あなたにあえて その4−2 投稿者:グンヤ
       前回短すぎたので、その続きです

「申し訳ございませぬ」
「いいですよ、べつに」
 何せ今朝彼女にタックル食らわしてしまいましたから、とは決して言わない。相馬
達は文系クラブ棟へと向かう。途中、ふと気になることがあり相馬は聞いてみた。
「けど、その『オカルト研究会』とやらに来栖川さん、ほんとにいるんですか?」
「はい」
 お嬢様とオカルト研究会、あまり結びつかないのだが・・・
「ふうん、噂はほんとでしたか」
 源がつぶやいた。
「噂って?」
「いや、来栖川さん、オカルト関係にハマってる人だそうです」
「そうなんですか?」
「はい」
 セバスチャンと名乗る執事は答えた。そのまま三人は黙って歩く。この老人、何者
だろう?相馬は思った。名前もそうだが身のこなしも尋常じゃない。確実に武術をや
っている動きである。お嬢様の送り迎えをやるくらいだから警護も兼ねてるのかもし
れない。ただの執事じゃなさそうである。
「ここですよ」
 源が指差す先にオカルト研究会と書かれたドアが。
「どうもありがとうございました」
「いえいえ。それじゃ俺達はこれで」
 相馬と源はきた道をもどり始めた。背後でドアをノックする音と「芹香お嬢様、お時
間ですぞ」呼びかける声が聞こえる。「ドアを開けますぞ」次の瞬間
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・
相馬と源が振り返る。
「なっ!?」
オカルト研究会からだった。すさまじい風だった。徐々に体が吸い寄せられていく!?
「お、おい!?」
「な、な、な!?」
 立ってられないほどの風だった。二人ともオカルト研究会の前まできてしまった。
必死に踏ん張るものの手近に掴むものがどこにもない。結局吸い込まれた。パタン、
ドアがしまり静寂が訪れた。
 なかはすさまじい突風と轟音の嵐である。耳がおかしくなりそうだ。飛ばされない
ようにするのが精一杯である。
「お嬢さまあああああああああ、ご無事ですかああああああああああああああ!!」
この轟音の中にもかかわらずすごい声である。相馬は必死に目を凝らすと薄闇の中、
部屋の真中に少女が一人立っていた。何かポソポソ言いながら手招きしてる。ここに
来い、ということらしい。よく見れば少女の周りは風が弱い。
「ゲン、ぶじか?」
「ええ」
「あそこまでいくぞ」
二人は飛ばされぬよう手を組んで進んだ。ようやく先を行く執事に追いつく。
「執事さん、これは一体なんですか?」
「何、いつものことでございます、しかしなぜにここへ?」
「吸い込まれたんです!!」
 好き好んでこんなとこ来ない。目が慣れ少女の姿もはっきりしてきた。
「う・・・」
 相馬が真っ赤になってうつむいた。弱いものの少女の周りにも風がふいている。髪
がなびき、まとったマントもなびき、・・・その・・・スカートも・・・・・・
「見るでなあああああああああああああああああああい!!!!!!」
 ドメキョ!!
「おうっ!」
 相馬の鋼の腹筋を貫くすばらしいボディブロー。屈んだ相馬の上を壷が通った。
「あぶなかったですな」
「あ、あの・・・」
 源が困っている。
 ようやく少女のもとにたどりついた。やっぱり来栖川さんだった。
「く、来栖川さん、これ何?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「えっ、失敗!召還魔法の!?」
 そんなもんがこの世にあるのか?と言いたかったが現実に目の前で起こっている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「え、どうしてここへ?って。ま、まあ無理矢理に」
「吸い込まれてしまいまして」
「・・・・・・」
 ・・・入部希望者じゃないんですか・・・
「「とうぜんです!!」」
 それよりここから早く脱出したい。
「来栖川さん、これどうすれば・・・」
「・・・・・・」
 ・・・召還したものを退治します・・・ 
 と、そこへ突風で倒れた棚が来栖川嬢の真上に!!
「おじょうさまあああああああああああああああ!!!」
 ガバッと執事が覆い被さった。ゴン、ゴスと音がする。あまり時間をかけると何が
起こるかわからない。相馬が目を閉じた。感覚を研ぎ澄ます。・・・見つけた・・・
「ゲン!!」
「応!!」
「「はあああああああああああああああああっっっ!!」」
 ズシン! バンッ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 あたりはもうすっかり暗くなっていた。相馬と源、そしてセバスチャンが校門に向
かって歩いていた。芹香お嬢様はセバスチャンにおんぶしてもらっている。足をくじ
いたためだ。
「おかげで助かりました。相馬殿、源殿」
 礼をいわれた。
「いや、ははは・・・」
 あの時相馬と源は邪気の源に向かって気合とともに手刀を打ち込んだのである。そ
れで邪気は四散したが反動もすごかった。二人仲良く壁に接吻である。
「・・・・・・」
・・・ご迷惑おかけしてすみません・・・重くないですか?・・・
「なんのなんの、これしきで音をあげるほどヤワではありませぬ。私こそ、お嬢様を
 お守りしきれず・・・」
 なでなで
「ありがとうございます・・・」
 来栖川嬢が相馬達を見た。
「・・・・・・」
「ん、どうしてあんなことをしたのか?って。以前にも似たような目に会ってね。も
 しかしたら同じ手がきくかと思って」
 相馬が言う。
「・・・・・・」
 ・・・素質があるんですね・・・
 あまりうれしくない・・・
「それより、あんな危険なこともうしてはだめですよ。学校に知られたら廃部されか
 ねませんからね」
 と、源。
「・・・」
 ・・・はい。
 結局、部室の後片付けまで二人は手伝ってしまった。そのままズルズルと見送りま
でしている。校門にたどり着いた。
「・・・・・」
「え、かまいませぬ。旦那様には私がうまく説明いたします」
 そう言ったときのセバスチャンの顔はとてもやさしげである。
 来栖川嬢が相馬達をみつめた。
「・・・・・・」
 ・・・今日は本当にありがとうございました・・・
「いいって、別に。俺こそ今朝のこと謝らないと」
「・・・・・・」
「それより、今日はほんとよく会うな」
「・・・・・・」
 ・・・はい・・・今日五回あなたを見かけました・・・
「ほ、ほんとか?」
「・・・・・・」
 ・・・これが六回目です・・・
 相馬が苦笑した。なんとも不思議な縁である。
「さあ、お嬢様」
 セバスチャンが促した。セバスチャンからおりて、手を借りて車に乗り込む。最後
にセバスチャンはふかぶかと相馬達に頭を下げ、そして車が出ていった。
「あっ」
 源が声を出した。
「どうした?」
「早く着替えないと」
「うっ」
 二人ともまだ剣道着のままである。早くしないと部室を閉められてしまう。二人は
慌てて走り出した。結局間に合わず先生にお小言を食らいながら部室をあけてもらっ
た。どうやら今日はほんとに厄日かもしれない。帰路、相馬がため息をついた。
 
                    続きます 

 ようやく相馬と芹香さんが出会うことができました。(苦笑)しかもまだ一日
 しかたってない。終わるのかな、これ・・・
 ギャラさま、笹波さま、感想ありがとうございます。