あなたにあえて その10(相馬サイト) 投稿者:グンヤ
 ここで時間を少々さかのぼる。
 剣道場にて、練習を終えくつろぐ剣道部の面々。いや、正確にはくつろいでるのは
相馬と源だけであとはへたばっている。いったいどういう体力の持ち主なのか剣道部
の謎の一つである。で、その間を芹香はトコトコと歩きながら飲み物やタオルを配っ
ている。と、相馬が源に話し掛けた。
「なあ、ゲン」
「わかってますよ」
「やっぱ、おまえもか・・・」
 なんか練習中、誰かに見られてる気がして仕方なかった。源も感じてたようだ。こ
の二人の勘も尋常じゃない。心当たりはまったくない。ひょっとすると入部希望者が
見学してただけかもしれぬ。さすがに芹香の妹が見学していたとは思いもしない。
「・・・・・・」
「あ、ありがと」
 芹香から飲み物を受け取った。
「だいぶ慣れてきましたね」
 源が笑いかけた。
「・・・・・・」
 少し照れる芹香。
「これからもやってけそうか?」
「・・・はい・・・」
 相馬がうれしそうに微笑んだ。芹香が来て部の雰囲気もやや変わった。以前のあま
りの男くささも少し緩和した。男ばっかでやや杜撰だった備品の管理もきっちりする
ようになった。何より芹香の放つ独特の雰囲気が皆の心を和ませてくれた。かなり荒
っぽい剣道部には貴重な存在である。
「そういえば来栖川さん、今日はどうしたんです?」
「・・・・・・」
・・・何がです・・・
「いや、ちょっと様子が変な気がしたもので」
「・・・・・・」
・・・何でもないです・・・
「そっか」
 それ以上は源も聞かなかった。雰囲気からたいした心配事じゃないと察したのかも
しれない。
「・・・・・・」
 ・・・妹参観日だったんです・・・
「「?」」

 しばらくして着替えと戸締りを済まし、相馬と源は、道場を出た。芹香は予定が迫
っているらしくすでに帰った。
「ラーメンでも食って帰るか」
「いいですね」
 校舎を出る二人。そしてその後をつける影が一つ・・・

              続きます