幻狼院リレーSS『隆山へ。−KizuatoILLMINATION−』 投稿者: 幻狼院
「ただいま〜……って言ってもいつもの事ながら誰もいない、か」
 おんぼろアパートの我が家に帰りついた俺は、開口一番にいつもの言葉を紡いでいた。
 玄関を閉め靴を脱ぐ。近くのスーパーで買った食物などの入ったビニール袋を抱えなが
ら狭い自分の部屋へと足を踏み入れる。
「よ……っと」
 散乱したゴミや衣服、本を跨(また)ぎ冷蔵庫へと向かい、ドアを開く。ガサゴソとビ
ニール袋から肉や野菜や飲料を取り出しては冷蔵庫の中へと分別して放り込む。
「これで四、五日は持つ……かな?」
 誰も聞いていないのに独り言を呟くのは危ないと思わないこと。一人暮らしだとどうし
ても声を――たとえ自分の声でさえ――聞きたくなる時があるのだ。
 パタンと冷蔵庫のドアを閉めて、玄関へと戻る。目標は郵便受けだ。何故かと聞くこと
なかれ。今日の朝は急いでたからTVはおろか新聞さえ見ていなかったからだ。
「♪ ――♪」
 新聞を回収し、鼻歌を唄いながら新聞の間に挟まっていた広告を抜き取る。と、
――パサッ
「ん?」
 どうやら手紙らしきものが落ちたようだ。俺は二本の指で広告を挟んだ右手で手紙を拾
う。
(どーせまた、ダイレクトメールか宗教の勧誘かなにかだろーな……)
 そんな事を考え手紙の内容を――宛名よりも先に――見る。
 そこには――


        隆山へ。−KizuatoILLMINATION−


『会いたい』
 隆山の消印が押されている差出人不明の手紙には、その一言だけが書かれていた。


                   第一話

                   旅立ち


 う〜ん。
 手紙の差出人、だれだろ?
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 俺、柏木耕一は、大学の長期休暇を利用して隆山を訪れようとしていた。今は列車の中
でおとなしく景色を眺めながら座っている最中である。
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 そもそも俺が隆山に行くことになった理由は、冒頭の部分で述べたあの手紙のせいだ。
差出人不明なトコロが、俺の『興味』を引いたからだ。
 普通の奴ならあの手紙を悪戯か何かだと思い込んでごみ箱の中にポイするかもしれない
が、俺にはできなかった。『興味』のため。あるいは――『エルクゥ』の勘のためか。
 それに……俺は手紙を出した人物に心当たりがあった。だから行かないわけにはいかな
い。
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 心当たり……そう、隆山に住んでいる俺の従姉妹達――柏木四姉妹だ。おそらくあの中
の誰かが俺に手紙をだしたはずなのだ。けれど……
(『会いたい』って伝えるためにわざわざ手紙に書いて出すなんて……電話でも良かった
んじゃないか?)
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 俺は苦笑しながら、誰が手紙を送ったのかをちょっと推理することにした。

 まずは柏木四姉妹長女の、千鶴さん。彼女の場合……
『手料理を作ったので、食べてください☆』
――ブルブルブル……
 電話でこんな事を言えば俺が逃げてしまうことを見越し、手紙で端的に『会いたい』と
書いて送ったんじゃないのかと邪推してしまう……千鶴さんならホントにやりかねないか
ら笑うこともできない。
 今度は次女、梓。あいつの場合……まぁ電話で俺と話す時はほとんどの確立で世間話か
口喧嘩になる。でも梓はあれで結構……いや、壁に耳あり障子に目ありだ。もしこんなこ
と聞かれでもしたら地獄が待っている。
 三女の楓ちゃんと四女の初音ちゃんの場合………………
――ニタッ(<妄想中です)

「なに考えてるの? 柏木くん」
「………………いや、何も」
 左隣に座っている彼女の言葉で、長瀬佑介や月島拓也みたいに妄想の世界に飛んでいた
意識を、慌てて呼び戻す。
(あぶないあぶない)
 ポケットからちり紙を出し、鼻血を拭く。隣の由美子さんはジト目で睨んでいた。
 ………………
 ………
 …
 そう、小出由美子さんだ。
 この旅は本来一人旅だったはずなのに、何故か彼女が着いてきてしまったのだ。しかし
そのことについて一言でも文句を言おうものならエンゼルハイロウでバリアガードを封じ
られた後にプリズムシールを体力の尽きるまで連続で喰らうこと――ただし彼女の場合、
サイコゲージに上限がない――間違いなしだ。いくら俺が『エルクゥ』だとて、それは流
石(さすが)にきついものがある。
 まるで藤田浩之の幼なじみ、神岸あかりちゃんみたいだ。
 ちなみに今日は、列車に乗っている間中ずっと左腕を笑顔で抓(つね)られている。乗
車してから五時間、ずっとだ。
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 列車は揺れる。
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 無常にも、
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 後、七時間ほど。
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 ……鈍行だからね。金、なかったし。
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……
 左腕……変色してなきゃいいけど。
「なに考えてるの? 柏木くん」
「………………いや、何も」
――ガタンゴトーン……ガタンゴトーン……


「ん〜〜〜……ん! 疲れたわね〜〜〜!」
「そうだね、由美子さん……」
 計十二時間鈍行に乗っていたのだから仕方がないのかもしれない。由美子さんは背伸び
をしたりしながら身体をほぐしていた。ちなみに俺は、青いのを通り越してどす黒く変色
した――やっと解放された――左腕の血の流れをほぐしている。
 けれどそんな俺の行為を、まるで見ていないかのように由美子さんは質問してくる。
「ねぇ柏木くん。これからどうするの?」
「えと……」


   1.由美子さんを置き去りにして、一人で柏木家に行く。
   2.血の雨が降る事も気にせず、二人で柏木家に行く。
   3.「こんなの選んでられるか」って事で第二走者、くまさんの判断に任せる。


  ToBeContinued...


                                99/05/05
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≪アトガキ≫
 姫崎「………………」
 刹那「………………」
 八塚「……なんだよ、その目は?」
 姫崎「決まってるじゃない」
 刹那「愚者を蔑む目」
 八塚「……何故?」
 姫崎・刹那「「このSS、リレーSSにしては出だしが短すぎるから」」
 八塚「………………………………………………(涙)」
 姫崎「ということで」
 刹那「第二走者のくまさん」
 姫崎・刹那「「続き、がんばってねーーー!」」
 八塚「………………………………………………SeeYouAgain(ワカメ涙)」