ハンターエルクゥBLACK 〜二人の狩猟皇〜  投稿者:川村飛翔


「…もしや、そこにいるは叔父の柳川か!?」
俺が奥の方に向かって叫ぶと、
「さあ…皆の者、第二候補がお目覚めになられた……」
中心の者の一言で、三人のエルクゥが俺の方に向き直る。
「お前ら、一体何なんだ!俺達をどうする気だ!?」
俺が三人に怒鳴り散らすと、
「あなた方お二人は、それぞれこれから行う改造手術により、
我らの皇である生命皇の候補、狩猟王になるのです…」
狩猟皇だと?
「…そして儂は、皇を補佐する知恵の大皇官、ダロエル…」
ダロエルと名乗りし白顔のエルクゥが一歩踏み出す。

ザッ!

「俺は戦を司る戦いの大皇官、バラオエル!」
足音を立て、バラオエルという蒼面のエルクゥがダロエルの右側に並ぶ。

スゥ…!

「そして私は、レザムの未来と政(まつりごと)を生命皇に伝える予言の大皇官、ビシュエリ!」
音を立てず、ビシュエリと名乗る女エルクゥはダロエルの左側に並ぶ。
「我らは三人揃って三皇官と呼ばれる…」
ダロエルがさらに一歩踏み出す。

…こいつら…。
エルクゥの三皇官か…。
…この気迫、ただ者じゃない。

「貴方はこちらの都合で、急遽生命皇の第二候補に選ばれたのです。
この記憶の改造手術が終わりし時、貴方様と彼方様は共に己を鍛え合い、
最後は狩猟皇同士で闘って、生き残った方が生命皇候補になる…」
そのバラオエルの言葉と同時に、三皇官が柳川を囲んだ。
ダロエルが、爪を伸ばした右手を柳川の頭の上にかざそうとする。
一体何だ…嫌な焦燥感に駆られる。
「…くっ、柳川!!」
俺の叫び声が届いたのか、柳川の目が開いた。

「…俺は…一体何を?ここはどこだ…?」
「気が付いたか、柳川!」
「…お前、次郎衛門か!?一体何をしている!?」
俺の呼びかけに気が付いてくれたようだ。
しかしダロエルは、柳川の頭の上に手をかざして何かを始めている。
「柳川叔父!頭上に気をつけろ!」
俺の声に気が付いた柳川は、慌てて周囲を見回す。
そして柳川はダロエルの姿を認めると、
「お前達は…先ほどの鬼共か!」
縄製の浮き床の上で藻掻く柳川叔父。
俺も先ほどからこの縄の浮き床から抜けようとしているのだが、
縄が全身に張り付いてる所為で、降りるに降りられない。
やがて、ダロエルの右手の指から光の束が、柳川の頭に刺さる。

…フィィィィ…ィィィ…ン!

「…くっ、…あがっ…くっ!…があぁぁっ!」
時間が経つに連れ、柳川は苦悶の表情を浮かべる。
くそっ!このままじゃあ駄目だ!
「柳川ぁ〜〜っ!!」
俺は叫びながら縄と縄の隙間から手を伸ばす。
「…くっ、次郎衛門!!」
向こうも俺と同じように手を伸ばしてきた。
…あと少し、あと少しで手が…。
俺と柳川との距離はさほど離れていない。
もう少し無理をすれば手が繋がる。
そのような事をしても無駄なのは分かっているが、
これが今の俺達に出来る、無理矢理エルクゥにされる
事へのほんのささやかな抵抗だった。
その刹那だった。

…ヒュゥゥォォォオオオ……!!
……ガッ!

「ぬおっ!?」
ほんの一瞬の間に通り過ぎた何かがダロエルの手首の向きを
強引に変えたため、指から放たれる光の束があらぬ方向に飛び交う。

…フィィィィィ……!
…ブチッ!ブチブチィッ!

あちらこちらに飛び交っていた光の束は、俺の自由を奪っていた
縄を切り裂くと、たちどころに消え去っていた。
「……はっ、柳川!」
俺は柳川の姿を探した。

…フィィィィィィィ……!

「き…貴様…!」
「…やらせは…せん!」
柳川は縄床の上で、ダロエルの指から放たれる光の束を
天井に向けるようにするために、ダロエルの手を固定していた。
「ビシュエリ、奴を抑え付けるぞ!」
「はい!」
バラオエルとビシュエリが柳川を止めに行こうと動いた。
しかし、柳川はそれを察すると、
「…そうは…させるか!」
ダロエルの手を強引に直角に曲げ、光の束を二人に向ける。
光は二人の足もとを薙ぎ、その床に亀裂を走らせる。
「柳川っ!」
「…次郎衛門!…早くここから…逃げるんだ!」
「でも、叔父上はどうするんだ!」
「俺に構うな!俺が時を稼いでいる内に早くここから去れ!」
ダロエルは必死に柳川の手から逃れようとするが、
柳川はその手を外させようとしない。
しかし、柳川の力ってあそこまで強かったか?

