幻狼院リレーSS 『ボコ志保〜怒りの浩之〜』  第三話−金色の流れ星− 投稿者: 幻狼院
 
 広い部屋。
 ナイフで肉を切る音と、咀嚼音だけが響いていた。
 その音の発生源は、顎鬚を生やした金髪の年配の男。
――バンッ!!
 大きな音をたてながら部屋――宮内貿易会社社長室のドアが開かれ、背広を着た若い男
が室内へと勢いよく入ってきた。
「社長!! あなたの財産と愛人を――」
――ババババババババババババババババババ……!!

「……Dad.コレは一体……?」
 社長室からの内線で呼ばれた宮内シンディが開口一番に部屋の中の状況を質問したが、
足元に機関銃を転がせたまま金髪の男は、ただ一言。
「さっき言ッた通リダ。片付ケを頼ム」
 ……沈黙が支配する社長室。呆然と立ちすくむシンディと、漫画のような風穴を身体中
に開けて白目を剥いき虚ろな声をあげながら倒れている(ただし血は流れてないが)若い
男と、ナイフで肉を切りながらそれを口へと運ぶ金髪の年配。


 上記の文章は、ここからの本文とはまったく関係がない。
 結局、何がしたかったのか……それは、レミィの父親と『餓○伝5巻』のワンシーンを
東鳩風に書きたかっただけである(爆)。
 さて、本番どうぞ!!



               ボコ志保〜怒りの浩之〜



「〜♪ んふふふふ〜♪ ふふふ〜♪」
 紅い夕日の中、弓矢を背中に背負った年の頃、16か17歳程の帽子を被った金髪の少女が
鼻歌を路地裏に響かせながら歩いている。と、
「待て! 待ちやがれってんだこのドサンピン!!」
「親分殺ったのはキサマだな!? ……宮内貿易会社の差し金か?」
 足を止める少女。
「黙ってねえで、名前を言えってんだ!」
 口元が、「へっ」と自虐気味に笑う。少女は、目の前に現れた二人の男に対し、ゆっく
りと言葉を紡ぐ。
「Name? そんなモノはとうのムカシに捨てマシタ……裏の世界に入った時カラ……」
「なんだとぉ?」
 凄む男A。しかし少女は意にも解さず続ける。
「だけど……ドコの誰だか判りませんが、私のコトをこう呼びマシタ……」
 夕日が、光の届かなかった路地裏に見える。そして少女の髪の毛――帽子からはみ出し
た髪の毛が、その光により輝く。ブロンドから、ピュア・ゴールドへと。
「血塗られた弓矢を持ち、生と死の狭間を繋ぐ金の瞬き……ソウ、『金色の流れ星』と」
――ババーン!!(SE)
 後ずさりそうになる男AとB。が、不意に思い出したかのように、両者が少女に親しく
話しかける。
「おまえ……宮内レミィだろ。思ってたより身長でっけえな」
「何やってんだよ宮内〜。おやじさんどうしてる? いや、それよりも前回『ハントマス
ター』って名乗ってなかったか?」
――ヒュヒュン! ヒュンヒュン!
「「のわぁぁぁあっ!!!!????」」
――ガラガラン!! ドスン!
 唐突に、レミィの弓が唸りをあげ、音速の矢が男達に襲い掛かった! そのまま二人は
頭に2発、心臓に2発の『コロラド撃ち』で倒れ伏し、路地裏のゴミ捨て場にブザマな音
を轟かせ絶命する。
「(はぁ……)」
 声なき声で溜息を吐く『金色の流れ星』こと、宮内レミィ。
 弓矢を背中に担ぎ直しながら、呟く。
「マタ、星が流れていく……」



               第三話 金色の流れ星


  夕方6時過ぎ。

「ちょっと……待てぇええええええっ!!!!!!」
「いやあああああああああああああああああああ!!!!!! ヤバいトコに売られるのは……
いやあああああああああああああああああああ!!!!!!」
――バタバタバタバタ……
 叫びながら路地裏を駆け走るのは、言わずと知れた藤田浩之と長岡志保。
「なんで俺まで逃げてんだあああああああああああああああああああ!!!!!!??????」
 答える物は誰もいない。代わりに、
「ガキどもはどっちに逃げた!?」
「あっちから声がした! 急ぐぞ!」
 という凶悪そうな口調の声が聞こえるのみ。
 ……何故こうなってしまったのだろうか。
 それは今から――


