お茶の間ハトハト劇場EX「雅史の受難!コレがあたしの生きる道」  投稿者:小林 道友


これまでのあらすじ。
結局、来栖川総合病院での検査の結果は名実ともに雅史が女になってしまったことを裏付けていた。
ただでさえ混乱していた俺とあかりだが、そこに雅史の彼女である琴音ちゃんが現れたことで
より自体は深刻化の一途をたどることとなってしまった・・・・

お茶の間ハトハト劇場EX「雅史の受難!?これがあたしの生きる道!」第4話
(SEとともにマルチの両手が現れて、手の間にタイトル)
「戦慄の矢島」
「うわぁぁぁぁ!」
がばっ!
「ひ・・・浩之ちゃん?」
「あ、あかりか・・・・」
みるとカーテンの隙間から、薄く朝の光が射し込んでいた。
最近はあかりの奴、窓下で騒がないで直接俺の部屋まで入って起こしに来てくれる。
つきあい始めて2週間ほど立ったときに合い鍵を渡して置いたのだ。
こう言うとき、幼なじみが彼女って言うのは親からも信頼あるよな〜。
まあ、今朝の場合は夕べ一晩中愛しあっていたからすぐそこに居てくれたけどさ
はだけたワイシャツの隙間から見える胸の谷間がまぶしい。
「夢か・・・・」
俺は額の汗を拭いながら頭を巡らす。
「どんな夢だったの?」
あかりが心配そうな表情で俺に聞いてくる。
「雅史が・・・・・・女になった雅史が・・・」
それを聞いた瞬間、なぜかあかりの表情が不気味に歪む。
「あかり?」
「それは良かったね・・・浩之も、わたしの事を」
そう言うと、表情を隠す。
「おい、どうしたあかり?」
だが、降り向いたその顔はあかりではなかった。
「おはよ、ダーリン☆」
「うっぎゃあああああああああ!雅史ぃぃぃぃ!?」
がばっ!
「はっ・・・・・」
朝の光が、窓から射し込んでいた。
雀の鳴き声が、窓の外から聞こえてくる。
「今度こそ・・・・」
夢であったようだ。パジャマの背中が、べっとりと汗で張り付いてる。
カレンダーは土曜日、今日出れば学校は休みだ。
見るとベッドにはあかりの姿はない、下で朝飯でも作ってくれて居るんだろうか。
ほう、と溜息をつきベッドから降りる。
昨日はさんざんだったな、と思いながら制服に着替えて下に降りる。
雅史が女になる、と言う突拍子も無い事件のせいで
昨日の放課後を殆ど俺達は棒に振るハメになってしまったのだ。
あまつさえ雅史の彼女である琴音ちゃんにもバレて騒ぎは拡大し、雅史は身も心も
すっかり女の子になっちゃって琴音ちゃんそっちのけでどうも俺に怪しい事を仕掛けてくる。
雅史が女の子になってしまったことをどう誤魔化すかについては、先輩が来栖川の
ルートを利用して細工をしてくれるらしいが・・・・・・。
台所ではあかりがパジャマの上だけにエプロン姿で朝食を作っているところだった。
「おう、お早よ。」
「あ、浩之ちゃん・・・いま出来た所だよ」
くるりとあかりが振り向く、うーん、新妻気分。
「あかり、お前のそのカッコ。なんだか妙に色っぽいな」
ホント言うと、裸エプロンって言うのもいいんだけどな〜
「辞めてよぉ、恥ずかしいなぁ」
あかりが赤面して笑いながら俺の胸を小突く、何とも言えないハッピームード。
そのままテーブルに向かい合って朝飯を取る。絵に描いたような恋人同士の朝食風景だ。
(ああっ!俺って極甘シーンが書けないっ(泣)By小林道友)
だが、そのハッピームードも、お互い制服を着込んで玄関を出るときには薄れていた。
「どうするの、浩之ちゃん・・・・・・」
「どうするって、そりゃやはり気になるだろ、雅史の事は」
そう、やはり雅史のことは気になる。そこで俺達は雅史の家に寄っていくことにしたのだ。
「でも、あんまり気が進まないよぉ・・・・・・」
「・・・・・・」
あかりの言葉に俺はハァ、と大きく溜息をつく。俺も正直言って気が重い。
夢であったら覚めて欲しい。
雅史の家は俺やあかりの家からはやや離れた所にある、距離はわずか
数百メートルだが、それが今日の俺達には数キロメートルに感じられた。
雅史の家の前に来ると、見覚えのある車が一台、玄関の前に停まっていた。
「先輩ん所のリムジンだ・・・・・・」
おおよそこの辺りの雰囲気にそぐわないメルセデスベンツ・マイバッハの大型リムジンは
間違いなく学校でもよく見かける来栖川家の物だった。
「おや、藤田殿、神岸殿もですか」
リムジンの窓が開き、先輩の執事をやっているセバスチャンこと長瀬源四郎が顔を出す。
相変わらず、濃い爺さんだよなぁ、このさわやかな季節の朝から暑苦しい。
「あ、お早うございます」
あかりが頭を下げる。
「おっさん、なんでまたこんな所に?」
俺が聞くと、セバスは露骨に顔をしかめる。
「お嬢様が自分の失敗は自分で片付けると言い出してな、こうしてわざわざ
佐藤殿を迎えに上がっていると言うわけなんじゃが・・・」
「へぇ・・・まあ、先輩らしいか」
後部座席の窓が軽いモーター音を立てて開く、見ると先輩がそこにいた。
「おはよ、先輩」
どうやら綾香は居ないようだ。
そのまま先輩はドアを開くと、雅史の家の玄関の前に降り立つ。
「・・・・・・」
「え?佐藤さんは大丈夫か?。まあ大丈夫とは思うけどね」
俺もあかりも、正直言うと自信がなかった。
雅史の家のチャイムを押すと、暫くどたばたした音が聞こえた後、やっとドアが開いた。
「あら・・・・・・浩之君にあかりちゃんじゃないの。それに・・・・・・」
そう言って玄関から顔を出してきたのは雅史の姉である千絵美さん。昨日連絡して置いたので
わざわざ来てくれていたのだろう。
さすがに千絵美さんも自分の家の玄関の前に停まった見慣れないリムジンに驚いているようだ。
そりゃ、日本じゃこんなゴツイリムジン、一生乗らずに人生を終える人の方が多いんだから。
「あ、こっちはうちの学校の先輩の来栖川芹香さん」
ナイスフォロー、あかり。
「・・・・・・」
「あ、よろしく」
黙って頭を下げる先輩に思わず初級英会話のごとき挨拶をする千絵美さん
さすがにあっけに取られているようだ。
「千絵美さん、雅史は?」
あっけに取られていては話は進まない。俺は千絵美さんに問いただす。
「あ、雅史ね。いやぁ、なんだかすっごく可愛くて可愛くて☆」
あ、千絵美さんの地が出て来た・・・・・・。前から雅史を女装させるのが
趣味だったようだけど、本当の女になって喜んだのは間違いなくこの人だろうなぁ・・・・・・。
「雅史―!出てらっしゃーい!」
千絵美さんが家の奥に向かって大声で叫ぶ、雅史、お前もとんでもない姉をもって不憫だなぁ・・・。
おどおどとした空気が中から漂ってくる。幾分でもなく小柄な女が一人、玄関に出てきた。
雅史はもともと背が高い方じゃなかったが、女になってしまうと余計に背が低く見える。
「・・・・・・」
うちの学校の女子制服が、偉く違和感無くはまって居るんですけど(^^;;;
「・・・・・・」
俺達を載せたリムジンが走り出してまもなく、先輩が事情を話し始めた。
とりあえず雅史は昨日交通事故で入院しており、状況を許さない状態にあると言うことで
今の雅史は本来の雅史の遠縁の親戚で「真奈美」と言う名前で登校する事にして有る。
と言う話だった。
その話を聞く限り、よほどのことがなければ雅史だと言うことがばれなさそうだ。

