KAKAの奇妙な冒険 第3話 『悪霊』その正体! 「つ・・・ついに『姿』を見せましたね」 ゴクリと唾を飲み込み、千鶴は新城に視線を投げた。すると、彼女は無言で頷く。 ゴキュン! 楓の『悪霊』の腕が伸び、新城の『悪霊』を両手で掴む。 バン! 「へぇ。ここまではっきりとした形で現せるなんて・・・」 新城の首に、楓の『悪霊』の手形がめり込んでいる。 「意外ッ!」 楓の「悪霊」は、徐々に力を増していく。 「貴方も私と同じ様な『悪霊』を持っているんですね。そして、千鶴姉さん、貴方は『悪霊』の正体を・・・」 「知っています。しかし、新城さんも驚いているように、『悪霊』の形がこんなにはっきり見えるとは相当なパワーです!」 たらり、と新城の頬を汗が伝う。 「千鶴さん、貴方は妹さんを牢屋からだしてくれと言いました。手加減しようと思ったんですけど、この私の首を見て下さい」 『悪霊』の手形は、今にも新城の首をへし折ってしまいそうにも見える。 「予想以上の力に首が折れそうです。彼女のパワーにヘタをするとこっちが危ない」 『マジシャンズさおりん』はなんとか逃れようとしているが、楓の「悪霊」はびくともしない。 グオゴゴゴゴゴゴ! 「どうします?このままどーしてもというのなら、妹さんを病院送りにしちゃうかもしれませんよ」 千鶴は腕を組み、廊下に寄りかかった。 「構いません。試して下さい」 突如、新城の目が大きく見開かれた。 「おっけー!」 ムォン! 「えいッ!赤い荒髪(レッド・ヘアー)!」 新城が腕を振りかぶると、『マジシャンズさおりん』の口から何束もの赤い髪の毛が飛び出した。鋭い動きでそれが伸び、楓の口を縛り上げた。 「千鶴さん!いったいこれは!」 「ごめんなさい、耕一さん。お願いですから黙っていて下さい」 仕方なく、耕一は口を閉じ、二人のやりとりに目を戻した。 「い、息が・・・」 ゾゾゾゾ 楓の『悪霊』はゆっくりと目を閉じ、わずかながら楓の体へと戻り始めた。 「『悪霊』が引っ込んでいく。熱で呼吸が苦しくなれば、貴方の悪霊は弱まっていきます。正体を言いましょう!それは『悪霊』であって『悪霊』ではないもの!」 千鶴が、一歩踏み出した。 「楓!『悪霊』と思っていたのは貴方の生命エネルギーが作り出したパワーのあるヴィジョンなのです!そばに現れて立つと言うことから名付けて『スタンド』!」 ドンン! 新城は手形の無くなった首をさすりながら、 「どんなに力の強い人でも、息ができなければ死んじゃうんだよ。そろそろ部屋から出る気になったでしょ、楓さん」 しかし、換えではいたって冷静な顔つきで、 「いい加減にして下さい。私が出ないのは他人に知らず知らずのうちに危害を加えるからです。同じ『悪霊持ち」とは親しみがわきますが、このまま続けると・・・死にますよ」右手で棚にあったハサミを掴み、楓はその髪の毛を切り刻んだ。大きく息を吸い、再びスタンドを出すと、廊下にいる新城めがけて駆けだした。 ドドドドドドド! だがしかし、新城は彼女にくるりと背を向けてしまう。まるで、戦いの意志がないようだ。「貴方、どうして背を向けるんですか?こちらを向いて下さい」 新城はそれを無視し、廊下の壁によりかかって座り込んでしまった。だが、彼女の口の端は歪んでいる。 「千鶴さん・・・。見ての通り彼女を部屋から出しましたよ」 楓はスタンドをしまい、自嘲の笑みを浮かべながらフッと溜息をつく。 「してやられたというわけですね?」 「そうでもないわ。私は本当に貴方を病院送りにするつもりだったもの。予想外のパワーだったわ」 千鶴は楓ににこりと微笑み、 「新城さんは貴方と同じ能力を持つ人です。もう部屋の中で『悪霊』の研究をすることもないでしょう」 耕一はホッとした顔で楓の肩を掴み、 「よかった、楓ちゃん。ここを出てくれるんだね」 「耕一さん・・・」 ポッと楓の頬が赤らんだ。 「今回の事件は、柏木家の血筋に関係ある話なんです」 その光景にムッとしたのか、千鶴が唐突に話を切り込んだ。 「まず、この写真を見て下さい」 彼女が胸の内ポケットから出した写真を、耕一と楓は興味深そうに覗き込む。その写真には、彼等のよく知る人物が写っていた。 「俺の親父じゃないですか・・・」 千鶴は、1つ頷く。 「そう。これは耕一さんのお父様の写真です。それと、その横の人を見て下さい」 「この人は・・・?」 今度は、楓が尋ねた。 「この人は叔父様の古い知人の方です」 「そいつが、どうかしたんですか?」 千鶴はふぅっと溜息をつき、 「私たちは彼の息子の行方を追ってるんです」 「この人の息子さんがどうかしたんですか?」 千鶴は瞳に怒りをともし、 「あの人は邪悪の化身。名前はHIRO!!私たちはあの人と戦わなければならない宿命なんです!」 to be continued・・・ どうも、熊本不仁です。 第3話『悪霊』その正体をお届けします。 相変わらずつたない文ですが、入魂の一作です。 それにしても、横がはみ出しちゃってすいません。 今度からは気をつけたいのですが・・・。 なかなかどうして、私マヌケですから。 さて、次回には花京院役のあの人が登場します。 さぁ、誰でしょうか? 次回KAKAの奇妙な冒険『第4話 痕を持つ一族』をどうぞお楽しみに。