続痕−ぞく きずあと−第十四回 投稿者:佐藤 昌斗
 柏木耕一、柏木千鶴、隆雨(たかさめ)ひづきの三人が、柏木邸で色々としている
うちに、日も傾き外はもう夕方となっていた。

 「君は・・・僕”ら”と同じだね?」
 学校の帰り道、少し暗くなり星が僅かに空に見える、夕暮れ。
 公園を通り抜けようと歩いていた柏木楓は、公園の椅子に腰掛けていた、高校生ら
しき学生服を着た少年に、そう声をかけられた。
 「・・・あの、何のことでしょう?」
 楓は、立ち止まり暫し考えた後、思い当たることがなかったので、そう応えを少年
に返した。
 楓のこの反応は、当たり前だろう。見知らぬ人間にいきなり声をかけられ、しかも
先程のようなことを言われたら、誰でも何のことだか解るはずはない。
 「惚(とぼ)けることはないよ・・・。僕”ら”には、解っているんだから」
 が、しかし楓の応えにも少年はその、”何かを確信した”表情を崩すことなく、そ
う続けて楓に話しかける。
 「・・・私には、よくわかりません。・・・失礼します」
 楓は、少年の言葉を訝しく想いながらも、今朝のことが気になっていたのでそうそ
うに話を切り上げて、家路を急ぐことにした。
 しかし・・・。
 「何を、急いでいるんだい?」
 「何処に行くの?」
 「話はまだ途中だよ?」
 と、少年と同じく高校生らしき男女が数人、楓の進行方向を遮るように現れたのだ
った。
 (いつの間に、現れたというの?!)
 楓は、彼らが現れたことにではなく、”自分が気が付かなかったこと”に動揺して
いた。
 一見として普通の−と言っても、楓くらい整った顔をしていれば”普通”ではない
だろうが−高校生にしか見えないが、楓は”鬼の血”を引いている為に常人にはあり
得ない”力”を持っているのである。そして、その力の一つとして動物並に鋭い感覚
を持っており、人の気配などを察知できるのである。だからこそ、楓は自分が”気が
付かなかったこと”に対し、動揺したのである。
 「・・・何処へに行くんだい?まだ話は、終わってはいないよ?」
 楓が振り返ると、そこに先程の少年が立っていた。楓は数秒ほど考え込むように俯
くと、顔を上げ毅然とした表情(かお)で−といっても普段とあまり変わらないが−
少年を見て、
 「・・・話というのは、何ですか?」
 と、毅然(きぜん)とした態度で言った。その楓の態度を見てか、少年は苦笑いす
ると、まるで宥(なだ)めようとするかのように、
 「そんな顔しないでよ。・・・君は僕らの”仲間”なんだから」
 そう言う。だが、その言葉は楓には意味が解らない。特に、何を指して”自分を同
じ”というのかが、楓には全く理解できなかった。内心困惑しながらも楓は少年の、
少年達の話とやらを待つ。と、その時・・・。
 (何?この匂いは?・・・今まで嗅いだことのない、強烈な匂いだわ。でも、何で
急に・・・?)
 楓は強い、だが決して不快ではない臭いを感じた。そして、その臭いを感じたその
時、
 「ふふふっ・・・。誰かと思えば・・・貴方でしたか・・・。”エディフェル”」
 突然の背後からの声に、楓は二つのことに驚愕した。一つはまたも自分が人の気配
に気が付かなかったこと、そしてもう一つは、自分以外は知るはずの−否、”憶えて
いるはずのない名前を言われた”からである。
 「?!・・・なぜその名を?!」
 「・・・知っているのか?と、言いたいのですか?」
 今度は動揺を隠そうともせずに楓は、現れた−やはり高校生らしい−少年に言おう
とする。だが、楓の台詞を遮るように、突如現れた少年は”とても綺麗な声”で楓が
言おうとしたことを、まるで引き継ぐかのように言うのだった。
 その時、楓が慌てて振り向いた”その時”少年と楓の視線が合った・・・。

 「ただいま〜っ。・・・良かった、あのお姉ちゃんもまだ家にいた・・・。あっ、
千鶴お姉ちゃん、今日はお休みしたんだ・・・」
 戸を開け、玄関にまだひづきの靴があることを確認すると、柏木初音はほっと、
胸を撫で下ろした。
 (みんな、居間にいるのかな?)
 等と考えつつ、靴を脱ぎ廊下を進んでいると、いきなり襖が開かれ慌てたように耕
一、千鶴、ひづきの三人が居間から出てきたのだった。
 「きゃっ!?・・・お兄ちゃんたち、どうしたの?そんなにあわてて」
 いきなり出てきた三人に、初音は内心驚きつつもそう尋ねる。すると、
 「初音、ごめんなさい。今は、説明している暇はないの・・・。留守番お願いね?」
 「初音ちゃん、ごめん。あとで話すから、留守番を頼む」
 と、千鶴と耕一がかなり急いでいるような口調で応える。と、その横をすり抜ける
ようにしてひづきが玄関へと走って行く。
 「ひづきさん、待って!初音、それじゃよろしくね」
 「ひづきちゃん!」
 そう言うと二人は、慌ててひづきを追いかけて行った。
 
 −その時、通り過ぎるひづきの握りしめた手から、僅かに蒼い光を放っているのを、
初音は確かに見た。その光をなぜか初音は、懐かしく感じるのだった・・・。



                             <第十五回に続く>




耕一:おいっ・・・佐藤。
佐藤:何?
耕一:もういい加減、忘れられているんじゃないのか?この話・・・。
佐藤:ううっ!?痛いところを・・・(大汗)。
耕一:・・・早く完結させろよ、いい加減に・・・(溜息)。
佐藤:・・・完結は・・・え〜と、後・・・(汗汗汗汗)。
耕一:・・・ふっ。もう好きにしてくれ・・・(呆)。
佐藤:主役が、呆れるなぁ〜〜〜〜〜〜っ(涙)!!!!
耕一:やれやれ・・・。それじゃあ・・・
耕一・佐藤:第十五回で、お会いしましょう!!
 楓:あの・・・私は、どうなったんですか?



                                  <幕>