その日の授業は、雅史改め「佐藤真奈美」の転入で俺のクラスは沸いた。
その盛り上がりのなかで、俺とあかりだけはそれに乗れないで居た。
当たり前だろ、なまじっか事実を知ってるだけについ物事は覚めた視点で見てしまうのだ。
そんな中、事件は起こった。
3時間目が終わり、最後の授業の準備をしているときだった。
「なあ藤田・・・・・・」
いきなり俺に話しかける声、見ると背の高い男。今年の春にあかりに惚れただの
なんだの言って俺に仲介を頼んできた男、矢島だった。
「なんだ?あかりのことならお断りだぞ」
矢島はその言葉に全然ひるんで居ない、それどころかふっと笑みを浮かべると。
「もう、神岸さんのことはあきらめたよ。今度はお前に折り入って頼みたいことがある」
そいつは良かった、と思いつつも明らかに不信感を強める俺に、矢島は続ける。
「今日、転校してきた子が居るだろう、佐藤の親戚とか言う子」
「はぁ!?」
俺はあっけに取られて矢島の顔をまじまじと見つめる。何か飲んでいたら
おそらく矢島の顔面に思いっ切りぶっかけていた所だろう。
「あの子・・・・・・なんて言うか、俺の好みなんだ。こう、適度に幼くて
かつボーイッシュな感じがこう、神岸さんとは違うタイプだけどさ」
俺は矢島の話の後半は半分も聞こえてなかった。真相を知らなければ、女性化した
雅史はきわめて魅力的な美少女に見えるだろう。だがそれはそれ、これはこれ。
俺としては女性化した雅史に惚れる男が出るとは思いも寄らなかった。
「で・・・・俺に何を頼みたいんだ?」
背中を冷や汗が流れるのを悟られないように俺は努めて冷静な口調で
矢島に問いかける。
「決まっているだろ」
びしっ、と俺は凍り付く。
「佐藤に頼もうにも入院中で面会謝絶で無理、ならば佐藤と幼なじみで有る程度の
面識もあるだろうお前に頼むのが道理じゃないか」
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
ずりっ、と俺はイスからずり落ちる。
「そ、そんな無茶苦茶な!お前が自分でモーション掛けろよ」
「そこを曲げてたのむっ!」
「・・・・・・一言言っておきたいが、良いか?」
あかり、お前もこんな奴に惚れられて災難だったなぁ。俺は怪訝な顔をする矢島を
人気の無い男子トイレに連れてきた。
「なんだよ藤田、こんな所に連れてきて・・・・・・」
俺はふぅ、と溜息をつくと矢島の両肩をがしっ、と掴んだ。
「矢島・・・一言言わせてくれ、あの子はな・・・・・・」
「あの子は?」
俺は状況を誤魔化すため、必死で考えた言葉を放った。毒電波修正+3。
「あの子の・・・・身も心も。雅史・・・佐藤の物なんだ。俺でもどうしようの無いぐらい」
ぴしっ!
空気が凍り付く音が聞こえた。
気がつくと矢島はトイレの壁にもたれかかり、肩をふるわせていた。
「おのれ・・・佐藤め・・・あの子をそんなことにしていたのかっ!」

