本当に起こったらイヤすぎる 雫編 パート2 投稿者:川村飛翔 投稿日:3月1日(水)01時46分
副題:人間の心は些細な事でも崩壊する

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細いシャープペンシルの芯をかちかちと伸ばし、
意味もなくノートのうえを走らせる。
やがて芯はポキンと弱々しく折れて、僕の頬をちくりと刺激した。
窓から流れ込む緩やかな風がゆらゆらと麻色のカーテンを揺らし、
色のない無声映画のような授業風景をよりいっそう別世界のことのように
感じさせている。西日の射し込む教室で、舞い散るチョークの粉を
肺いっぱいに吸い込みながら、濁った瞳の生徒達がかりかりと
文字の羅列をノートに書き続けている。
ここ数日の僕は、なにか不思議などろりとした時間の中を漂っている
ような気がしていた。

(中略)

そんなことを考えながら、何気なく視線を宙に漂わせていた時のことだった。
「くすくすくすくす…」
そう言う乾いた笑い声が教室中に広がった。
不思議なことに、その笑い声は音を失っていたはずの僕にも、
はっきりと聞き取れたのだ。
「くすくすくすくす…」
クラス中の生徒達がノートを走らせるペンを止め、不気味な笑い声の
主に視線を集めた。
笑い声の主は、僕の斜め前の席に座っている女生徒だった。
僕はもちろんその女生徒の顔を知っていた。
だけど名前は思い出せない。
彼女は焦点の合わない眼で窓の外を見つめ、教師に呼ばれたわけでも
ないのに、くすくすと笑いながら、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
西日に照らされた彼女のシルエットが、淡い影絵のように
向こう側の壁に映っていた。
「どうした太田」
黒板にミミズの這ったような文字の羅列を書き続けていた教師が、
チョークを持った手を止めて言う。
太田…そう、太田さんだ。生徒会の役員で、いつも何人かの女生徒達の
中心にいる女の子だ。
「うふ、うふふ。あは、あははははははは…」
くすくす笑いが、本当の笑いになり、太田さんは、
首から上を窓の外に向けたまま、愉快そうに笑い続けた。
クラス中が薄気味悪そうに彼女を見つめた。
「ちょっと、なにあれ?香奈子どうしちゃったの」
太田さんの笑い声に混じって、生徒達がひそひそと声を交わす。
そのとき、太田さんが両手でおもいきりバーンと机を叩いた。
一斉にシーンとなる教室。
目を丸くして見つめる生徒達の視線のなかで、彼女は低い声でひとこと、
「29日」
と言った。

(再び中略)

「うふ、うふふ。ちょうだい、ねぇ、ちょうだいよ。おしえて、頂戴。
わたしもう我慢できないの。ねぇ、いいでしょ?知りたいのよ。
29日が。2月29日!おしえてほしいの!おしえて、ねぇ、おしえてよぉ!
なやんで、ごちゃごちゃになったわたしのあたまに、意味教えてよー!
知りたい、知りたい、知りたいの!
2月29日が誕生日の人の年齢の数え方をおぉぉ!!
29日29日29日29日29日29日に109日にじゅうくにちに
じゅうくにちにじゅうくにちにじゅうくにちにじゅうくにちにじゅう
くにちにじゅうくにちにじゅうくにちにじゅうくにちにじゅうくにち
にじゅうくにちにじゅうくにち…」
生徒達の笑い声が、徐々にたち消えていく。
太田さんは、まるで壊れたCDプレイヤーのように
「29日」と言う単語を連発し続けていた。
笑っている生徒は、もう一人もいなかった。
今や誰の目にも、太田さんが尋常でないのは明らかだった。
「きゃああああああああっ!」
そのとき、寂然とした教室の空気を引き裂くように
女生徒の悲鳴がこだました。
生徒達は息を飲んで見ていた。
太田さんが、爪でガリガリと自分の顔を引っかき、
両手を血で真っ赤に染めている、その光景を…。

(三度中略)

「以前から少しノイローゼ気味だったとか…」
「まあ、ありそうな話だな」
叔父が苦笑する。
「素人考えで、生徒が精神障害をきたしたといえば、
普通はイコール、ストレスなどからくる神経症、
いわゆるノイローゼの類を想像する。おかしくなった
原因は、実生活のどこかにあるんじゃないだろうかとな。

(4度中略)

「…壊してあげたんだよ。…心を。…心をね、壊してあげたんだ。
…苦しいことも辛いこともみんな忘れ、1つの事だけを考えるように…」
「…ここ…を…壊し…た?」
「そう。ちょっと特殊な電波を使ってね」
「…でん…ぱ?」
月島さんは、自慢のおもちゃを見せびらかす子供のような、
とても嬉しそうな笑みを浮かべていた。

(5度中略)

月島さんの腕に抱かれた太田さんは、まるで東大受験前の学生のように
濁り血走った眼で苦しげに大辞林を開いている。
月島さんは、そんな太田さんの髪を優しく撫でた。
「…フフフ。こうなるとペットと同じで、可愛いものだろう?
下手に人間的な感情を持っていた頃よりもずっと可愛いよ」

(6度目中略)

「以前の太田さんは、うるさく僕につきまとうだけの馬鹿な
女の子だったからね。もう少しましにしてやろうと思って、
こんなふうに脳を改造してあげたんだ。
…そしたら、不思議と愛着がでてね。面白いからもう少し
だけ、遊んでやることにしたんだ」

(しつこく7度目)

「…ミズホ…ゴメン…ネ…ミズホ…ゴメン…ネ…ヤット…ナゾガトケタヨ…」
太田さんは、その言葉を繰り返し口にした。
「…いいの、もういいんだよ、香奈子ちゃん…」
瑞穂ちゃんの目からも大粒の涙が溢れ出した。

(最後の中略)


温もりを確かめ合うのだった。
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…このお話って、こんなんだっけ?
何かが違うような気がする。
僕は瑞穂ちゃんを腕の中に抱き留めながら、ふとそう思った。

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ども、お久しぶりです。
本当はこの作品は2/29に出したかったけど、そうも行かなくなってしまって・・・
ちなみに、この話の内容の10%がノンフィクションですのであしからず。
あと最近三角心シリーズとラブフォに凝ってます。
そのうち動画なんか作ったりして。プレミアあるから(ぉ

レス・・してもおぼえていらっしゃるかなぁ・・・(^^;;


>>久々野彰さん

>『君の血潮は熱く燃えているか?』 
千鶴さんって確信犯罪多いですよね(^^;

>龍二のキャラってこんなんなんでしょうか? 
う〜ん・・本来はもっと淡白なキャラクターだという話を聞いた記憶がありますが
以前どこかでリーフキャラ勢揃い(ほわるばまで)のリーフキャラ大宴会
とか言う作品で登場した時にはけっこうフランクな性格をしてるようです(^^;
誰も居ないのに雀卓の前に座ってたそがれてたりなど・・・(--
面白いのでこの性格を流用してるので正しい性格は知りません(^^;;

>だとしたら結構、面白く使えるかなとか思ったりしているんですが(笑)。
使えない事も無いとは思います。

>わざわざ全員呼ぶ理由になっていないところが
それでも彼には功労を労って欲しいものですわ(^^;
たかがあれだけの事で図書館に篭もって他社の作品にある
他所の高校(風芽丘)を借りたりしたんですから・・・


>>日々野英二さん
そろそろ見ない回数が多くなってきたので
作品に最初から大まかなあらすじを書いてみてはいかがでしょか
本筋も見えなくなってきたような気もしますから(ぉ


では、このへんで

http://members3.cool.ne.jp/~khrj/