恋焦がれてあなたを焼き尽くす 投稿者: くのひち・トム
 この話をなかよぴを立ち読みした人さん(仮称)に捧げる…
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 彼女は俺のすべてを吸い尽くす。

 きゅっきゅ、きゅっきゅっきゅ〜〜〜すぽんっ!
「くあっ、弥生さ〜〜〜ん!」
「…………」

 弥生さんとの偽りの関係も、もう2ヶ月ほどになる。あくまでも事務的に振舞う彼女
だったけど、今日はどことなく嬉しそうに見えた。その弥生さんはBMWのサイドガラ
スに何かを貼っているようだ。
「弥生さん、何してるんです?」
 見ると彼女は『星』のステッカーを貼りつけていた。その隣には6つの、やはり『星』
が輝いている。
「いえ…、撃墜の記念に」
 撃墜?
「へっ? それはいったい何の――」

「なんの記念なの?」

 ――!! 突然、後ろから声をかけられビクッと一瞬身体が硬直した。この声は…
「由綺…どうしてこんなところに」
「えっと、あのね、弥生さんが冬弥くんの家に来るようにって…」
 なんだって!? 弥生さんこれはいったいどういうことなんですか? …そう訊ねよ
うとしたとき、

「藤井さんが私を手込めにした数です」

 弥生さんは、そう言った。……ほえっ? なんでそーなるぅぅぅ!!
「ゆ、由綺、じょ…冗談だからね」
「…………」
 返事がない。どうやら笑顔のまま硬直しているらしい。
 ぴきぴきぴきぴきぴきぴきぴきぴきぴきぴき……
 由綺の身体が小刻みに震えている。

 ぐるんっ!
 突然、由綺の目が回転し白目になった!

「うあぁぁぁ、俺は由綺に白眼視されてるぅぅぅ!!」
「えへへ、冬弥くん」
「笑うなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 怖いよう、怖いよう…

「弥生さん! いったい由綺に何を――」
 振り向いて弥生さんに抗議しようとしたとき、
 ずばーーーーん!
 後頭部に衝撃をうけた。――!? なんだ? 誰もいないのに…

 でも、俺は次の瞬間見てしまった。あまりにも重い現実を。
 由綺の腕がびろーーーーんと伸びて、俺をしたたかに打つ。
 ズームパンチ……。

「うわああああああ、そんなの由綺じゃなーーーーい」
 俺は普段のかわいらしい、すこし惚けた由綺に戻ってほしくて彼女に掴みかかった。
 ……が、次の瞬間由綺は消えていた。
 テレポート!?

 どこだ! どこにいるんだ、由綺! 落ち着け冬弥、心眼だ、心の目で見るんだ!
 ――上だっ!

 上を見ると、由綺が笑いながら空から降ってくるところだった…。


 …………いったいどこでなにをまちがってしまったのだろう。


 でももう、そんなことはいいんだ。俺は由綺と一緒に生きていこう。…たとえ彼女が
アイドルでヨガマスターでも。

「由綺…俺と――」
「ヨガファイアー!」
「うぁ、あちちちちっ。弥生さん、どうにかしてくれぇ!」

 いつの間にかマントを羽織った弥生さんが、目の前に立っていた。
「ご心配なく、後のことは私にまかせて安らかにお眠りください」
 バサッ。そう言い彼女はマントを取り去った。
 そこには――

 ――そこには、魅惑の淫魔モリガン・弥生がいた。

 ダルシム・由綺の嫉妬の炎に焼かれながら、俺は思う。

 ………大人ってずるい。