痛快・少年まさし 二部 第二話 投稿者:仮面慎太郎
 タス・・・ケテ
  ダレカ・・・ タスケ・・・


    痛快!!
       少年まさし
         <髑髏(どくろ)博士と機械人形>
          第二話・「バスジャックと二人の美女」 
前回までのあらすじ
          雅史達が出会った謎の美女。そして、暗躍する髑髏(どくろ)博士
          遠足バスジャック作戦とは!? そして、雅史達の運命は!?


 「よっ、雅史」
少し肌寒いがとても天気の良い朝、雅史は遠足の集合場所である「腐食した肉の臭い」公園の駐車場
に来ていた。
 「やぁ、浩之。・・・あれ? あかりちゃんは?」
 いつもなら一緒にやって来るはずの少女の姿が見えないので、雅史は不審に思った。
 「あぁ、あいつ今日は車で来るって言ってたぜ」
 素っ気無く言って、駐車場のフェンスの所に座り込んでしまう。まだ、半分程度しか人は集まって
おらず、20分ぐらい時間がある。
 「あっ、志保だ」
 フェンスにもたれ掛かっていた雅史が不意に声をあげる。遠くで志保が手を振っている。雅史も軽く
手を振り替えして、浩之の横に座った。
 「あ、あの車、あかりちゃん家のじゃない?」
 金色の大型トラックが駐車場の真ん中に止まった。そして、助手席からあかりちゃんが出て来た。
それと同時に、
  「あー あー んん! 生徒さんはバスの所に集会の様に並んで下さい」
 ハンドマイクを片手に新任の教師が叫んでいる。ぞろぞろと生徒達が集まって行き、教頭の挨拶の後、
それぞれのバスに乗り込んで目的地「帰らずの森」に出発した。 

 行け! 我が最強の武器!

 了解

 あのバスを乗っ取って子供達を我が手駒に改造するのだ。

 ハイ



              サム・・イ



 「あの・・・運転手さん?」
 一番前に座っていた女の先生が話し掛けた。
 「この道ってそうでしたっけ」
 「・・・」
 「あの・・・」
 「そろそろかな・・・」

   キキキィーーーーー

 急にバスが止まった。
 「キャアアーーーーー」
 「!?」
 先生が大声を出して、立ち上がる。前を見ると、運転手はあの時の男達と同じマスクを被っていた。

  プシュュュュュューーーー・・・

 座席の下から煙が凄い勢いで、吹き出した。
 「喜べガキ共。貴様等は栄光ある我等が組織の一員になれるのだ」
 ゆっくりとガスマスクを被り、バスを走らせ続ける運転手。
 周りが白く・・・ 眠く・・・
   ゆっくりと・・・ 
 エンジンが子守り歌に聞こえだした頃には、運転手以外、起きている人間はいなかった。
・・・車内には!
 
  コンッ

 「? 上から音がしたな、小鳥か何かだろうが・・・」
 マスクの男は呟くとバスから出ようとした。
 
 ガガガガガーーー  ガガガ
 
 「はい、こちら2号車。はい、では1号車共々・・・ はい、作戦通り」
 無線を切ると男はバスから出るのを止めて、また、運転を始めた。

 (こういう事か・・・)



 博士! 感情型を発見しました

 何!? どこでだ!?

 ハッ この森からは出ておらず、奥の方に入り込んでいるとの事です

 森の奥だと・・・ !! マズイ! 感情型を今すぐ捕らえよ!

 ハッ!

 ただし! 立ち入り禁止区域には誰も入れるな もし感情型が入っていった可能性があるなら、報告せよ

 ハッ!

 (マズイ・・・ あの屋敷を見られたら・・・)



 「・・・史! 雅史! おい! 雅史!」
 「う・・・ん」
 
    ペチペチペチペチペチペチ・・・
 
 「起きろ!!」
 「はっ!!」
 目を覚ますと、そこは誰もいない薄暗い森の中だった。
 (えーと・・・ !? バスは? 皆は?)
 辺りをキョロキョロ見回しても誰もいない。木だけが鬱蒼と生い茂っていた。
 (・・・今、誰かいた様な・・・?)
 雅史はゆっくりと立ち上がった。

  トサッ

 軽く何かが落ちる音がした。今まで体に何か掛けてあったようだ。それが落ちたらしい。
足元を見てみるとそこには何故か・・・
 
「・・・ 僕が皆を・・・ 助けなきゃ!!」



 暗い洞窟。目の前の鉄格子。苔の生えた湿った岩壁。岩窟王・・・ふと浩之の脳裏を過ぎったのはこの
言葉だった。もっとも、浩之はそれを読んだ事はなかったが、それでも、きっとこんな感じだろうと思った。
 「皆・・・ 無事かな・・・」

  ギュ・・・

 誰かが手を握る。
 「あかり・・・」
 振り返ると、今にも泣き出しそうなあかりが下を向いて浩之の手を握っていた。
 「大丈夫だよね・・・ きっと助けてくれるよね」
 ポロポロ大粒の涙が零れている。後ろの方では、一個所に固まってじっと鉄格子の外をみている皆の姿が
あった。
 「あぁ、助けてくれるさ。少年まさしがきっと僕らを助けてくれる」

