if 投稿者:ガンマル
誰かが呼んでいる。
大事なヒト
忘れてはいけないヒト
いや忘れなくてはいけないヒト・・・?
シルエットが・・・見えてくる。
だんだん大きくなっていく・・・
君は誰?
顔を見ようとするが、近くにいるのに誰なのかわからない。
もどかしい・・・誰なんだ?
君はいったい?


そこでオレは、はっと目を覚ました。自分のベッドの上だ。
「また・・・・・・あの夢か。」
ふと、顔に手をやると冷たい。
「涙?」
どうやら泣いていたらしい。
ここのところ、よくあることだ。
夢の中で誰かがオレを呼んでいる。
いったい、あれは誰なのだろう?
「・・・・・・・・・よっと」
オレはひとつ伸びをすると起き上がり、窓をいっぱいに開いた。
暖かい朝日、心地よい風、そしてさわやかな新緑の匂いを感じる。
「もう春か・・・」
そう・・・また春がめぐってきた。出会いと・・・別れの春が・・・。


マルチが研究所に帰ってから既に十年がたった。
しかし、いまだに再会の約束は果たされていない。
いや、果たされることはないというべきか。
オレはもうマルチに会うつもりはないのだから・・・
理由はなんてことはなかった。
ただ醒めてしまった。
それだけだ。
言い訳するなら、オレにとってマルチと離れていた時間はあまりにも長く、
青春が終わりを告げるのに十分過ぎたということだ。


なにも最初からこうじゃなかった。
別れた直後はオレはマルチとの再会のためにバイトしてせっせと金を貯めていた。
それこそ寝る間も惜しんでだ。
でも1年ぐらいたったころから、段々と少しずつマルチのことがはっきりと思い出せな
くなってきた。
それに気づいた時、オレは狂ったようにマルチと自分の接点を探した。
まるでマルチを忘れることが罪であるみたいに・・・


来栖川の研究所に行ってマルチに会わせてくれと頼んだこともあった。
(もっとも警備員に素気無く追い払われたが・・・)
そんなことをしているうちにだんだんと記憶にあるマルチの顔も声も
ぼやけてくるようになった。
怖かった。
自分がマルチを・・・最愛のひとを忘れていくことがたまらなく怖かった。
もう顔すら思い出せない彼女に震えながら謝り続けた事もあった。


そして数年が経ち、とうとうマルチの顔も声も思い出せなくなった時に
オレを待っていたものは
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意外にも解放感だった。
もう顔すら思い出せないマルチに対する罪悪感と
彼女のために大金を稼がねばいけないという強迫観念。
この二つからオレは解放されたのだ。
 マルチと出会った瞬間からオレの人生は彼女のためにあった。
彼女と別れてからは彼女との再会のためだけにだ。
しかし、それは同時に藤田浩之という一人の人間の社会生活を打ち砕くことになった。
オレがマルチを選んだことで、あかりとは疎遠になり、
マルチのために忙しいあまり、雅史や他の友人も去っていった。
そして、オレは一人になってしまった。
でも、それでもかまわなかった。
「オレにはマルチがいる。」そう思えたから。
あの頃は本当に彼女さえいれば何もいらなかった・・・


明日、オレは結婚する。
昔のオレを知らないアイツと結婚する。
人当たりが良くて、ちょっとドジだけどいい奴だ。
オレは幸せになれるだろうか?
でも・・・・・・一つだけ気になることがある。
あの夢、今朝も見たあの夢はひょっとして・・・・・・・・・




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ど〜も初めまして、初投稿のガンマルです。
この話は私がマルチシナリオを2回目にクリアした時に見た夢を元に書いたモノです
(だから半年前くらいですかね。)
一応、その頃から手直しはしてますが・・・駄文なのは見逃して下さい(汗)
それから、無いわけないんですが、ここが変だぁって所はメールで知らせていただけると
非常にありがたいです。(なかなか自分じゃ気づかないモノですので(汗))
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え〜と、これでいいのかな。・・・・・・ま、いっか。
それでは読んでくれた方、どうもありがとう。(ぺこっ)