あなたにあえて その12 投稿者:グンヤ
「いひゃい、いひゃい、姉しゃんいひゃい」
 ここは商店街のはずれにあるラーメン屋。相馬がひいきにしている知る人ぞ知る店
である。あの後、ギャラリーの多さに気付き、相馬たちは逃げ出す羽目になった。で、
ラーメン屋の前まできたところで、芹香たちの乗った車が追いついてきたわけである。
そんでもって、ラーメン屋の中で、芹香ねーさんは綾香に事の説明を求めたのだが、
「…………」
 …いったい何をしてたんですか?…
「え〜と、ちょ〜っと姉さんの様子が見たくなって〜……」
「…………」
 …それがなんで相馬さん達に囲まれてたんです…
「それは…その〜…この二人の後つけてたらばれちゃって……」
「…………」
 …なんでそんなことをしたのです…
「あ、あはははは…」
 こんな問答を繰り返すうちに単なる興味本位でストーカーしてたのが見抜かれてし
まい、綾香はほっぺたグニグニの刑を芹香から頂く羽目になった。
「あの〜、来栖川さん。別に実害はなかったからそのへんで…」
 相馬が横から口を挟んだ。
「そおそお、そのとおり」
 と、綾香。あまり反省してない口調である。
 グニ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
「いひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「芹香お嬢様、もう、そのくらいで……」
 やっと芹香は手を離した。
「ああ〜、ほっぺたが〜〜」
 綾香、涙目。それはほっといて芹香は周りを見た。店内の様子を興味深そうに見渡
している。
「来栖川さん、こういう所珍しい?」
「当然でしょう。普通こんな所に来ませんよ」
 源が苦笑混じりにいった。ちなみにセバスは芹香と綾香がラーメン屋に入ることに
反対だったが、事情を訊きたかったし、立ち話も何だったので渋々了承した。すぐに
出るつもりだったのだが、綾香が、
「お腹空いちゃったし、せっかくだからここで食べてきましょ」
なんてことを言った。
「な、なりませぬぞ!!このようなものを食するなど!!」
「いいじゃない別に。姉さんもお腹空いたでしょ」
 こくこく。
「な、ならばこのような場所でなくとも…」
「嫌だったら、先に車のほう行ってていいわよ」
 結局セバスは負けてしまった。どうやらこの執事さん、綾香に苦手意識を持ってい
るらしい。相馬も源も笑いを噛み殺している。
「でも来栖川さん、なにか用事があったんじゃないのか?」
「…………」
 何でも習い事の筈だったのだが、その先生が急病で休みになってしまったそうだ。
そこでセバスが気をきかせてしばらく車で辺りをドライブしてたら、あれに出くわし
てしまったということである。
 しかし、高校生の男女プラス黒服のガタイのいいじーさんが一つのテーブルでラー
メンを食べる様はかなり異様である。お客も店の親父さんも相馬たちを変な目で見て
いる。視線が痛い…。ちなみに芹香だけ子供用のどんぶりで、皆から分けてもらって
食べている。量が多すぎて食べきれないのだ。
 さて、改めて自己紹介をすることにした。
「いちいちストーカーされて、肘打ち出されちゃたまったもんじゃないですしね」
 源がクスクス笑っている。綾香は何も言えない。
「源翔です。で、こっちが」
「相馬純。剣道部主将。来栖川さんにマネージャーを押し付けた張本人」
「私は来栖川綾香。姉さんがいつもご迷惑をおかけしてます」
 ぺち。
「痛!!じょ、ジョークよ。姉さん」
 とりあえず和やかに(?)食事は進んだ。芹香はラーメンをかなり気に入ったみたい
である。それはともかく、綾香と源がしゃべっている。
「でもあなた、さっきの肘打ちよく避けれたわね。よほどの格闘家も避けれないのに」
「軽いですよ。あの程度ではね」
 ピク、と綾香の眉が上がった。
「へ、へえ〜…そう…」
「ええ」
 キッパリと言い切った。相馬は内心で苦笑している。源は天然なのか、わざとなの
か平然としている。綾香の髪が逆立っているのに気付かない。もしくはその振りをし
ている。
「じゃあ、本気の私と闘ってみる?」 
 じっと見て一言。
「止めときます。怪我しますから」
 どっちが、とは源は言わなかった。雲行きが怪しくなったところでセバスが声を発
した。
「お嬢様方。もうお時間でございます」
 いいタイミングである。う〜、と不満顔の綾香を芹香が連れ出す。勘定をすまし、
店を出た。
「相馬殿、源殿。今日は申し訳なく…」
「いや、俺達の方こそ失礼なことしてしまって…」
「…………」
「ええ、また明日道場で待ってますよ」
「それじゃ、また必ず会いましょうね」
 綾香が源をじっと見ながら、いや睨みながら言った。源は笑うだけである。
 車が走り去って、源が話し掛けてきた。
「からかいがいのある子でしたね」
 こいつやっぱり、と相馬は思ったが口に出したのは別のこと。
「来栖川さんて、お嬢様なんだよな」
「それがどうしました?」
「いや……」
 そんなお嬢様をラーメン屋に連れ込んでよかったのだろうか?マネージャーをやら
せてる事と言い、最近自分のしていることが少し怖い相馬だった。

 そのころ、車内では。
「…………」
「姉さん、まだ怒ってる?」
「…………」
「ご、ごめんね。そのお、姉さんのためにあの人達がどんな人か調べとこうと思って。
 全然興味本位とかじゃないのよ」
「………」
 …本心は…?
「いい情報入ったら姉さんに売ろうかなあ…なんて、いひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
 グニグニグニ。今日の芹香さん、ずっとご機嫌だったそうな

                  続きます 

 はう〜〜〜、書かなくてすみませ〜〜〜〜〜ん。
 終わるのかなこの話。

 感想です
 takatakaさま
 思いっきり笑わせてもらいました。セリオの映画最高です。
 
 あんBさま
 こんなおもしろいギャグも書けるなんてすごいです。びっくりしました。

 vladさま
 『鬼狼伝』の続きが楽しみで仕方ないです。浩之の試合が読みてえええええ!!(笑)