滅殺とPSとミニゲーム 投稿者:ギャラ
注意:このSSには、PS版のネタバレが含まれているかもしれません。
   いや、作者はまだPS版やってないので正確なところは分かりませんが(笑)

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 今日、あかりが風邪で学校を休んだ。
 ……そろそろだな。
 ちゃんと一緒に勉強したし、花見イベントも見た。矢島にも泣いてもらったし、葵ちゃんと
琴音ちゃんに「彼女かもな」と答えた。
 まさに完璧だ。
 あとは、今日学校が終わったら、あかりの家に行くだけだ。
 PSだけあって、この先のシナリオはまず間違いなく変更されてるだろうが、今のところは
問題ないだろう。
 そう思って、オレは放課後になるのを今か今かと待ち望んでいた。
 ……今にして思えば、この読みの甘さが、全ての元凶だったのだ……


 で、放課後。
 オレはさっそくあかりの家の前まで来ていた。
 ピンポーン。
 呼び鈴を押すと、扉の向こうでぱたぱたと足音がした。
「は〜い……って、あら、浩之くん。お久しぶり」
「えっ……あ、どうも。ご無沙汰してます」
 出てきたのは、あかりのお袋さんだった。
 ……これはちょっと予想外だったぜ。
 さすが、グラフィックが出来ただけのことはある。ウチの親なんざ、名前すら不明だってのに。
 それはともかく。
「あの、あかりいますか?」
「え? ええ、いるけど……浩之くん、ひょっとして会うつもりなの?」
「ええ、そのつもりですけど……」
 あかりのお袋さん――面倒だから、以後あかり母と表記しよう――は、不安そうに眉を寄せた。
 何だ、この反応は?
「う〜ん……分かったわ。浩之くんの熱意にかけましょう」
 そう言って、あかり母は自分を納得させるみたいに頷いた。
 ますますワケが分からん。あかりに会うだけで、熱意とか関係あるのか?
「じゃあ、ついてきて。案内するわ……」
 あかり母は、オレに背を向けると、先に立って家の中へと歩いていった。


「……ところで、浩之くん」
 ……何処だ、ここは?
 オレは、見慣れない光景に戸惑っていた。
 土の地肌がむき出しの、通路というより洞窟とか呼びたくなるような場所。台所の床下に
あった秘密の扉を抜けると、こんな場所に出ていた。
 あかりの家には数えきれないくらい遊びに来たことがあるが、こんな場所があるなんて
まったく知らなかったぞ。
「……浩之くん?」
「え? あ、はい。何っすか?」
 目の前で手をひらひらさせているあかり母に気づいて、オレは慌てて返事した。
 考え事に夢中になってたみたいだ。
 オレが笑ってごまかそうと愛想笑いをしていると、あかり母は心配そうな顔でこう言った。
「ちゃんとパラメーターは上げておかなきゃ駄目よ?」
「へ?」
 ……パラメーター?
「えっと……何っすか、それ?」
「何って、そこにあるじゃない、ほら」
 あかり母が、画面の上の方を指さした。
 仕方なくそっちを見てみると……
「げげっ!?」
「う〜ん、今一つ伸びが悪いわねぇ」
 そこには、オレのパラメーターが表示されていた。
 いつの間にあんなモンが!?
 つーか、ビジュアルノベルにこんなパネルがあると文が見にくいぞ!?
 オレが混乱しているのにもかまわず、あかり母はマイペースに続けた。
「スタミナがあれじゃあ、結構辛いわよぉ。ちゃんと葵ちゃんとの練習に出てた?」
「え……? いや、最近はあんまり……」
 あかりとの関係を聞かれた後は、極力関わらないようにしていたのだ。もし葵ちゃんシナリオに
いってしまったら困るし。(外道)
「駄目よぉ、ちゃんと出ないと。スタミナの伸びは、あれが一番なんだから」
「そ、そーゆーもんなんですか?」
「そーゆーものよ」
 あかり母は、重々しく頷いた。
 オレの精神は、既にあっちの世界に旅立つ寸前だった。
(……えいえんはあるよ)
 ああ、何か声が聞こえる。
 ゲームが違うような気がしないでもないが。
 そーいえば、このゲームももうすぐPSに移植されるんだっけ……
「……浩之くん。浩之くん! どうしたの?」
「え……あ、ああ、すんません。ちょっと混乱して……」
「混乱?」
「まさか、PS版ではときメモシステムになってるとは思いませんでしたから」
 オレがそう言うと、今度はあかり母が不思議そうな顔をした。
「ときメモ?」
「違うんすか? だって、パラメーターがあるし……」
「何言ってるの。ちゃんとパラメーターの内容を見なさいってば」
 溜息をつくあかり母。
 ……そう言われてみれば、パワーとかスピードとかスタミナとか……
 オレがそんな事を考えていると、あかり母が手に腰をあてて自信たっぷりに言いきった。

「ときメモじゃなくて、ジャス学システムよ」

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「帰りますさようならお邪魔しましたまた明日蛙が鳴くから帰ろ」
「ちょっと待ちなさいって」
 がしっ。
「イヤだぁぁぁぁぁぁ、離してくれぇぇぇ! オチはもう見えてんだからいいじゃないかぁぁぁ!」
「ここまで来て何言ってるの、男の子でしょ!? さあ、ミニゲームのスタートはすぐそこよ!」
 ……そう言えば、PS版ではミニゲームが追加されてたんでしたね。
 それに気づかなかった僕が愚かでした。
 お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください。
「ていっ」
 オレは、あかり母の手によって、洞窟の先にある扉の中へ放り込まれた。
 同時に画面が暗転し、BGMが変化する。
 ……画面の左端に立つ、「犬」と書かれた胴着を来たあかりを見て、オレは心静かに十字をきった。

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「浩之ちゃん……」
 ふと気がつくと、あかりが心配そうな顔でオレを覗きこんでいた。
「あ、あかり……」
 お前、風邪ひいてたんじゃなかったのか、とか思わないでもなかったが、さすがに
あかり&あかり母のツープラトンを喰らった後ではそんなツッコミをいれる元気はなかった。
「……コンティニュー、する?」
「……いや、いらん。イチからやり直す」
 あかりに首を振って答え、オレは意識が闇の中へと落ちていくのにまかせた。
 ……今度は、あかりシナリオじゃなくて琴音ちゃんシナリオにでも行こうと決意しながら。

 余談だが。
 オレが、琴音ちゃんシナリオの終盤で「サイキッカー狩猟者」を名乗る柳川さんと命懸けの
戦いを繰り広げる事になったのは、それから数日後のことであった。

 ……頼むから、もっと平和的なミニゲーム入れてくれ。

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 どもども、お久しぶりのギャラでございます。
 う〜ん……もうちょっとペース上がらんもんでしょーかね、私ゃ(汗)

 愚痴にしかなりませんが、どうも最近満足のいく文章が書けませんで……はぅ。
痕拾遺録の続きも、忘れたわけではないんですが(汗)

#なお、元から大した文章じゃないだろ、というツッコミはご遠慮下さい(笑)
 そんな事言われた日にはせつなさ炸裂して、無言電話でもかけたくなりますので(誰に?)
 しかもこの無言電話、もらうといずれ交通事故で死んでしまうとゆーオマケ付きです(笑)


それでは。