海より・4  投稿者:ギャン


8/19

昨日の深夜からずっと雨が降り続いている。
さすがにこんな日は芹香も外出はしない。
とは言っても、朝からずっと部屋に閉じこもったままなのでいつもと
大して変わりはしない。

最近の芹香の様子から、じじいと綾香、それにセリオが疑惑を感じ始めているようだ。
昨夜も夕食の後、綾香から芹香について尋ねられた。
ハッキリ言って、こっちが聞きたいくらいなのだが…そこは女性に底無しに優しい俺だ。
なんだかんだ言って適当な答であしらっておいた。
正直に自分の知っているコトを言っても良かったのだが、もし冗談に取られて
ボディブローの一発でもプレゼントされれば死ぬかもしれない。
藤田浩之、新婚旅行先の町アーカムで永眠……シャレにならない。
じじい、綾香は誤魔化したが問題はセリオだった。
セリオには綾香とは違う意味で冗談が通じない。
かなり悩んだが、そこはメイドロボマスターたる俺のこと。
いつもより当社比20%増しの『なでなで』により無理矢理納得させた。
ちなみにマルチは寝坊して昼頃起きてきた。

…昼頃になり国際電話で志保に連絡を取る。
現在は国際ジャーナリストとして活躍しているアイツのコトだ。
きっと現地にいる俺よりも多くの情報を仕入れることができるだろう。
当時はあかりではなく芹香を選んだことで俺に反感を抱いていた様だが、
やはり現在もそれは態度の端々に現れていた。
が、最後には引き受けてくれた。
やはり、持つべきモノは友だ、ウム。

…結局、今日は食事の時以外、芹香は皆の前に姿を現さなかった。
そういえば気紛れで食卓の片付けを手伝っていた際、芹香の座っていた座席の周り
から数枚の小さな鱗が落ちているのを見つけた。
何故だかわからないが、それらに対して漠然とした不安を感じられずには
いられなかった。

8/20

昨日と違い、今日は晴々とした日だ。
今日は芹香は独りで出かけている。
もちろん、じじいが許すワケもない。
「夕方までに帰る」と書置きを残し、勝手に出かけたのだ。
じじいは今にも飛び出しそうな勢いで出かけて行ったが、行き先もわからずに
どうやって探すつもりだろうか?

そういう俺は、おそらく芹香が訪れているであろう場所、インスマウスに向かっていた。
志保に調査を依頼した後、根性でもう少し自分で調べてみた結果、
インスマウスは過去、大規模な住民の一斉検挙が行なわれたらしい。
村で恐ろしい体験をした青年が官憲に通報し、検挙に至ったらしい。
実際にその青年がどんな体験をしたかはわからない。
ついでにいえばその青年も検挙が終了したあたりに行方不明になっている。
結局、真実はわからないままだ。

同日 AM11:57

村に着き、早速芹香を探す。
村は別段広いワケでもなく、すぐに見つかった。
芹香はこの村で唯一の宿、『ギルマン・ハウス』と呼ばれる民宿に
宿泊していた。
「夕方までに帰る」という言葉の信憑性を疑う必要を感じ始めた頃、
芹香が外出した。

後を追った俺が辿り着いたのは………