  ・・・ザザ・・・ザザザーーザザ・・・
 
 「!? トランシーバーが・・・ おう、志保か? いや、俺達もだ・・・ あ、おい!」
 「志保がどうしたの? 浩之ちゃん」
 不安そうに聞いてくる。
 「いや、人が来たからいったん切るって・・・ 向こうも同じ様だぜ・・・くそっ」
 

 
    暗い暗い ここは暗い
      寒い寒い ここは寒い

    人の温もりが欲しい  
      あの温かさが欲しい

    もう手に入らないけど
      今 この心に残っているだけだけど 

 
 「班長! 感情型を発見!」
 暗い森の中に大声がこだまする。大勢の足音が無粋に響き渡る。森の静寂はいつも彼らの様な者達が通る
たび、引き裂かれる。
 「捕まえろ!」
 数メートル先に小さな女の子の姿が見える。新緑の色の髪と目、小柄な体型はまさに、森の妖精と呼ぶに
なんら差し支えはなかった。その少女は目に涙をいっぱい溜めて、前へ前へと走っていた。
 「まてこらぁ!!」
 
  ガシィ!!

 「キャア!?」
 マスクをした男達に少女は、その美しい髪を捕まれ、羽交い締めにされた。
 「ったく、てこずらせやがって。よし、スイッチを切れ」
 「やめて・・・やめてくださいぃぃぃぃぃ」
 男の一人が少女の後頭部に手を触れさせた時だった。まるで、8ミリの映画のように、ゆっくりと男は
地面にキスをした。
 「? おい・・・ どうした?」
 異変に気付いた一人が男に近づく。そして、また倒れた。
 「・・・何者だ!」
 男のうち、黒いマスクに白いラインが入ったリーダー格らしき男が、何処へとも無く叫んだ。
 「か弱い少女に手を上げるような奴に名乗る名前はない・・・」
 声だ。しかし、姿は見えない。
 「どこだ! 出て来い!」
 「ここに居るさ」
 「何!?」
 ラインの男は振り返った。そして、何も見ないまま、無意識の闇に沈んだ。
 「班長!?」
 残った男達は、後ろに飛び退いて見えざる敵に素手を構える。
 ・・・小さかった。男達にとってあまりに小さかった。倒れた班長の後ろに、俯いてマフラーの先を右手
で掴んでいる少年。俯いている為、顔はよく見えない。
 「冥土の土産に教えてやるよ・・・ 僕の名前は・・・」
バッ!・・・と右手を水平に振りマフラーのをたなびかせて、   
 「僕の名前は少年まさしだ!!」
 

 「助かりました・・・ ありがとうございますぅ」
 男達を気絶させて、少女を助け出した少年まさしは、その場から少し離れた所にいた。
 「君は誰だい? どうして、こんな所に・・・」
 少女は切り株に腰を乗せ、質問に答えた。
 「私は・・・初期開発スタッフの方々に、こう呼ばれていました・・・ マルチ・・・ と」
 「初期制作スタッフ?」
 少年まさしは首をかしげた。
 「はい、私は昔、人間の皆様のお役に立つメイド型アンドロイドとして、作られていました」
 「アンド・・・ロイド」
 「はい・・・ しかし、私の人格が出来てすぐに、さっきの人達が私を買い取ったのです。そして、私・・・
  いえ、私達は彼らの研究所で人間の皆さんを・・・ その・・・ こ、こ、ころ」
 「もういいよ、それが嫌で逃げて来たんだろ」
 マルチの肩に優しく手を置いて少年まさしは黄色い仮面の向こうで微笑んだ。
 「それより、僕の友達があいつらに捕まえられたんだ。どこか心当たりはないかい?」
 「・・・あります。この近くに洞窟があって、そこに研究所があるんです」
 少年まさしは立ち上がった。
 「そこに案内してくれ」
 「はい」
 

 道中、色々と話しを聞いた。マルチは感情豊かに作られて、工作員として、一流の腕を持っているとか、
妹のセリオは感情こそ乏しいが、能力的には、凄まじい物がある事、そして・・・
 「彼らは、彼らの組織は、何か巨大な物と戦う為に作られているようです」
 「巨大な物?」
 「はい、国か、組織か、あるいは・・・」
 「あるいは?」
 「もっと大きな何か・・・」
 結局、組織の目的はわからなかった。しかし、はやく浩之達を助けなければならない。


 ・・・来ました

 何故わかる

 いえ、ただ、

 ただ?

 胸が痛いんです

 ・・・わからんな 貴様に痛覚はないだろう

 はい

 サテライト・システムはどうだ

 問題ありません

 ゆけ

 ・・・はい


  
    暗い暗い ここは暗い
      寒い寒い ここは寒い

    人の温もりが欲しい  
      あの温かさが欲しい

    もう手に入らないけど
      今 この心に残っているだけだけど 

    その心も無くなった 残った温もりは霧散する
      冷たく凍えて 死んでしまう


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次回予告・・・髑髏(どくろ)博士にバスジャックされてしまった
        雅史達。着いた先は鬱蒼(うっそう)とした森の中。
        悪漢共から少女を救った少年まさしだが、実は少女
        は・・・ 迫り来る髑髏(どくろ)博士の魔の手。
        守るべき者と、戦うべき者。そこには何が待っているのか
        次回少年まさし、「機械仕掛けの涙と心」をお楽しみに。
        がんばれ僕らの少年まさし、負けるな僕らの少年まさし
                 続く。