あまり記憶にないが、討伐隊が返り討ちにされたあの時
目の当たりにしたエルクゥの力は、人間を遥かに凌駕していた。
前にやった力比べで俺に負けたはずの柳川が、何故?
ダロエルは、様々な方法で柳川から逃れようとしているが
柳川はダロエルの手を押さえ付けてる状態でも、それをかわしている。
「ダロエル!さっさとその電光線を止めないか!」
バラオエルがダロエルに怒鳴り散らす。
「…無駄だ、この光線は…儂自身には止められん!
それより、お前達は第二候補が逃げないように確保するのだ!」
ダロエルが二人に向かって指示する。
まずいっ!叔父がくい止めてくれてるというのに、
このまま捕まったら元も子もない!

…フィィィィ…バジッ!
バジジジジィィッ!

三皇官が俺を捕まえようとした直後、それは起こった。
ダロエルの指から放たれる光がこの部屋の天井のどこかを薙いだ瞬間、
天井から降りた何本ものの白色の稲光が、部屋の中で暴れ出した。

ババババッ!
バババ…バジバジッ!

「ごおおおおおっ!」
「ぐわぁぁっ!」
「あああああっ!」
皓き稲光は三皇官の身体を貫き、彼らに苦痛を与えている。
俺もそれに巻き込まれそうになったが、辛うじてかわす。
「ぐうっ…!うわぁぁぁぁっ!」
だが、それは柳川にも被害を及ぼしていた。
「柳川!」
「俺に…くっ、構うなと…言っただろ!早く…ここから…逃げろ!」
柳川は苦悶の表情を浮かべながら俺に叫んだ。
……畜生!
俺はその場に背を向け、走って逃げた。



次郎衛門がヨークの中心部にある部屋から逃げだして
通路に出たその直後、部屋を満たしていた電撃は収まった。
だが、そのおかげでダロエルは柳川の手の拘束から抜けだす事が出来た。
同時にダロエルの指から放たれていた光線も消え失せた。
「ダロエル!この様はどういうことだ!一体何が起こった!」
バラオエルがダロエルに詰め寄ると、
「…分からぬ。だが、あの時に、何者かが儂の手の向きを変えたのだ…。
本の一瞬とはいえ、我らが母星レザムに残りし者も含めても、全てのエルクゥの中で
戦闘能力が高く、基本感覚が鋭敏な我らでさえ、視覚に捉える事が叶わなかった、
驚異の瞬発力を持った何者かが…。恐らく、同族の仕業だろう…」

…ジジ…ジジジッ!

僅かに上から小さな火花が散る。
ダロエルはとうに気を失っている柳川に目を向ける。
「このお方は先ほどの高圧電子流で、生命力が衰弱している。
このまま狩猟皇の肉体へと変身させれば、その先は自滅…」
「当分の間は、生命維持装置の中で生命力の充填が出来るように
なるまで、このお方は眠らせておくのが良いかと…」
「よし…第一候補は、ビシュエリのその方法で進めるとして、
早急に残る第二候補の確保に参ろう。そう遠くには行ってないはずだ…」

ヴゥゥゥン…!

ダロエルは手から発した光を柳川に当てる。
その光は柳川を包み、彼を閉じこめるように透明な球体を作り出す。
球体の中で柳川の肉体は、昆虫の蛹のように変化していく。
その様子をダロエルは見届けると、
「さあ!第二候補、柏木次郎衛門の追跡だ!」

スウッ…

音もなく、三皇官の身体は宙に浮く。
そして次郎衛門の後を追うためにヨークの中の探索を始めた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ども、ここ最近忙しい毎日の川村飛翔です(--;
その所為か前回書いた作品のレスが拾いきれませんでした
久々野様と日々野様以外に私にレスを入れてくれた方がいらっしゃいましたら
お手数ですがもう一度入れていただけないでしょうか…

(出来る事なら、この作品に付いても感想欲しい・・・)

では、拾えた分のレスです


>>久々野彰さん
<私から〜2>
とりあえずで食べる冬弥って一体・・・・


>先輩と委員長はどちらが頭がいいか
普通に授業を受けているのならば1年上の先輩が上なんでしょうけど、
委員長は神戸のかなりレベルの高い大学に進学しようとしてるだけあって
レベルの高い進学塾に通っている事実がありますから・・・
でも、名門のお嬢様なら多分家庭教師を別に雇っていそうですしねぇ・・・
頭の回転率を考えると委員長の方に軍配が上がりそうですが
先輩も意外と振り子の速度をわかっていて言わない確信犯だったのかも・・・(^^;
あ、でもあのシーンでの車の中でわかっていたなら、条件を聞かずに
答えを導き出した先輩の方が上でしょう
条件を聞いて答えを出した委員長の計算の早さも凄いのですが…

結論:先輩は想定計算の上で頭良し
      委員長は計算速度で頭よし

知識量も加えるなら先輩の方がダントツで上でしょう(オカルト知識の分)


>>日々野英次さん
何かしばらく見ないうちに凄い事になってますな・・・

>黒いバッタモン復活
見た目はスト○ンガーにそっくりだけど・・・
まあ、原作者がいないのにいい作品が出来上がったケースは
殆ど無いので、あまり期待は出来ません・・・
ちなみに今こっちのTVでは宮内さんが変身して頑張ってます

余談だが、このシリーズで一番キックやパンチが速いのはこのシリーズなのだ・・・
なぜならパンチやキック中に手や足から摩擦熱が発生してるからだ・・・


それではこのへんで
キリストは明るい人じゃなくてクライスト・・なんてな
では

http://members3.cool.ne.jp/~khrj/