  10分前、某所病院。

 神岸あかりが救急車で運ばれた病院に、とりあえず浩之と志保は見舞いに来ていた。
「で、何号室なんだよ……」
「確か3階の……」
 受付で渡された病院案内のメモを取り出そうと志保。懐に手を入れ……
「………………あれ?」
 取り出していたのは、あっちの用語でチャカ。こっちの用語でハジキの拳銃だった。
「げっ!? なんでそんなモン持ち歩いてんだよ!!」
「い、いやあ……家に置いとくと危ないでしょ」
 浩之の絶句にかるーく答えたつもりの志保だったが、声が震えていた。
 しかし、今回は場所が悪かった。
――ガチャーン!
 静かな病院に、金属をぶちまけ落としたような音。
「「!?」」
 ゆっくりと、ゆっくりと音の発生源を見ようとする二人。
「………………」
「………………」
「………………」
 看護婦が器材を床に落とし、浩之達を見つめていた。
「いや、これは……そういうものじゃなくて」
 何が「そういうもの」なのかはよく判らないが、拳銃を持ったまま腕を振り、弁明して
いる志保。全然説得力がない。
「……ひっ」
 顔はすでに恐怖で引きつり、頭を左右に振っている。看護婦、一歩後ろへ。
「いやだからその……」
 志保、一歩前進。
「………………」
 浩之、どういう訳かぼうっとしている。
「……あのつまりそのこれはおもちゃであってじつぶつではなくて」
――カチリ、ズドーーーーーーン!!!!!!


  時間は戻り、再び路地裏。

「なんであそこで指をかけるんだよ引き金にぃいいいいいい!!」
「撃つつもりはなかったのよ私が悪いわけじゃないわよおおおおおお!!!!」
「説得力がまったくねえわボケええええええ!!!!!!」
 そう。撃ってしまったのだ拳銃を。天井に向けて。
 つい引き金を引いてしまったと志保は言っていたが……まあ、それはどっかにへち捨て
ておこう。問題は……ヤクザの親分が先程の病院に入院していて、その病室がすぐ近くだ
ったということである。

『なんだ!? どこの鉄砲弾じゃあ!!』
『東鳩組に喧嘩売るとはいい度胸じゃねえか、ああ!?』

 顔こそは見られてはなかったが、浩之と志保の逃げるトコの後ろ姿は見られてしまった。
 で、今にいたる。
「畜生! 志保てめえ生きて帰れたらぶっ殺してやる!!」
「んなこと言っても生きて帰れる保証はないでしょうがああああああ!!」
 適当に走りながら逃げ回る二人。彼らが走り去った後から、複数の足音が聞こえる。
「あ! ヒロ!」
「なんだよ!」
「あそこ! あそこに隠れましょ!!」
 志保は目の前を指差す。その先には、大きな――まだ建設途中の建物があった。


「……見つけマシタ」
 帽子を被った金髪の少女が、嬉しそうに口元を歪めながら笑う。
 今、目の前を走りながら通り過ぎた、哀れなる二匹の獲物に対して。
「どんなに一般人のフリをシテモ、身体に染みついタ硝煙の匂いは隠せマセン……」
 獲物達は、まだ建設が終わってない建物の中へと入っていく。
「あのビルは他に逃げ道はナイ……『袋の鼠』ネ」
 少女は、ゆっくりと歩き始めた……。