と言い放ってウォー・クライの雄叫びを上げる矢島。な、なんか勘違いしてないかオイ!?
「佐藤の奴・・・きっとあの子ににじり寄ってあんな事やこんな事を・・・・許さん!」
歯ぎしりをしながら怒りの咆哮を強くしていく矢島、おそらく頭の中では。
『真奈美・・・僕のこと嫌いなのかい?』
『そ・・・そんなことないよ、だけど・・・』
『僕は構わないさ』
そのまま真奈美を押し倒す雅史。最初いやがっていた真奈美もだんだんと抵抗しなくなり
『あっ・・・ああーっ!』
ってな感じで、青い果実が散華する妄想が走りまくっているに違いない。
「佐藤ぉぉぉ殺してやるぅぅぅぅっ!」
いきなり脱兎のごとき勢いで走り出し、トイレのドアを開けようとする、が。
いきなりトイレ全体に響く謎の口笛。曲はおそらくリヒャルト・ワーグナー作曲
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
「なんだぁ!?」
お、おい。ブギーポップでも出てくるって言うのか?
どごぉぉぉん。
唐突にドアが開く、むしろ吹き飛ばすと言った方が良いような開き方だ。
「・・・・・・」
そこにいたのは・・・
「佐藤さんに手出ししようって言うんですね・・・・・・」
全身に赤黒い闘気をマントのごとく纏い、目を爛々と輝かせた琴音ちゃんだった。
「ちょ、ちょっと待てよ琴音ちゃん!」
「藤田さん・・・止めないで下さいぃ・・・。こういう事をする人には」
いかん、目が完全にイッちゃってる。
「・・・・・滅殺です」
瞬間、辺りが白く発光して、琴音ちゃんの背中に
「天」の文字が浮かんだのは言うまでもない。
矢島よ・・・安らかに眠ってくれ。

To Be Continued

あ・と・が・き
綾香:「あのねぇ・・・道友?」
道友:「なんだね、綾香クン。マルチはどうした?」
綾香:「マルチなら豊胸手術受けに行ったっきり帰ってきてないわよ。そんな事よりなん
   なの、コレ?」
道友:「はっはっはっはっ」
綾香:「わらって誤魔化すな!プロット構成も考えないで始めるからこういう始末になる
   のをわかってないのかあんたは!」
道友:「まーね☆馬鹿話に徹すると決めた以上とことんやらないとね。中途半端にしたら
   かえって読者のみなさんに失礼っしょ」
綾香:「あんたねぇ・・・・・・」
綾香、退場。
道友:「あーうるさい話だった。さて、第4話いかがでしたでしょうか。
    次回では事の真相が少し見えてきます、お楽しみに。」

次回予告
真相は未だ見えない物語、解決の糸口はつかめるのか?
そんななか、雅史が俺とあかりに襲いかかる!俺達の愛は、貞操は守れるのか?
真実を暴くため、琴音は新たなる力を解き放つ。
次回、お茶の間ハトハト劇場EX第5話「サイコメトラーKOTONE」
風の向こうに、真実は見える。

http://www.iris.dti.ne.jp/~mititmok/