あなたにあえて その3 投稿者:グンヤ
 放課後になった。
「それじゃ行きますか」
「おう」
 相馬と源、二人そろって部活へ向かう。
「部活ですか?」
 藤田である。廊下であった。帰るところらしい。
「まあな。お前もやってみるか?」
「冗談。剣道なんて柄じゃないっすよ。今年もいけますか?」
「さてね。時の運だからな」
 相馬は昨年の全国大会個人戦優勝者である。本人は余り自覚してないのだが、有名
でファンもいるらしい。が、相馬が有名な理由はもう一つある。
 部室にて着替える相馬。一見小太りに見える相馬だが服を脱ぐとわかる。全身筋肉
の塊といっていいほど鍛えに鍛えぬかれた身体だった。巌のようである。相馬は左手
を使って器用に剣道着に着替える。右手は使わない。なぜかといえば、ないのだ。右
腕が。これが、相馬が有名なもう一つの理由である。片腕の身体で全国大会で優勝し
てしまったのだ。おかげでテレビや新聞の取材をうける羽目になった。「隻腕剣士、
大会優勝」などと、御大層にかかれた新聞を見たときのこそばゆさ。この話を相馬に
ふると、あからさまに話をそらされる。恥ずかしいらしい。なぜ相馬が片腕になって
しまったかと言うと、昔事故に巻き込まれたからである。詳しいことはおいおい書く
として。
 さて、道場で練習である。相馬の練習は激しい。並みじゃない。まあ、並みの練習
で優勝できるわけないが。小太りな体型と以外に愛嬌のある顔立ちから一部で「タヌキ」
なぞと言われているが、道場では「鬼相馬」と呼ばれている。二年の夏、部長になって
からますます厳しくなった。あんまり厳しいため、部を二つに分けることにしたほど
である。相馬の練習についてこれる者は、あまりいなかった。相馬もそこらへんは心
得ているので、相手に応じてちゃんと練習メニューを考えている。望む者、あるいは
大会を目指すものにしか厳しくしない。
   ズシン!!!
 相馬の強烈な体当たりを食らい部員の一人が吹っ飛んだ。
「おら、立てい!!」
「応!!」
 そして日が暮れて、
「ふう、お疲れ」
「ええ」
 水を飲んでる相馬と源。あとの部員は水を飲みにいく元気もないらしい。相馬の練
習を耐えられるのは副部長の源だけである。
「帰りにラーメンでも食いに行くか?」
「いいですね」
と、そこへ
「あの、すみませぬが」
振り向くとそこには背の高い黒服の初老の男。
「なにか?」
「道をお尋ねしたくて。おかると研究会とやらはどこにありますか?」

               続きます
すみません、時間がきてしまいました。続きはまた