あなたにあえて その9 投稿者:グンヤ
 最近、姉さんの様子がおかしい、綾香はそう思った。春休みだというのに時間があ
れば学校に行っている。と、言うよりかなり強引に時間を作ってまで登校している。
姉さん、今まで学校行きたがらなかったのに。それも、姉にはかなり大きすぎるスポ
ーツバッグを持ってヨタヨタと朝も早く学校に行っている。
 ある日、綾香は野暮用で芹香の部屋を訪ねた。
「姉さん、いる〜?」
 留守だった。何気無く部屋を見渡す。
「はあ〜、相変わらずね」
 妖しいオカルトグッズがそこかしこである。
「ん?」
 たくさんの魔道書に混じって違う本が一冊。手にとって見ると題名は『剣道入門』
と書かれていた。
「け、けんどう・・・?」
あの姉さんが剣道?いきなり武道に目覚めたの?私のせい?いやそんなことより運動
の類がまったく苦手な姉さんがなぜ剣道?じゃあ休みだというのに学校行ってるのも?
などなど、想像をたくましくしていると当の本人が帰ってきた。
「・・・・・・」
 ・・・何してるんです?綾香・・・
「あ、姉さん、ちょっとこれどうしたの?」
「・・・・・・」
「…え、『剣道入門という本です…』て、そんなの見ればわかるって!姉さん、剣道
 なんかやってるの?」
「・・・・・・」
「…え?ちがう、剣道部に入部した。マネージャーとして・・・、姉さんが?」
 こくん。
「姉さんがマネージャー・・・」
 なんとも信じがたい表情で姉を見つめる綾香。
「じゃあ、その手に持ってるものは・・・?」
 芹香は両手いっぱいにタオルを持っている。
「・・・・・・」
 ・・・皆さんのおしぼりです・・・
 それ以外にも、スポーツ飲料の素だとかいろいろとある。
「それ全部持ってくの?ふーん、だからあんな大きいバックを…」
 芹香はのんびりとそれらをバックに詰め込んでいく。
「けどなんでまたマネージャーなんか始めたの?」
「・・・・・・」
「…え?スカウトされた。誰に?…剣道部の主将さん。へえ、なんていう人なの」
「・・・・・・」
 ・・・相馬純さんです・・・
「そうまじゅん・・・、どっかで聞いたような・・・?」
「・・・・・・」
 ・・・隻腕剣士さんです・・・
「ああ、知ってる!たしか全国で優勝したとかで新聞にでてた人でしょ。そういや姉
 さんと一緒の学校だったわね」
「・・・」
「へえ、そんな有名人にスカウトされたんだあ。ひょっとしてその人、姉さんに気が
 あるんじゃ・・・?」
 ニヤニヤしながら芹香をからかう綾香。
「・・・・・・」
 ・・・綾香!!・・・
 真っ赤になって照れている。
「ふふ、姉さんかーわいい。…ね、隻腕剣士ってどんな人なの?」
「・・・・・・」
 芹香は少し困っている。
「…え?とても強い・・・、そりゃそうでしょ。全国優勝するくらいだし。ほかには、
 もっと、こう……いろいろあるでしょ?」
 綾香の質問攻めにあってしまった。芹香はかなり困っている。ようやく解放された
時、綾香はとんでもないことを言い出した。
「ね、姉さん。私も剣道部、見学にいっても良い?」
「・・・!?」
「ねえ、いいでしょ?姉さんのマネージャー頑張ってる姿が見たいの」
 ふるふる。
「そんな照れなくたって。だいじょうぶ、物陰からこっそり見るだけだから」
 結局OKしてしまった。その上、何時来るか教えてくれない。不意打ちでたずねる
という。
「だって、何時来るかわかっちゃったら身構えちゃうでしょ」
 綾香はそれはそれは楽しそうに言った。そんな妹がちょっとうらめしい芹香だった。

                    続きます
 わーい、ずいぶん久しぶりのような気が・・・。おぼえてますか〜?
 見捨てないでくださいね〜。
 
 感想です
 久々野さま≪あなたにあげられるわたしのもの≫
 弥生さんかわいそすぎ(笑)

 笹波さま≪受信≫
 この一発ギャグのノリがとても好きです
 
 時間がきてしまったのでこのへんで。ほかの皆さんの作品も全部読んでます。
 感想は後日。