幻狼院リレーSS『隆山へ。−KizuatoILLMINA TION−』 投稿者: 幻狼院
 〜前回のあらすじ〜
 『会いたい』

 差出人不明の手紙。ただ一つ分かっていることは、それが隆山からのものであること。
 真実を見つけだすために、俺――柏木耕一――は小出由美子さんとともに旅立った。
 そして今、隆山駅へ――。



        隆山へ。−KizuatoILLMINATION−


                   第二話

                   大脱走




「ねぇ柏木くん。これからどうするの?」
「えと……」
 由美子さんをこのまま柏木家に連れていけば、血の雨が降るだろう。
 そこで問題だ。この俺がどうやって由美子さんをかわすか?

   1.ハンサムの耕一は突如置き去りのアイデアがひらめく。
   2.柳川叔父さんが来て助けてくれる。
   3.かわせない。現実は非情である。

 ……あれ? こんな選択肢だったっけ?
 まあいいや。当たらずとも遠からずだろう。

 俺が○を付けたいのは答え2だが期待は出来ない……。
 って言うか、期待する方がバカだ。
 偏屈な柳川叔父さんがアメリカン・コミックヒーローのように都合良く現れて、「待っ
てました!!」と間一髪助けてくれる訳がない。

「やはり答えは……1しかねえようだ!!」
「待ちなさい」

 ずべしっ!!

 ダッシュをかけようとした俺は、由美子さんに服の裾を引っ張られて派手にコケた。
「アイタタタ……」
「逃げようとしてもダメよ、柏木クン?」
「めめっめめめめめめ滅相もない」
「本当?」
「本当、本当。それよりさ、おなか減らない?」
「うん、そうね。どこかいい店知ってるの?」
「鶴来屋の本館、最上階にレストランがあるんだよ。そこはどう?」
「え? でも、高いんじゃないの?」
「大丈夫。心配ないよ」
 まずは作戦第一段階成功……ってトコか。

 レストランに着いた。
 本当はすぐにでも作戦を実行してもいいのだが、どうせだから料理を楽しんでからにし
よう。
 こんな料理が食えることなんて滅多に……いや、こっちに来ればいつでも梓の料理が食
えるか。
 とはいえ、数ヶ月の間貧しい食生活をしていた俺には、目の前をごちそうをフイにする
なんて出来ない。
 よって、喰う。
 ひたすら、喰う。
 はっきり言ってものすごいスピードだ。
 周りの人が驚いているのが分かったが、気にしてはいられない。
 これからもっとすごいことをするんだからな。
「ごっそさん!!」
 俺はそう言って立ち上がると、窓に向かって飛び込んだ。

 ガシャーン!!

 俺は、自分の中のエルクゥを解放して空中に躍り出た。
 流石に、この高さでは少しばかりダメージがありそうだが、背に腹は代えられない。

 ドスン!!

 大した怪我もせずに着地した。少しばかり足が痛いが、折れてはいない。
 とにかく、由美子さんには柏木家の場所を教えなかったから、追いつかれる前に柏木家
に着けば俺の勝ちだ。
「食い逃げだー!!」
「ガラスもぶっ壊しやがったぞ!!」
 上からそんな声が聞こえてくる。
 ……俺の心配はしないのか。

 走る、走る。
 もうすぐ、もうすぐだ。
 あの角を曲がれば柏木家……。
 あっ!!

 ドンッ!!

 急いでいたので人にぶつかってしまった。
「あ、すみません。急いでいたもので……大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。でも……」
「でも?」
「気を付けなきゃダメよ、柏木くん」
             ̄ ̄ ̄ ̄

 答え――3。

     カワセナイ。
     ゲンジツハヒジョウデアル。

 答え、3。


「それから、これ。ちゃんと払ってね☆」
 由美子さんが持っていたのは、レストランの食事代と修理費の請求書だった。


 絶望に打ちひしがれた俺は――

   1.おとなしく柏木家の門をくぐる。
   2.とりあえず関節を極める。
   3.第三走者(vladさん)という名の運命に身を委ねる。

                               続く

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 ども、くまです。
 まず最初に、八塚さんゴメン。
 徐々ネタのために選択肢いじってます。

>1.由美子さんを置き去りにして、一人で柏木家に行く。
>2.血の雨が降る事も気にせず、二人で柏木家に行く。
>3.「こんなの選んでられるか」って事で第二走者、くまさんの判断に任せる。

 これが本来の選択肢なんですが、え〜と……3ってことで(劇中でも3だったしね)。
 まあ、オーソドックスな展開でしょう。


 次回、第三走者はvladさんです。
 おそらく投げや関節が飛び交うお話になることでしょう。ね、vladさん?
(注・多分なりません)