あなたにあえて その2 投稿者:グンヤ
「す、すまない、だいじょうぶか?」
 慌てて突き飛ばした相手に駆け寄る相馬。
「う・・・」
 言葉が出なくなった。眼の覚めるようなすごい美人。特にその黒髪の美しさときたら
そこらのモデルなんぞ裸足で逃げ出す・・・て、何見とれてる自分。
「大丈夫か?」
「・・・・・・」
「あ、あの」
「・・・・・・」
「もしもし」
「・・・・・・」
「けがでもしたのか?立てないのか?」
 ふるふる、と首を振る美人。
「じゃ、じゃあ」
 と、左手を差し出すが、きょとんとした顔で手を見つめるだけ・・・。
「ああ!もう!」
 強引に手を取り立ち上がらせ、ほこりを取ってやると同時にチャイムの音が。
「やば、いかねえと。すまなかったな」
 ダッシュで下駄箱へ。そこにはすでに靴を履き替えた後輩三人組。
「よかったっすね。まにあって」
「やけに残念そうだな。あいにく遅刻仲間になるつもりはないぞ」
「俺だって遅刻仲間なんかじゃないっすよ。真面目ですから」
「どっこに真面目少年がいるってえ〜」
 すかさず突っ込む長岡志保。
「うっせ」
 やいのやいの口げんかを始める二人。やれやれ、と呆れ顔の相馬と神岸。ふと神岸が
「そういえば相馬先輩」
「ん?」
「来栖川先輩、だいじょうぶでしたか?」
「誰?その人?」
「さっきぶつかった・・・」
「そうか」
「ひょっとして相馬さん、来栖川先輩のこと知らないんですか」
 いつの間にやら長岡志保。
「知らん」
「俺も」
「あんたには聞いてないわよ」
「んだとお〜」
「はいはい、後でやってくれ。で、その来栖川さんてどんな人なんだ?」
「あの来栖川財閥のお嬢様ですよ。来栖川芹香さん。相馬さんと同学年の人ですよ」
「そうなのか」
「もう、相馬さんはこれだから。もう少し情報というものに目を向けないと・・・」
 そこでチャイムがなった。相馬達は慌てて教室へ。よかった、チャイムが鳴って。
そうでなければ延々長岡のおしゃべりを聞く羽目になっていた。なんて思いながら
教室へ。すると一人の男子がやってきた。
「おはよ、間に合ってよかったですね」
「ゲン!おまえ一人でとっとと学校行きやがって!!何で起こさなかった」
「いやあ、一人で起きれると思ったんですけどねえ。とりあえず間に合ったからいいじゃない」
 この男、名は源 翔(みなもと しょう)、訳があって相馬家に寄宿している男で
ある。相馬とはかなり対称的な男で、痩せて背が高くものすごい優男。女子の間でも
すさまじい人気者ときている。相馬とは幼馴染で妙に気が合い現在にいたっている。
ちなみに相馬は源のことを「ゲン」と呼んでいる。それはともかく、
「しかし、どうして今日に限って寝坊しちまったんだろ」
「そりゃ、あんな馬鹿なことすれば寝坊しますよ」
「う・・・」
 夜中ついつい酒をこっそり飲んでしまったのだ。
「あ、あれはほんのちょっと・・・」
「・・・・・・」
 今、相馬家の台所には空の一升瓶が5本・・・。
「ギネスに挑戦、なんて馬鹿なことしてたら身体こわしますよ」
「はい・・・」
 先生が来たので慌てて座る生徒達。そして昼休みにて、
「今日は厄日かな?」
「なんでまた?」
「寝坊はする、人にぶつかる、授業じゃ先生に当てられまくる」
 散々な日である。
「そんな日もありますよ」
 昼の中庭、日差しもちょうどよく、気分よくくつろげる。不意に相馬が
「あっ!」
「ん?」
 源が振り向くとベンチでぼんやりと座っている女子生徒。
「彼女が何か?」
「いや、今朝ぶつかった人だ」
「それはかわいそうに」
 と、女子生徒に対していった。
「彼女、来栖川さんですね」
「知ってるのか」
「有名ですよ。まったく相馬は世間に疎い」
「う・・・」
 同じことを長岡にも言われた。
「彼女に体当たり食らわしたんですか?恐いもの知らずですね。夜中に黒服の男達
 が来なければいいですが」
「おどかすな」
 来栖川嬢はぼんやりと日向ぼっこをしている。きれいな人だなあ、相馬は思った。

 人の縁とは不思議なもので、相馬はもう来栖川嬢と関わることはもうないと思って
 いたが、再び出会ってしまうのである。
       
                  続きます
 二話です。なんかだらだら続いてます。これから少しずつ相馬と藤田達の関係、あ
 と、相馬のキャラクター設定を書いていきます。ちょっと変わったキャラにするつ
 もりです。