理緒(はぅ。)

>チョイ役でなら……

 由美子、響子、森川由綺(笑)

>出ねぇよ(せいぜい、やられ役(笑))

 橋本、矢島 


 次回予告です!

 ……まったく出来ていません(爆)
 どうなるか分かりません(核爆)
 助けて(超新星爆)

 タイトルだけは(一応)決まっている!

 次回・第16話『LEAF結成・その1――サブタイトル未定』

 合い言葉は『スーパーLEAF大戦』
 やぁぁぁぁぁてやるぜぃ!