  ……1時間後。夜7時過ぎ。

「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「……静かね、ヒロ」
「そーだな……」
 外壁剥き出しの階段に腰掛け、ただ息を殺しながらじっとする二人。
 外の喧騒とは無縁の場所なのかもしれない。高さ20mのビルの、中間にいるのだから。
「………………」
 立ち上がる浩之。まだガラスのはめられていない素通しの窓から身を乗り出し、外を見
る。
「………………」
 何をするわけでもなく、ただそこから、外を、街を見下ろしていた。
「……やめなさいよ。さっきの恐いおじさん達に見つかっちゃうわよ」
「見つかるわきゃねーだろ。こんな場所好き好んで探す馬鹿が――」
――シュッ
「………………」
「ん? どったの、ヒロ」
 応えない。浩之は、熱くなった自分の右頬を触る。
「………………」
 濡れていた。
「ちょ……! ヒロ、それ!」
 血で。
 そして――
「はーーーーーーはっはっはぁ!!!!!!」
――バンッ
 笑い声。照明の点く音。その照明は、ビルの入り口付近で弓を構えている少女を照らす。
「『死神に抱かれたオンナ』、『矢じりをワインと一緒に飲みほすオンナ』、異名は様々
ダケドっ!!」
 どこからともなくドラムロールの音。芸が細かい。浩之達は――志保も素通しの窓から
身を乗り出し――驚きながらも冷ややかな目で少女を見下ろして、観察する。
「人は私のコトをこう呼びマス!! 『金色の流れ星』と!!!!」

                    ・
                    ・
                    ・

「ああ。あんた、レミィじゃない。思ってたより身長高いわね」
「『ハントマスター』って前回名乗ってなかったか?」
「Don’t say!! ソコのガール! 私の手下から持っていったブツを返して下さ
ーイ! 調べはついてマス! 返してくれタラ……」
「返してくれたら?」
 よせばいいのに聞き返す志保。『金色の流れ星』……いや、レミィは弓に矢をつがえな
がら、
「今ならトラボルタばりの『フェイス/オフ撃ち』で許してあげマス!」

                    ・
                    ・
                    ・

「……志保。生け贄になれ」
「嫌に決まってるでしょう!! ふざけた事言ってんじゃないわよ!!」
「Oh! それなら私に狩られてくだサイ!!」
 弓を限界まで引き絞り、10m上にいる志保に狙いをつけるレミィ。
「やべっ! 逃げるぞ、志保!」
 窓から身体を引っ込め、志保の腕を掴む浩之。
「待ってよ! どこに逃げるってゆーのよ!? 下に降りたらレミィに撃たれちゃうわよ!?」
「上に逃げるんだよ! 行くぞ!!」
「痛っ! 引っ張らないでったら! それに上に行ったって逃げられやしないでしょ!?」
「うるさい! とにかく逃げるぞ!」
 二人は階段を駆け上がった。


 弓を構えている手を、下げるレミィ。
「マダマダ、狩りはこれからデス」
 彼女は、落ち着いた動作でビルの中へと入っていった。


――キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイキュンキュンキュン……
 その頃、一台のヘリが離陸しようとしていた。
「長瀬。出発するわよ」
「かしこまりました、綾香お嬢様」
 そのヘリに乗り込む二人。来栖川綾香は、ヘリの運転主に言う。
「もし浩之達が戦闘に至ってるなら、止めないといけない! 急いで!」
 ヘリのプロペラ音に負けないぐらいの大声で言葉を出す。
 そして、来栖川家専用ヘリは暗い夜空へと飛び立った。


  ToBeContinued...


                                99/03/11
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≪アトガキ≫
 姫崎「どうしろというの?」
 刹那「無理があるって。この続きを書くのは……」
 八塚「俺もそう思う」
 刹那「じゃあ……」
 八塚「でも、限界に挑戦するのが人間ってもんだろ?」
 姫崎「違うでしょうが……死ぬ?」
 八塚「はは(乾笑)……ちなみに今回のネタは、

    『餓○伝』
    『ラ・ジオブ○ーダーズ』
    『エクセル・サーガ』
    『ジオブリー○ーズ』
    『HEL○SING』

    から拝借してます(苦笑)。ああ……どうしよ」
 刹那「今更後悔しても遅い」
 姫崎「次の人がちゃんと書いてくれるのを期待しましょ」
 八塚「(おもいきり後悔しながら)それでは、第四使徒の貸借天さん。
    続きをお願いしますぅ……では、書き逃げサラバ! SeeYouAgain!」