続痕−ぞく きずあと− 第七回 投稿者: 佐藤 昌斗
 (ここは・・・何処?私・・・鶴来屋にとった、自分の部屋に戻ってきたんだっけ・・
・?。・・・違う!私がとった部屋は洋間のはず!ここは何処なの?!)
 隆雨(たかさめ)ひづきは、慌てて起きあがろうとしたが、とたんに体に激痛が走り、
又もや今まで寝ていた布団に倒れ込んだ。
 「くっぅ・・・」
 思わず口から苦痛の声が漏れる。しかしかまってはいられない、ここを出なくては・・
・。そう思い、痛みを我慢してひづきが立ち上がろうとしたその時、部屋を仕切る障子か
ら、女性の声が聞こえてきた。とても温かい、ここ最近は忘れていた温もりを与えてくれ
る様な、そんな優しい声だった。
 「起きてらっしゃるのですか?入ってよろしいですか?」
 ひづきは少し考えてから、
 (・・・ちょうどいいわ。傷の手当もしてもらったようだし・・・何よりも、黙って出
ていくのも気が引けるわ。ここはお礼を言って、さっさと奴を探しに行きましょう。被害
が出てからじゃ遅いもの・・・)
 「どうぞ」
 と、答えた。ひょっとしたら、声の主がどんな、女性か見てみたかったのかもしれない
なと一瞬、ひづきの脳裏にそんな考えが浮かんだ。しかし、ひづきは知らなかった。入っ
てくるのが一人ではなかったことを・・・。
 「では、入りますね」
 その声とともに、障子が音もなく開き”二人が”部屋に入ってきた。
 「入る・・・よっ?!」
 ひづきと、耕一は同時に固まった。耕一は、ひづきの格好を見て、ひづきは、一人と思
っていたからだ。ちなみにひづきの格好は、上半身を覆うのは傷を手当するために巻かれ
た包帯だけで、下半身は白い、清楚な感じがする下着のみという、何ともあられもない姿
だった。
 (うーむ・・・白か・・・って、見てる場合じゃなーい!)
 「ごっごめん!」
 そう言って我にかえった耕一は、慌てて部屋から出た。その後、少しの間があってから、
ひづきの悲鳴があがったのだった。
 「あら?」
 そんな中、千鶴一人だけが首を傾げていた。どうやら、耕一にひづきがどんな格好をし
ているか言い忘れたらしい・・・。
 「千鶴さーん・・・そういうことはちゃんと教えてよ・・・」
 と、言いつつも内心得したと思った耕一であった。

 それから、程なくして着替え終わったひづきを交えて、千鶴と耕一は居間に座っていた。
 「でっ・・・どうしてあんな所に倒れていたのか教えてくれないかな?」
 しばらくの沈黙の後、耕一はこのまま黙っていてもしかたないと思い、質問を切り出す
ことにした。そう聞いてから数分が経った後、ようやくひづきが口を開いた。その表情は
何故かとてもつらそうに見えるのは、耕一だけではなかった様だ。ふと見ると千鶴も怪訝
な顔で、耕一の方を見ていた。
 「それは・・・言えないわ。傷の手当までしてもらって悪いけど・・・。話すわけには
いかないわ」
 (話せばあなた達に迷惑がかかるかもしれないもの・・・。そう、奴は私が嫌がること
なら、なんだってするはずだもの・・・。なんだって・・・)
 後半は心の中で思いながら、ひづきは二人にそう言った。しかし、千鶴も耕一も、鬼が
絡んでいるかもしれない以上、引き下がるわけにはいかない。悲劇はもう十分だというの
が、二人の共通する思いだった。
 「でも・・・どうしても、話していただかないといけないわけが、こちらにもあるので
す。あなたに何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか、話してもらえません
か?」
 (どういうことなの?この人達にも事情があるって?。まさか・・・奴のことを知って
いるとでも言うの?。でも・・・この真剣な態度は何?何がこの人達をこうさせるのかし
ら?)
 ひづきは改めて二人の顔をよく見てみた。女性は、めて気づいたが、とても美しい顔立
ちをしていた。普通ここまで整った顔をしている−いわゆる美人は、冷たい印象を受けが
ちだが、この女性は不思議とそれを感じなかった。今その美貌は、何故か悲しみを感じさ
せる、真剣な表情でこちら(ひづき)を見つめている。
 一方、男性の方も、普段は親しみや安心感を受けるであろう顔を、こちらも女性と同じ
く、しかしこちらは不安と決意を感じる、やはり真剣な表情をしていた。後で解ったこと
だが、ひづきがこの時感じた二人の思いは、エルクゥの感情信号によるものであった。
 

−ひづきは、二人の真剣な表情と千鶴の顔に浮かぶ悲しさに、自分と同じものを感じて、
話すことにした。自分に起こった事件の全てを・・・



                                <第八回に続く>




 耕一:というわけで、七回目だけど・・・。得したかな?今回は
 佐藤:めっちやくっちゃ!遅れてしまった。しかも、すぐ続き書
    かないと・・・
 耕一:そうだな・・・。あれじゃあ半分にならないだろうしな
 佐藤:そお言うこと
耕一・佐藤:では、八回目でお会いしましょう!!
ひづき:うぇーん!下着見られたーーっ!!

                                    <幕>