「ったく、ここ何処だよ・・・」 耕一は迷っていた。本気で迷っていた。事の発端はこうだ。 耕一は連休を利用してまた四人の所へ来ていた。皆、耕一を快く迎えてくれて一緒に居てくれたのだが、 今日は、あいにく皆外出してしまったのだ。 千鶴さんは日帰りの出張で日も出ぬうちに駅へ行き、梓は梓で「俺の歌を聞けぇぇぇぇ!」と訳のわからん事を叫んで朝、 家を出て行った。楓ちゃんと初音ちゃんは朝食を食べてすぐ月面都市グラナダに行ってしまった。 暇で暇でしょうがなかった耕一は偶然テレビでやっていた、「全世界拷問機器博覧会」を思い出し足を伸ばしたのだった。 その町まで列車で五駅だと、初音ちゃんは朝食の席で言っていたが、実際この町の名前に会うまで八駅も走った。そして・・・ 「ここさっきも通らなかったか?」 迷っていた。何時の間にかだ。如何せん、田舎の道は同じに見える。すでに耕一は泣きそうだった。 昼過ぎ、鳴く腹の虫を聞きながら、やたら暗くて古い道に来ていた。目の前に怪しい店が建っている。 「雅史屋」 骨董品屋の様な印象があったが、カレー有りますの文字もある。そして外からでは中の様子が全然わからない。 入りたくはなかったが、腹の虫が我慢してくれそうにない。カレーでも千鶴さんの料理でも何でもいいから食べたい。 そこまで耕一は精神的に追い込まれていた。 ガラガラガラガラガラガラ・・・ 「すいませーん・・・」 店の真ん中に机が一つ、そしてそれを囲むように雑貨(がらくた)が山積みだった。 「すみませーん」 さっきより幾分大きな声で人を呼ぶ。すると、 「お客さん、こっちこっち」 と、奥から声が聞こえて来た。店の奥へと用心しながら入って行くと、何故か地下へと続く階段がある。 その先に真っ赤な扉が付いていた。 「その扉を入って下さい」 どうやら何処かにるスピーカーから声が聞こえて来ている。怪しい・・・耕一は引き返そうかとも思ったが、 まさか、そんな失礼な事は出来ないと思い直し(不幸にも)階段を降りて行った。 真っ赤な扉は薔薇の装丁がしてあり、ドアノックの所には「雅史屋御殿」と書かれていた。 そこで幸運にも引き返そう、そして従兄弟達と仲良く暮らそうと何か悟りぎみな考えが頭をよぎったが、 それと同時に腹の虫も大合唱をした。耕一は負けた。空腹に負けたのだった。 コンコン ガチャ ・ ・ ・ ・ ・ 海だ。 ・ ・ 海岸だ。 後ろを振り向く。さっきまで有った階段がなく、遠くに懐かしい景色が見える。 !? 曲が聞こえる。この曲を耕一は聞いた事があった。 「この曲は・・・確か、歓喜の歌・・・」 その曲は次第に鮮明になり、やがてそれが鼻歌だとわかった。 ピタッ 突然歌が終る。耕一は辺りを見回した。海岸にもう一人華奢な男が立っていた。 「歌はいいねぇ・・・」 不意に、その男が話し掛けて来た。 「歌はいい。リリンの生み出した文化の極みだよ・・・そう思わないかい? 柏木耕一」 こちらを向く。その男に耕一は会った事があるような気がした。そして、何故その男が自分の名を知っているのか疑問に思った。 「どうして・・・俺の名前を・・・そして君は」 スッ、と人差し指を口当て耕一の言葉を遮ると、静かに、そして優しく口を動かした。 「俺は柳川・・・貴様と同じ、薔薇に見入られし者。薔薇の花嫁となりうる五輪目の薔薇さ・・・」 「薔薇? 五輪目? いったい何を・・・」 すると、柳川と名乗った男は神妙な顔つきでゆっくりとこちらに近づいて来た。 続く コメント・そろそろ壊れてきた。テスト発表日に何をしている・・・ギャグ/痕/耕一、柳川